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勇者の剣  作者: 柴田盟
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偉大なる勇者への仲間からの熱い愛。

 このネットゲームであるギガンテスワールドは敵と戦うだけではなく、まるで旅行に行くような気分で観光スポットなどある。

 でも私は今まで戦い専門で利用したことがない。

 それはそんな事を利用して何が楽しいのかと疑問に思ったからだ。

 でもヨミとなら観光したいと思って、オーロラを見に行こうと提案した。

 するとヨミは微笑ましい笑顔が文字から垣間見えるかのような了承をしてくれた。

 聞くところ、そのオーロラは本当のオーロラを見るよりも美しい物みたいだ。

 その地名はそのまんまであり、オーロラの谷と言うところだ。

 それとこれは知らなかった事だが、やはりネットゲームらしく、そこにもモンスターは存在して戦いは避けられないみたいだ。

 オーロラを見るにはラスボスのギガンテスほどの強さではないがボスも存在するみたいだ。

 早速私とヨミはオーロラの谷に続く道を走っていた。

 そこは星が降り出しそうな幻想的な世界であった。

 その景色に心奪われそうになり、私はオーロラの谷はもっと美しい所だと心がときめくようにワクワクとしてしまう。

 まあ、私はヨミと一緒に冒険できる事の方が意味あるのだと思っているから、そんな事は二の次三の次である。

 ヨミと目的地であるオーロラの谷に向かう途中に、やはりモンスターが襲ってくる。

 だが熟練したヨミと勇者の剣を持つ私にとって敵ではない。

「モンスターは大した事はないみたいだね。これならボスも楽勝でしょう」

 調子に乗って私はヨミに言う。

「いや油断は良くないぞサミー。戦いに油断すると痛い目見るぞ」

「分かった」

 ヨミに叱られて私は気を引き締めた。

 そうだよね。ヨミの言うとおり油断したら痛い目見るもんね。

 その通りであり、オーロラの谷に向かう度にモンスターが強くなっている。

「だんだん敵が強くなってきているね」

「うん」

 とヨミは返事をする。

 でも油断してもそんなモンスターなど楽勝であった。

 だが、先ほどヨミに言われた通り油断は大敵だ。

 やはりその事に私はヨミに感謝している。

 進む度進む度にモンスターは強くなってきている。

 それに気を抜くとやられてしまうんじゃないかと思うほどの強いモンスターが現れる。そこでヨミが、

「聞いた事がある。強ければ強いほどに対当するモンスターが現れると」

「じゃあ私達はかなりの熟練者だから、強いモンスターが私達の前に現れるって事?」

「そうみたいだね」

 ヨミが言っている側からレベルの高いモンスターが現れた。

 巨大な斧を持ったキングゴブリンだ。

 だが勇者の剣を持った私と熟練者のヨミとのコンビネーションの敵ではない。

 即座に倒して私達はオーロラの谷に続く道を走り続けた。

 どんなに強いモンスターでもマズルカの洞窟で得たヨミの持つ七十%の確率で敵を一撃させるアサシンダガーがある。仮に一撃にはならなくても私が持つ勇者の剣の攻撃に一撃で倒れない敵などいない。

 まさに私とヨミは最強のコンビだと言っても過言ではない。

 そろそろオーロラの谷に到着する。

「そろそろボスね」

 ヨミが言う。

「そうだね。気を引き締めないとね」

「行くよ」

 オーロラの谷の前に巨大なスライム状の敵がその先に続く道を塞いでいた。

 どうやらボスみたいだ。

 私は大きくジャンプをして、その勇者の剣をスライム状のボスモンスターであるジャーミーに切りつけようとするとジャーミーは大きく後ろにジャンプして私の攻撃はかわされてしまった。

