序幕「逃げぬ、戦わぬ。」
お試し投稿…?
「ガァルルルゥ」
光る双眸が四つ。
狼に似たそれらは、敵対の感情を体全体に纏っている。
一個体につき一つの役割が与えられ、群れを成して生活する『ウルウル』の戦闘要員である。
それらの見つめる先には…黒眼の少年。
彼の足の震えは武者震いなのだろうか。
それとも……
刹那、眼前の大きな双眸が左右に揺れ、彼に襲いかかる。
「ゥガァァァァァ!!!」
それに続き、残りの3頭も四肢を鳴らして走り出す。
迫る牙に遅れをとった彼の身体は、無惨にも引き裂かれ、ウルウルの血肉となり…
……
彼は傷一つ無しに、森から街へ降りることになった。手には4体分のウルウルの牙。安堵と困惑の表情を浮かべる彼は、西洋風の建物群へと歩み入れる。慌ただしくすれ違う街の旅客は時折、彼を見て目を丸くする。
その理由はおそらく彼の服についてだろう。
街の雰囲気に似合わないその服装は、獰猛なウルウルを相手したのにも関わらず一切の血に濡れていないのである。
異文化の装飾に異様な清潔さ、それ故に彼を不審がる目が多いのは仕方の無いことなのだろう。
街に降りてもおどおどとしていた彼は、街の中でも飛び抜けて大きな建物へ吸い込まれるようにして足を向けた。
「ウルウルの牙、四頭分。確かに受け取りましたぁ。報酬のギルをお渡ししますぅ。」
「あ、はい……ありが…」
「またのご利用、お待ちしておりますぅ。」
ため息を漏らす彼は、ギルと称された金銭を手に夕暮れの街へ出ていった。
これよりもう少し長めで書いていきまーす