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蜥蜴狩り  作者: 惹玖恍佑
27/67

27、二月九日、午前七時三十五分。 港区中央通り公園広場。 ベネシュ警部。

「警部!」

パトカーに乗り込もうとするベネシュを藤澤が止めた。ひらいたドアに手をかけてベネシュを制止する。

「無茶です。指揮官がここを離れることは許されません」


「警部!」谷口も寄ってきた。「あちこちで停電が起きているようです。連絡が入りました」

ベネシュはゆっくりと谷口のほうを見ると「連絡と言ったな? 指揮車の回線をおまえが確認したのか?」

「…申しわけありません……しかし、お二人は手が塞がっていたので…」


「聞いたか、藤澤? 指揮車の管理は俺たちでなくともできる」

藤澤はあわてて言った。「そういう問題ではありません。指揮官がこの場を離れては、何か起きたときに対応ができません」

「いまがその『何か起きたとき』だ。俺を止めたいなら撃つしかないぞ」

「そんな…警部…」

「言いたいことはわかるが、曲げて頼む。指揮車のキャッチする信号を、この車と俺の腕時計端末にバイパスしてくれ。地図のデータ送信も必要だ。こいつを走らせながら、あるいは外に出てもジャグスに指示が出せるようにな」

「待ってください!」


「いいか、藤澤」ベネシュはドアに置かれた藤澤の腕をつかんだ。力のこもったつかみ方だった。「ひとには誰でも、守るべき信義ってものがある。七課の命令通り『殺すな』とジャグスに伝えたのは俺だ。皮肉な話だが、俺は普段なら喜んで伝えるはずの指示を出すことで、あの緑野郎の安全を軽んじた」

「命令に従っただけです。警部の責任ではありません」

「命令通り従ったせいで、いま、あいつには死の危険が迫ってる。奴を救う」

「それは越権行為です!」

「いいから手をどけろ」ベネシュは藤澤の腕を引き剥がすとドアを閉め、サイレンを鳴らした。「指揮車よりこいつのほうが、小回りが利くからな」


「警部!」藤澤は窓にすがった。

ベネシュは窓をあけると藤澤にニヤリと笑って「よろしく頼む。なんと言ってもな…」言いながら、エンジンをかけた。


「あいつは俺の相棒なんだ。知らなかったか?」

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