鍛冶師さんは魔石を探す。
感想が来る度どきどき。
嬉しいし、怖い。
気づくと、弓持ちが死んでいた。反応が無い。
血にまみれた盾を「修繕」で綺麗にしてから消す。
終わりだ...
盾のお蔭か、割と簡単に倒せたか?
それでも、危なかったけど。
休憩してる時間もない。
やがて、夜になる。それまでに、コレどうにかしなきゃな。
魔石は胸、心臓の辺りにあるらしい。
それを取り出さなければならない。自分でだ。
解体を頼むお金もないし、俺が殺したと、何処かでダンにバレルかもしれない。
もう、辺りには誰もいない。見られる心配もない。
草原まで行って、自分でやるかあ。
麻の大きな袋を造りだす。
バラバラに散らばっている三匹を引きづり、中に入れた。
(俺、三人分だ、重いなあ...)
草原へと、袋の後を残しながら歩いていく...
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すっかり、夜が更けた頃、宿に帰り着いた。
解体は初めてでは無かったが、魔石を取り出すのには苦労したな...まだ、手に感触が残っている。鉄臭い匂いも。
一階にはまだ明かりがついていたが、もう夜の食事は終わったらしい。
片づけをしていた店主が教えてくれた。
「遅かったな、坊ちゃん。もう、スープの一滴も残ってないよ」
お腹、空いたなあ...
そんな気持ちが顔に出ていたのか、笑いながらパンを俺によこしてくれた。
それを頬張りながら階段を上がる。
これだけでは足りないが仕方がないか。
戦闘と慣れない解体のせいで、腹は減ったし、身体はくたくただ。
だが、まだ寝るわけにはいかない。
部屋のドアを開き、カンテラに火をつけた。
腰に下げた袋から取り出したのは魔石。
提出しなければならないが、見るぐらいだったらいいだろう。
弓もち、興味あるしな。
三つの魔石を手の平に乗せてスキルを使った。
頭に情報が入ってくる...
一つ目が、剣術の魔石。
二つ目が、光魔法の魔石・
三つめが、観察眼の魔石だった。
あの、弓持ちは「観察眼」だったんだなあ。
良いスキルだ。持っている奴はあまり見たことが無い。
観察眼は複合型スキルだ。三つのスキルが合わさっている。
コレのせいで俺は見つかったんだろう。
大事にしまい込み、硬いベッドに横たわる。
これをどう使うか...
それで、俺のこれからは変わるだろう。
今日は、久しぶりに刺激的な一日だった。
でも、明日からはきっと、ずっとそうだ。
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ダンが街から出ていったことを確認し、ギルドに向かった。
あの野郎、もっと早く起きろよ...
受付に魔石とゴブリンの牙を置く。
「終わりました。報酬、貰えますか?」
想像通り、彼女は驚く。
「ほんとに強くなってたんですねえ...でも、どうやって?鍛冶師の貴方が?」
どう...答えよう?考えてなかったな。
盾のことを話すか?あれが無ければ俺は死んでた。
彼女は俺の「武具魔石強化」が使えると言うことを知らないだろう。
重要視していない。
教える...?
そんなわけが無い。
あれは俺の力だ。
他の奴の手に渡って良いもんじゃない。
俺だけが造れる。
俺のものだ。
俺は鍛冶師じゃない。
渡さない。金を貰っても渡さない。
絶対にだ。あれは俺のものなんだから。
話してはいけない...
「どうしました?」
「ああ!ええと、どうやって倒したか、ですよね?そりゃ、剣でばばっとですよ。俺、強いんですよ」
と言ったものの受付嬢さんは信じていないようだ。
ジトッと見つめてくる...
「まあ、良いです。貴方は何か、隠しているけど。倒したんですから。報酬を払いますね」
彼女は受付台の下を探り...
「金貨から、十五枚と...銀貨五枚ですね」
一気に所持金が増えるな。
しかし、これを貰えるかどうかはまだわからない。
「あのー、魔石、貰ってってもいいですかね?それでも大丈夫ですか?」
「何のために?」
「僕のスキル、使えないけどレベルは上げとこっかなって」
まあ、魔石何て価値の無いものだ。
対して綺麗でもないし、冒険者の見栄のためにあるようなもの。
「はい、良いですよ。ダンさんのみたくならないといいですね」
多分、ならないだろう。
だんだんやり方も分かってきたし。
そういえば...
「ダンさんの魔石の特攻猪って何ですか?ここらへんに?」
「はい、森を抜けたところに大きな谷があるの知ってますよね。底の見えない、狭間の峡谷。あの辺りにはいっぱいいるんですよ。まあ...鍛冶師さんには関係ないと思いますけど」
何故だ?
