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勇者の剣  作者: 柴田盟
7/22

偉大なる勇者の真実の冒険

 いつの間に眠ってしまったのか?そのまどろんだ目を開けると、太陽の光に私はその目を細めた。

 新しい朝が来た。

 それはどんな聖者でもひどく落ちぶれている人にもどんな凶悪な犯罪者にも平等に訪れる。

 時計を見ると、午前七時を回った所だ。

 そこでノックの音が聞こえる。

「亜希、朝ご飯出来たよ」

 部屋から出ようとした時、あの時の惨劇を思い出しても私は怖くなかった。

 扉を開いて涙姉さんはセーラー服を来て、部活の道具だろうか?テニスのラケットと教科書が詰め込まれているであろう鞄を提げている。

 涙姉さんは私を見ると、

「夢じゃないよね」

 と、嬉しそうな笑顔だった。

 改めて思う事だが、私は本当に涙姉さんや母さんに心配させてしまったのだろう。

 食卓に足を進めると、母さんは作業着に着替えて仕事に行く準備が整ったみたいだ。

「おはよう」

 すると母さんはにっこりと嬉しそうに笑って。

「おはよう亜希」

 昨日の晩に続いて、何だか大切な何かを感じた。

 何年ぶりだろうか?

 こうして家族みんなとの朝の食事は。

 私が学校に通っていた時は煩わしく思えたが、改めて思うとこれが幸せなんじゃないかって事に私は今更ながら感じた。

 そこで思ったのだが、幸せが当たり前のように感じてしまったら、その幸せは幸せと感じられなくなる。

 でも嫌なことは、感じられなくなることはない。

 それでも人は幸せの在処を暗中模索の中を探しているのだろう。


 涙姉さんも母さんも出かけてしまい私は一人になってしまった。

 私は本当のニートだ。いやこれがまさしく自宅警備員ってやつか。

 そんなのは嫌だ。

 とにかく昨日私は目標を見つける為の第一歩を踏み出すと言ったのだ。

 とりあえず私は自分の部屋を掃除した。

 私の部屋は改めて思うが何か臭う。

 掃除して汗まみれになって私はお風呂に入った。

 自分の体を嗅いでみるとやはり何か気持ち悪い臭いがした。

 女の子としてこれはまずいと思って、体を丹念に磨いて洗った。

 さっぱりして浴室から出て、鏡を見ると、みそぼらしく何かあの有名なホラー映画の貞子と言った感じだ。

 髪は潤いもなく淫らに伸びきり、まさに女性浮浪者だ。

 何かやばい感じがしたが、すぐにどうする事も出来ないので、今日はお風呂に入って汚い体を磨いただけでも良しとする。

 少しずつ変えていくしかない。

 出来るところから少しずつ。

 そして私は台所や玄関、階段などの床などを雑巾で拭いた。

 引きこもって体力が低下しているため、すぐにへばってしまったが、何かわからないけど、充実して幸せを感じてしまった。

 今日はこれぐらいにしておこうと思ってネットサーフィンを楽しんだ。

 ネットゲームをしたい気持ちであったが、またはまってみんなに心配かけるかもしれないのでやめておいた。

 そんなネットサーフィンを楽しんでいる間、私の頭の中にあの玲奈さんの輝かしい笑顔が頭にふつふつと浮かんできた。

 何かあのまま私が外に出れた勇気を身につけたので、もうお別れなのかと思うとなぜか切ない。

 玲奈さんの家はここから一キロ先の隣町だ。

 行こうか行かないか私は迷ってしまう。

 でも仮に行っても迷惑な感じがする。

 でも会いたい。

 お昼を過ぎた時、涙姉さんが作ってくれたのり玉のおにぎりを食した。

 まあおいしかった。

 何か無性に眠くなってきた。

 私の部屋に戻ると、先ほど掃除をしたが、何かまだ臭っている。

 だから私は除菌スプレーをベットや壁や床にかけた。

 ベットの上に寝転がり私は考えてしまう。

 目標を探すところから始めてみたが、私はどうすれば良いのかわからない。

 また以前のようにネットゲームに没頭してしまう毎日を送ってしまうかもしれない。

 そんなネガティブな事を考えると、あの玲奈さんの輝かしい笑顔がよぎった。

 そう。私は玲奈さんに会いたいんだ。会って・・・何をしたいのだろう?

 でも何かわからないけど会いたい。

 何でこんなにも鼓動が激しくなるのだろう?


