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異世界転送でコミュ力欠如!?  作者: ねぎねぎま
3/3

#2「ドロップアウト」

少し長めに書きました。

これくらい……かな?


「あの…えと、私はシェスティン=エリクス…です。えと…さっきのは、ご、ごめんなさい…。」


赤髪の少女は怯えるような小さな声でぺこぺこと頭を下げる。


「あ、俺…は霜月瞬…シュン……です。も、もう大丈夫です…よ?」


言い終えてから瞬は、自分の唇が微かに震えているのを感じる。鈍い痛みを感じて背中に手を当てながら考える。



──おかしい。



いつもの瞬ならば、強面のマッチョに対しても、初対面の異性に対しても、自分から声をかけて会話を弾ませることができるはずなのだ。


人と関わる機会が少ない環境で育った瞬が、中学時代に都会に移り住んだ時からコミュニケーション能力を人一倍身につけようと奮闘した結果である。

だがそれが今、瓦解しているのだ。



……



長く、二人の空間を流れていた沈黙は、頭を高速回転して次の言葉を探していた瞬の質問によって破られた。


「さっきのケモノ…は?」



──────────────────────



「なるほど、理解した。俺の会話スキルも回復しつつあるようだし、いろいろありがとうな!」


「う、うん…」


右も左も分からない瞬に質問攻めに遭ったエリクスは、疲れ切った表情で頷く。並んで歩く瞬は、エリクスの先導で街に降りる道中で理解出来た情報を整理する。


異世界転移。おそらく自分の経験している現在は、夢に見た異世界である。魔獣、魔術、といった単語を他人の口から聞いたのは初めてだろうか。しかし、西洋風の建物や、住人のカラフルな髪色を見る限りは異世界そのものである。


「この陽気な雰囲気!サイコーだぜ!びくとりー!」

ゲーム操作こそ上手くはないが、ゲームの世界観を愛して止まない隠れオタクの瞬は、異世界の雰囲気にテンションゲージが既にMAXになっていた。

大はしゃぎして周りの視線を盛大に浴び、大通りのど真ん中を練り歩く瞬の後ろには赤髪の少女の姿。


シェスティン=エリクス。見た目年齢は17歳くらいだろうか。赤髪赤眼で容姿端麗。ほんのりと紅が入った唇の震えは、道中でパタリと止んでいる。しかし、目線が定まらずおろおろとしている様子は街に出てから酷くなった気がする。



「あ、あの……シュン…さん?ギルドはこっち…です……えと…シュンさん…の登録と、ウル…ウルの牙…の納品を……」


「わかってるわかってる。ごめんはしゃぎすぎた」



騒ぐ瞬を必死に止めるエリクスに、瞬は反省の仕草をする。



「にしても、ウルウル、か」



ウルウル。狼型の魔獣で、集団行動を基とする獰猛なケモノ。街は結界で守られているが、街周辺の森が主な活動範囲だという。



「初心者の討伐クエストとしては難易度の高いほう、か。最初の難関''クック大先生''ならぬウルウル先生ってとこかな。うん。」



元の世界でどっぷり浸かった『モンスターハントー』で苦戦したステージについて感慨深さを感じたところで、ギルドの前へ到着することになった。



──────────────────────



「こんにちはぁ!コット村中央ギルドへようこそぉ!あれれれれれ?見ない顔だなぁ?登録するぅ?」



独特の喋り方をする受付嬢にツッコミを入れようとする瞬は、またも言葉が詰まる感覚を味わった。会話ができないのである。否、口が会話をしようとしないのである。



「えと…この人の登録……と、ウルウルの…です…」



口を開いたのはエリクスである。少ない言葉で要件だけを伝えると、報酬と言われた金銭を手にこちらを眺める。状況を察した瞬は、もどかしさを感じながら受付嬢に言われるがままに登録を完了した。


──この流れだと、受付嬢から詳細が知らされる。そして俺の特殊能力が……!!


目を輝かせる瞬の考え通り、受付嬢の口が開かれた。




──コミュ障。



「…えっ」








次回 #3「能力…!?」

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