 そしてジャーミーは後ろに着地して、再びジャンプして私とヨミに突進してきた。

 私とヨミはうまくジャンプして後退した。

「なかなか手強いかもね」ヨミ。

「ヨミの言うとおり油断大敵だね」サミー。

 するとジャーミーはボールのような形に変形して、激しく転がってきた。

 私とヨミは以心伝心して、二手に分かれた方が良いと思って分かれた。

 ジャーミーはヨミの方に攻撃を仕掛けた。

 ヨミは必死に逃げるが、ジャーミーの攻撃を受けてしまい、HPの四分の一のダメージを受けた。

 そしてジャーミーは元の姿に戻って動きが止まった。

 私はチャンスだと思って、大きく飛躍して勇者の剣を構えジャーミーに切りつけた。

 手応えあったが、ジャーミーはスライム系のモンスターなので物理的な攻撃には強くダメージは普通の四分の一ぐらいしか与えられなかった。

 スライム系のジャーミーの弱点は魔法攻撃による炎と氷だ。

 私は戦士でヨミは盗賊だ。

 物理系の攻撃しか出来ないので魔法使いなしでの戦闘はラスボスのギガンテスよりもたちが悪いかも。

 だったらもっとオーロラの谷に関する観光スポットの情報をいろんな人に聞いておくべきだった。

 そうすれば、魔法使いなしでも炎と氷の攻撃が出来るアイテムをたくさん買って倒すことが出来たのに。

 だが今更後悔しても仕方がない。

 そんな事を考えている間にジャーミーは大きく飛躍して私を突進して踏みつぶそうとするが私にそんな攻撃など通用しないと思って後ろに飛躍して交わした。

 するとジャーミーは再びボールに変形して私の所に転がってきた。

「上等だよ」

 何て調子に乗った私は転がってきたジャーミーに勇者の剣を構えて迎え打ってやろうと思ったが、転がってきたジャーミーに切りつけたがダメージは受けず私はカウンターでジャーミーの攻撃をまともに食らって大ダメージを受け、瀕死の状態まで追いつめられてしまった。

 どうやらボール状になったジャーミーは無敵の状態になるみたいだ。

 大ダメージを受けた私のHPは後四分の一しか残っていない。

 もう一発ジャーミーの攻撃を食らえば私はお陀仏だ。

 そんなジャーミーは容赦なく次から次へと攻撃を仕掛けてくる。

 戦う戦意をなくした私は突進してくるジャーミーの攻撃を交わす気力さえもなくなってしまった。

 ここで私が死ねば、次にコンテニューする時はスキルが削減されて、勇者の剣もなくなってしまうだろう。

 そんなのは嫌だが、もはや覚悟を決めるしかないだろう。

 私はその目を閉じた。

 再び開く時には私はもう自分自身に自負していた勇者ではなくなるだろう。

 でもだからってヨミとのお別れではない。

 きっとまた会える。

 ヨミと出会う前の私なら、勇者でなくなることを恐れていただろう。

 その目を開けると、いったい何が起こったのか?ジャーミーが私の目の前で固まっていると言うか凍っていた。

 すると、ヨミが、

「今だ。サミー」

 私はヨミに言われたとおり、凍っているジャーミーに勇者の剣で攻撃を仕掛けた。

 するとジャーミーは粉々に砕けて粉砕した。

 そしてボスを倒した時のファンファーレが流れ、死を覚悟していた私は状況が今一理解できなかった。

「やったぞ」

 ヨミは嬉しそうに私の所まで身を乗り出してやってきた。

「ヨミ。いったい何が?」

 事の顛末を聞いてみる?