 誰かが私を揺さぶっている。

 その私の瞳に写ったのは涙姉さんだった。

「亜希おはよう」

 時計を観ると、午後六時を示していた。

 どうやら涙姉さんは今帰ってきたみたいだ。

 食卓で私は姉さんの料理が出来るのを待っていた。

「お待たせ」

 とおぼんにカツ丼を乗せて入ってきた。

 私にカツ丼を差し出して、

「じゃあ、一緒に合唱して食べましょう」

 私と姉さんは手を合わせて「いただきます」と言った。

 姉さんの手料理のカツ丼はどんな高級な食材もかなわないほどおいしかった。

 何だろう?おいしい物を食べると元気が出てくるのは。

 食べ終わって私と姉さんは少し話し合った。

 それは非常に些細なことで、私が目標を作るために部屋の掃除をしたり、玄関やトイレなどを掃除したことに対して、涙姉さんは「そうやって一歩ずつ前進していけば良いんだと思うよ」と。

 でも私は不安だった。

「そんな顔をしなくても大丈夫よ亜希。今亜希はこれからの事を不安に思っているんでしょ」

 心を読まれた。私は思い出す。

 涙姉さんは私の事なら何でもお見通しだと。そして涙姉さんは、

「きっと亜希は今の状況を一辺に片づけようと考えたとお姉ちゃんは思うよ。だから何度でも言うよ。少しずつ前に進もうよ。昨日みたく勇気を振り絞って玲奈さんを助けようとした時のように。

 だからその勇気を少しずつ育んでいこうよ」

「そうだよね。少しずつだよね」


 部屋に戻ってベットの上で仰向けにして真っ暗な天井を見上げていた。

 わかっている。涙姉さんの言うとおり少しずつだと言うことを。

 でも不安だ。

 だから何だろう?そんな時、あの玲奈さんの笑顔が頭によぎり、不安な気持ちが少しずつ解消していった。

 私は決心する。

 明日玲奈さんに会いに行こうと。

 次の日、涙姉さんが学校に行って、私は昨日と同じように家中を掃除した。

 それが終わって、私は玄関の前でためらっていた。

 何をためらっているのかと言うと、やはり改めて思うことだが外に出ることに対して抵抗があった。

 あの時は無が夢中だったから外に出たけど、何か怖い。

 その時、玲奈さんの言葉が私の心に木霊した。


『勇気をを出して』


 と。

 だから私は思いきってドアノブを捻り、ドアを開け外に出た。

 すると清々しい新鮮な空気に包まれて、お日様の光に照らされ、すごく気持ちの良いものだった。

 あの時出たのは夜だった。それはそれで清々しくはなったが、朝の光はそれ以上のものだった。

 何だろう。そう思うと生きるって何かすばらしいとまで思ってしまう。

 まあそれはそれで良いとして、私は玲奈さんに会いたいのだ。

 どうしてかは分からない。

 でも突然連絡もなしに行ったら迷惑じゃないかと思ったが、あの玲奈さんの輝かしい笑顔を見たいという気持ちがその思いを打ち消した。

 それにおめかしして涙姉さんの服をチョイスさせてもらった。

 今着ているのは白いフリルの付いたワンピースにその上に赤いカーディガンを羽織っている。

 家から玲奈さんの家まで歩いて十五分。

 玲奈さんのアパートにたどり着いた。

 でも私はなぜか玲奈さんの家のアパートの前で行くのをためらってしまう。

 何かこっぱづかしいと言うか?さっきも思ったが、やはり迷惑何じゃないかと思っている。

 どうしよう。

 そんな事を考えながら俯いていると、何者かが私のその俯いた視線をのぞき込んできた。

 私は「ひゃ」と驚いてその人をよく見ると紛れもない玲奈さんだった。

「亜希ちゃんじゃない」

 と嬉しそうに微笑んでいる。

 私は何か分からないけど、心の準備もしていないのにいきなりばったりと会って気持ちがあたふたとして、失礼ながらも玲奈さんから逃げようとした。

「どうして逃げるのよ」

 と玲奈さんに私の腕を捕まれてしまった。

「あの。その。えと」

 私は動揺して玲奈さんに何て言っていいのか分からなかった。

 玲奈さんは腕時計を見て、

「そろそろお昼だから、一緒に食べない?」

 断る理由もないのでごちそうになる事にした。

 私は何か緊張して、玲奈さんの部屋で正座をして料理が出来るのを待っていた。

 その間、辺りを見渡して、部屋の左右においてあるパソコンを見ていた。

 このパソコン何に使うのだろう?

