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28、二月九日、午前七時三十八分。
光子弾の飛来をかわして跳び続けるには限界がある。
超人的能力を持つとはいえ、緑のカメレオンの体力にも限度がある。光子弾の一撃が左脚をかすり、ジャグスは脚から血を吹いて転がった。
「ジャグス、聞こえるか?」
「へっ、いま、それどころじゃねぇ。逃げるので精一杯だ」
「いいから聞け。必要なら相手を殺せ。殺してでも生き延びろ。俺が許可する」
「命令無視か。あんたの主義にも反するぜ」
「いまはおまえの命が優先だ。生きるんだ。あきらめるな」正しいか、正しくないか。ベネシュが己の心の声を封殺するのとほぼ同時に来たジャグスからの応答は、簡潔なものだった。
「誰もあきらめたなんて言ってやしねぇ」
ベネシュのパトカーは大通りを避けて、曲がりくねった路地に入った。雪に足をとられながら、彼はアクセルを踏み続けている。
ジャグスの叫びに近い声が聞こえた。
「生かしたいなら誘導してくれ。ここにいたら狙い撃ちだ」
「この近くに変電所の縦穴がある。そこならおまえも逃げられる」
「逃げる気はねぇぞ。戦える場所か?」
「なんでもいい。とにかく目の前の右の穴に入れ」
ジャグスは目に飛び込んできた最初の横穴に潜り込んだ。「次はどうする!」
「俺の指示通り動け。坑道へ出たら、左へ真っ直ぐだ」
パトカーの車体が動いた。
ベネシュは一心にアクセルをふかし、路地を抜けた。