きっと、種族全体がスキル持ちの魔物だ。
幸運じゃないか。俺にぴったりだ。
「じゃあ、俺もそれの依頼受けます」
「駄目です、本当に強いんですよ!あなた、ゴブリンを倒したかもしれませんけど、死にますよ。わざわざスキル持ちを狙う意味もないじゃないですか」
いや、大いにある。
強かろうが関係ない。その魔石で俺はもっと強くなる。
「大丈夫です。受けます」
そう息巻く俺に、彼女は説明を始めた...
特攻猪のスキルは「自爆」、それをすべての特攻猪が持っている。
縄張り意識が強く、侵入者に突進を仕掛け、痛手を負ったら内臓をぶちまけながら辺りを巻き込む自爆をするのだと言う。
一人では絶対に狩れない。そう彼女は何度も言った。あなたは何故か、一人だからと。
一人が大盾で受け止め、もう一人が急所を突き一撃で殺す。
それが普通らしい。
だが、俺なら大丈夫だ。
吸収の盾を持った俺なら。
いける、大丈夫だ...
「分かりました、受けます」
「ええ...!!ホント洒落にならないですよ。身体、ぐちゃぐちゃになりますよ!」
兎に角受ける。
そう言い残してから、まだ何か喚いている受付嬢さんから離れる。
何が一人じゃ狩れないだ...
やって見せるさ、俺の武具と一緒に。
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兎も角、何事も準備が大事である。
宿に帰って、武具を造ることとした。
先ず初めに試すのは...剣術だな。
俺、使えるし。失敗しても問題ない。
剣を造りだし、魔石で強化した...
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鋼の魔剣
質:中級
素材:鋼、なめし革、剣術の魔石
鋼でできた小ぶりな剣。
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うん...説明が少ない。
剣術スキルは使えるようになっているんだろうか?
試しに使ってみるか。
「武具の心得」は意識せずに剣を振る。
それは、あまりにも弱弱しいものだった...変わってないぞ?
(これは...駄目なのか)
まあ、良いか。
どうせ使わないしな。次だ。
光魔法はどれに使おうか...これは失敗できない。
光魔法の主な働きは回復と補助だ。
しかし大きな光を放つものもあるし、考えて使わないと。
携帯が容易にでき、取り外しもしやすいもの...
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光の打根
質:中級
素材:鋼、木、羽根、木綿、光魔法の魔石
筈尻に紐が仕込まれた、矢状の槍。触れた生物を癒し強化する。強い光を放つ。
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...!!
成功だ!
早速使おう、使ってみたい。
バーン。
奴が言っていた詠唱を思い出す。あれが無くては魔法は使えない。
「光よ、我は癒しを求む、淡光となれ。『治癒』」
すると...
何も起きない。光は出なかった。
何でだ...?詠唱、合ってたよな?
間違いない。
何度もかけられた。何度も聞いた。
もう一度だ...!!
「光よ、我は癒しを求む、淡光となれ。『治癒』」
駄目だ。
光は出ない。
これも...駄目?
やはり、俺のスキルは使えないのか?
そんな筈は...
苦労したんだ。頑張ったんだよ。これしかないんだ。
光れ、光れ、光れ、光れ、光れ、光れ...
そう思っていると打根が眩いばかりの光を放つ。
俺は慌てて消えろと念じた。
何故詠唱した時につかず念じるとついたんだろう?
俺は考えた。
そして、この「武具魔石強化」のことが分かる。
俺はスキル持ち武具を装備すれば自分もスキルを使えるようになる。
そう考えていたが、どうやら違うようだ。
あくまでも魔石と合成したのは武具。自分は何も変わっていない。
そして光魔法スキルは合成した時点で武具と混ざり合い違うものへとなっている。
だから光魔法スキルは詠唱しても使えないし、その必要もないのだろう。
そうなると観察眼スキルは考えて合成しなくては。剣に観察眼スキルをつけたりしてもおそらく意味はないだろう。
魔石と武具には相性がある、観察眼、眼に関係するものだ...
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観察眼のゴーグル
質:中級
素材:ガラス、鋼、なめし革、観察眼の魔石
眼を保護するガラス製のゴーグル。
暗視、遠目、観察のスキルを持ち、覗くことでその恩恵を得られる。
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おお!!
これは成功か。
剣術みたいに駄目かと思ったけど、やはり、相性も大事らしいな。
ゴーグルを掛け、外を覗く。
ここからでも、森の遠くまで見えた。
凄い!凄い!
小さくなったり大きくなったり、視点が荒ぶる。
コレ、楽しいなあ!
と調子に乗っていると酔う...練習が必要だ。
剣術は駄目だったが、それでもいいさ。
また、力を手に入れたんだ。
明日はきっと、大漁だな。