かくも禍々しいその姿
魔界
この世界では魔物が生息する領域を指す
その隅にある魔王城
人類最大の敵、魔王の住まいでもある
今そこに魔界の危機が迫っていたとは魔界の誰もが気づいていた
気づかないはずがなかった
その姿に
圧倒的存在感とセットになった魂を押し潰さんばかりの威圧感と、見た者の身体が爆散しかねない衝撃波を放つにもかかわらず極めてゆるりとした歩みは周囲を更地に変え、途中の障害物はモブであろうと地形であろうとお構いなしに血または地煙に変え、一路魔王城に突き進むみすぼらしくも禍々しい、布を纏った人間くさい人型に
人間相手なら高位冒険者すら瞬殺してしまえる同胞たちがなすすべもなく虐殺されていく光景は、魔物であろうと心が折れるものらしい
すでに多くの魔物が我先にと魔王城から退避を始める始末である
というのも
「いねーがあ…」
「わるいまおうは、いねーがあああッ!」
先程からこの「呟き」が衝撃波を持って魔界全域に響き渡っているのであった
魔王城に進路を取っていること
そしてこの呟き
言わずもがなである
そりゃ逃げるわな
さて取り残されたのは魔王ただ一人であった
側近たちは全員逃げ出した(笑)
畜生あいつら覚えてやがれ、次に会ったらこの報いは必ず受けてもらう
意識の片隅で魔王は思った
いや無理だと
もう自分にそんな機会は時間はないのだと
呪術装甲コーティング済みオリハルコン製の外壁と無限亜空間積層内壁をまるで子供の作った砂の城や落とし穴かのように大人げなくぶち抜いて現れた、魔界のどんな魔物すら足元に及ばない見たこともない禍々しい瘴気を纏ったその何かを目前にして
く、コロセっ、ヒッ
チビる魔王
…そして世界は静かになった