「見ていなかったのか?私がジャーミーにアイスダガーを投げつけて凍らせたんだよ」

 なるほど、武器の属性を利用してジャーミーを凍らせたのかと理解する。だから私は、

「よく思いついたなそんなこと」

「まあ、偶然私の持ち物にあっただけだよ」

「でも本当に良かったよ。私は実は死ぬことを覚悟していたんだけどな。ヨミに貸しが出来ちゃったね」

「気にしなくて良いよ。それより、この先の向こうにオーロラの谷があるんだ。さあサミー行こう」

 ヨミは走ってオーロラの谷へと向かって行った。

「ちょっと待ってよヨミ」

 私はその後を追った。

 そして私達はオーロラの谷に到着した。

 その景色はまるで本物のオーロラを見るよりも美しいと思われるグラフィックになっている。

 そんな景色をヨミと見られるだけで心の底から得体の知れないテンションが上がって、空でも飛べそうな気さえしてくるのはなぜだろう。

「テレビでオーロラ何て何度も見たことあるけど、これはそんな物とは比較にならないほど美しいね」

 私が言うとヨミが急に改まった態度で、

「サミー、私とこうしてこのオーロラを眺めている事を忘れないでね」

「えっ?」

 ヨミの言っている事が私には今一理解できなかった。

「それとあなたは一人じゃない。その事に気づきさえすれば、後はあなた次第でその壁を乗り越えられるはずよ」

 私はヨミにプライベートに関する事を問われて憤りがこみ上げてきた。

 そして私はその勇者の剣をヨミの前で構えて、

「お前に何が分かる?」

「・・・」

 ヨミは私の言動に動揺したのか?言葉も発しなかった。そんなヨミに私は、

「お前だって引きこもりなんだろ。そんなお前に私の何が分かるって言うんだよ」

「そうだよ。私はあなたと同じ引きこもりだよ。でも私もあなたも一人じゃない。私の話聞いてくれるかな?」

 熱くなった私を前にしてヨミは冷静な面もちで悠然としていた感じだった。

 察するかにヨミはかなり肝が据わっている事を知って年齢は定かではないがかなりの大人だと言うことが分かった。

 ログオフしてまたアカウントを変えて出直そうか考えた時、なぜか私の中でここで逃げてはいけないような気がした。

 逃げたい逃げちゃだめ逃げたい逃げちゃだめ・・・と言う気持ちが私の脳内でかけ巡った。

 逃げることなら簡単に出来るはずなのにそれを拒む自分がなぜ存在しているのか分からなかった。

 ヨミは私の返事を待っている。

「分かったよ」

 そう言って、私は勇者の剣を鞘に納めた。

「ありがと。とりあえず、話を聞いてくれるだけでもお礼を言っておくね」

「うん」

「サミー勇気を出してごらんよ。そうすればこのオーロラよりも美しい何かが見えてくると思うんだけど」

「私と同じ引きこもりのくせに偉そうな事言わないでよ」

「別に偉そうな事は言っていないよ。ただサミーには幸せになってほしいと思って」

 幸せになって欲しいなんて言われたのは生まれてこの方初めてだった。そんなヨミは続けて、

「私も引きこもっている身分でやっぱサミーの言う通り偉そうな事は言えないよ。だから私は勇気を出して昨日やっと私の唯一の親である母さんに顔を合わせたんだ。

 すると母さん目を丸くして私を抱きしめてくれたんだ。

 よっぽど心配で私の事を愛してくれていたことが分かって、少しずつ勇気を持って外に出る決意をしたんだ」

 外に出る事は勇気が必要だと言うことは分かった。でも私は、

「現実なんて残酷で醜いだけだよ。それに辛いことだってたくさんあるよ。そんな現実に私には用はないよ」

「確かにそうだね。現実は残酷で醜い、それに辛いことだってたくさんある。

 でもその思いを分かちあえば、幸せになれるよ」

「でも私には分かち会う・・・」『人なんていない』と続けたかったがそう言い切ろうとしたがためらってしまう。それは私には母さんと姉さんがいるからだ。

「ほらいるんじゃない」

 ヨミは言う。でも私は、

「そんな人いないよ。家族は心配しているふりをして、世間との面目を保ちたいだけなんだよ」

 そう言いきって私はすっきりしてしまう。でもヨミは、「本当にそうだろうか?実はそう思いたいんじゃない?」 ヨミの発言にカチンと来て私は勇者の剣を構えて、

「ふざけるな」

「斬りたければ斬って良いわよ。私は命を懸けてもサミーに幸せになって欲しいから」 

 そんな事を言うヨミに対して切りつけようにも切りつけられなかった。

 私は剣をしまい、ログオフしようとした時だった。

「サミー行くんだね。明日私はオカリナの川で待っているから」

 パソコンの画面から離れて、窓の外を眺めると朝の光が部屋にこぼれ落ちていた。

 またアカウントと名前を変えなきゃな。

 そう思った時、ヨミに言われた事を思い出した。

『勇気を出して』

 と言う言葉だった。そして、

『気づこうとしなければいけない』

 と。

 その二つの言葉が交差するように私の脳内にかけ巡った。

「うるさーい」

 と私はつい大声を出してしまった。

 ついとは言え、また私は姉さんに心配されてしまう。

 その通りであり、

「亜希、どうしたの?」

 ドアをノックする音が聞こえた。

 姉さんは心配そうな口調で私に訴えかけている感じだった。

 先ほど、ヨミに『世間を保ちたいから、姉さん達は私をこの部屋から出そうとしたんだ』って言った時、『それはそう思いたいんじゃないか』と言われ私はカチンと来た。

 でも考えて見れば、その通りだとなぜか思えて来た。

 姉さんの前に姿を現そうかと考えた時、私の脳内にあの体罰教師の太田の姿が思い浮かんで、出来なかった。

 その時、『勇気を出して』とヨミの言葉が浮かんだがそれでも出来なかった。

 私は臆病な自分に嫌気がさして涙がこぼれ落ちた。

 私はどうすれば良いのだろう。

 ヨミだ。ヨミのせいだ。

 ヨミに会わなければ、私はいつものようにネット内で勇者と名乗っていられたのに。どうして?

 私の心の中はもはや複雑で絡まりあっている。

 何が正しいのか?何が間違っているのか?分からない。

 その時私は死んでしまいたいと思ったが、死ぬ事をなぜか拒絶してしまう。

 死ぬのは怖い。でも現実の世界に顔を出すのも怖い。かと言って、生きる事に私は嫌気がさしている。


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