 そんな事を考えている間に玲奈さんの料理が運ばれて来た。

「お待たせ」

 とメニューはオムライスだった。

 それにケチャップでハートの絵が描かれていた。

「玲奈特製オムライス。どうぞ召し上がれ」

 言われた通り、「いただきます」と言って食べて見るとこの上なくおいしかった。

「どう?おいしいでしょ」

「はい」

 その後もオムライスを食した。

 そこで気になったのだが、玲奈さんは食べている私をにっこりと笑って見つめているのだ。

 何かこっぱずかしくなって「何ですか?」と聞いてみる。

「私は嬉しいんだ。こうして亜希ちゃんと接して」

 本当に嬉しそうに笑う玲奈さんを見て、何か私は憧れてしまう。

 もてなされたオムライスを食べ終えて、これ以上長居していると迷惑になってしまうと思って、「ごちそうさま」と言って帰ろうとしたところ。

「あら?今日は午後から用事でもあるの?」

「いや別に」

「だったらお話でもしない?」

 断る理由もないので私は「はい」と了承した。

 お話って言ったって私と玲奈さんは会って間もないのに何を話して良いか困惑してしまう。

 でも、先に話をして来たのは玲奈さんの方だった。

「お姉さんとは和解したのか?」

「はい」

「そう」

 そこで私と玲奈さんの会話は終わってしまった。

 辺りに敷き詰められているパソコンを見て、その事を話題にして行こうとしたとき、玲奈さんが言う。

「パソコンの事、気になる?」

「はい」

「これすべて拾って来たんだ」

「どうしてですか?」

「使えそうな物があるかもしれないってね」

「・・・」

 なるほど、

 また会話が止まってしまった。

 でもなぜか玲奈さんは先ほどのように嬉しそうに私の事を見つめていた。

「何ですか?もう」

 照れくさくなって私はその視線を逸らした。

「あの時の私を助けようとした亜希ちゃんの勇気が今だに忘れられなくてね」

 そこで私は聞いてみる。

「私なんかにかまっていて良かったんですか?」

「ん?どういう事?」

「玲奈さんには私なんかよりも苦しんでネットゲームにはまっている人がいるんでしょ。その労力をその人達の為に使えば良かったんじゃないんですか」

「確かにそうだね。亜希ちゃんよりも苦しんでいる人がいるね。でもね・・・」

「でも何ですか?」

「ちょっとひどい言い方かもしれないけど、私の手ではどうしようもないからだよ」

「どうしようもないって」

 本当に私はひどいと思った。

 玲奈さんはどこか窓の向こうの遠くの空を見上げ、感慨深そうに言った。

「私は一人でも良いから、あなたのような現実から逃げようとするネットゲーマーを何とか救いの手をさしのべたいと思った。

 だから私はあなたを救いたいと心から思った」

「それはどうして」

「あなたの周りには掛け替えないお姉さんやお母さんがいるからだよ。後、それだけじゃない。これは以前も言ったかもしれないけど、あなたは勇者だからだよ」

「私は勇者じゃないよ。それに私には涙姉さんや母さんがいる。だったら周りに誰もいない人たちに力を注ぐべき何じゃないんですか」

 私が言うと玲奈さんは切なそうにその瞳を閉じて言った。

「この世の中はすべての人達が救われる事がないのよ。私はね、あなたのお姉さんにすごく懇願されたのよ。『妹を助けてあげて下さい』って。

 あなたの事情もすべて聞いたよ。

 聞いた時は度肝を抜かれるほどの衝撃を受けた。

 それは現実から目を背けたくなるのは無理はないって思った。

 それにあなたはネットゲーム内で自分の事より相手の事を気遣う所があったから、ひどい言い方かもしれないけど、救いようがあったからだよ。

 だから亜希ちゃんはお姉さんやお母さん、それに亜希ちゃん自身の為にも私は全力でネットゲーム内の幻想の世界から救いたいと思ったのよ」

「救ってくれたのは嬉しいけど、私はどうしたら良いのか分からないんだ」

「それは・・・」

「一歩ずつだって言うことは分かる。それと涙姉さんに言われた通りすべてを片づけようと焦っている事も分かる。

 でも私はすごく不安なの。

 怖くて怖くてまたネットゲームにはまり込んじゃうんじゃないかって」

 と言って私はその瞳から大粒の涙がこぼれ落ちてきた。

 でも何か自分の不安を玲奈さんに話したことによって気持ちが楽になった感じがした。

 すると玲奈さんは私を優しく抱きしめてくれた。

 そんな事をされて涙が止まらなかった。

 玲奈さんの胸で泣く私。

 まるで玲奈さんの胸は私の涙のはけ口何じゃないかって思ったりもした。

 そうだ。私は玲奈さんに話したかったんだ。打ち明けたかったんだ。

 そして玲奈さんは言う。

「あなたは正真正銘の勇者よ。自分の気持ちを打ち明ける事も勇気なんだよ。どお?少しは心の整理が出来たんじゃない」

 どうしてだろう?押さえようとしても涙が止まらない。続けて玲奈さんは、

「不安なのはあなただけじゃないわ。私もあなたの涙お姉さんもお母さんもみんな不安なのよ。

 でもあなたは一人じゃない。

 今のようにあなたには喜びも悲しみも打ち明ける人がいる。

 その思いを打ち明ければ、思いは強まって、どんな困難にも負けない自分が生まれる事だってあるよ」

「でも失敗したら怖い」

「時には失敗する事だってあるよ。それにうまく行くことなんてざらにはないわ。

 でも私は生きていれば意味があると思うよ」

「意味って何ですか?」

「それは自分で探すんじゃない。私は思うんだけど、それが人生の醍醐味だと思うんだけどね」

 なるほど。


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