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蜥蜴狩り  作者: 惹玖恍佑
34/67

34、二月九日、午前八時十一分。

ベネシュは雪に足をとられながら、腕時計型の端末に呼びかけ、必死に走ろうとしている最中だった。


「藤澤、ジャグスからの応答がない! 俺はいま新大通り三丁目の商店街の角にいる!ここから変電所まで、あとどのくらいだ!」

「もう百メートルもありません、警部」


「あわてなさんなよ、お二人さん」


割り込んできた声に、ベネシュは即座に反応した。

「ジャグスか?」


ジャグスは動かなくなったラルジャンのそばを通り抜け、シリコンのベルトを首に戻して巻きつけると、横穴からもとの坑道に出て、のんびりと座りこんだ。

「片付いたぜ、警部」

「平気なのか? 無事か?」

「カラダはガタガタだがね…ゆっくり風呂につかりてぇな」


ベネシュは雪の中にくずおれた。

「気を揉んだぞ…」

「おやおや、そいつはあんたの本心か?」

「あたりまえだ。貴様が無駄死にすれば、責任を問われるのは俺だからな」

「ありがたいお言葉、痛み入るぜ。だが、どのみち『殺すな』と言われた相手を殺っちまった。あんたも俺も、相当な処分は免れねぇさ」

「そのことは心配するな。俺の職務にかけて、絶対におまえに責めは負わせない」

「へっ。俺が皮肉屋ならあんたはなんだ? 情け深い人情家なのかい?」


ジャグスは立ち上がろうとした。

「さて、これから外へ…」

「出たいもんだ」と言おうとした刹那、その最後のひと言はかき消された。


いつの間にか起き上がり横穴を出ていたラルジャンが、ジャグスの肩を左手でつかむと、銀の鋼板に包まれた右腕で、思いきり殴りつけてきた。


もんどり打って転がったジャグスの前に、血だらけのラルジャンが立ちふさがった。

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