鍛冶師さんは亜種を探すためギルドへ。
ハーレム要素皆無にも拘らず読んでくれる人がいっぱいだ...
感謝です!
この盾...凄すぎるだろ。
右手に持つ盾を見る。
何の変哲も無い普通の盾。
魔石が嵌っていること以外は。
どれぐらいの衝撃まで耐えられるのか、それは分からないが、ゴブリン程度なら余裕だな。
「武具魔石強化」のスキルって、こんなにも使えたんだなあ...
もしかしたら、ダンの剣だって良い感じに爆発してくれるのかもしれない。
成長した俺の「武具目利き」で見たら分かる筈だ。
それか、魔石と武具に相性があるのか。
偶々このスライムの魔石と、盾の組み合わせが良かったのかも?
兎も角、これも俺の力だな。
(しかし、使うには魔石を必要とする...)
どうするか?...決まっている。
もう、どっちにしろ金も尽きそうになっているのだ。
依頼を受け、魔物を殺すしかない。
十分とは言い難いが、スライムを何千と殺したお蔭で俺も強くなれた。
そろそろだ...
ギルドに行くしか無い。
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亜種は希少だ。
突発的に魔物から生まれてくるスキル持ち。数は限られている。
そこらを歩いていればばったり出会うってもんじゃない。
情報が必要だ。
ダンにやられて以来、一か月ぶりといったところか。
ギルドに入る。
ダンはいない。
少なくとも一時間ほどは帰ってこないだろう。先ほど仲間たちと森に入っていくのを見かけたからだ。
受付まで俺が進んでいくうちに、賑やかだったギルド内は静まり返っていった。
俺が冒険者を続けているとは、まだその気があるとは誰も思わなかったのだろう。
構ってもいられないので目を合わさないようにして歩いた...
「すみません」
ペンを走らせていた受付嬢さんがパッと顔を上げる。
その顔は、如何にも驚いたと言った感じだ。
「わー!鍛冶師さんじゃないですかあ!どこ行ってたんです?一か月も顔を見せないでー。あの人はクラスを取りに来たんだなあって思っちゃってましたよ」
明るく話す彼女。
その声はあまりにも今、この場には相応しくない。
やはり、何も知らないのだ。
悪いのはダンだ。
ギルドは関係ない...変わらない受付嬢さんを見ると、少し安心した。
「ええと、ちょっと遠くに行ってたんですよ。冒険者はやめません。それと、俺鍛冶師じゃないですから」
返事もせずに、にこにこ頷く受付嬢さん。
本当に分かっているのだろうか?
本題を切り出す。
「今日は依頼を受けに来たんですよ。亜種の依頼って有りますかね?」
受付嬢さんは少し、難しい顔をした。
「亜種って...強いんですよ?大丈夫かなあ。よくいるんですよ。魔石を取って、格をつけようって言う輩が。やめた方が良いと思います」
そうは言われても、強くなるにはこれしかない。
「いや、俺はそうゆうんじゃなくて...そう、俺この間に強くなったんです!力を試したいなって」
自身満々といった感じに言ってのける。
受付嬢さんは疑わしげだ...
「まあ、良いです。危なかったら、すぐ逃げて下さいよ。名誉より、命の方が大事ですから」
無論、そのつもりだ。
その言葉を言い残して彼女は一度奥へと引っ込んだ。
「はい、コレ」
そういって、数枚の羊皮紙を俺に手渡す。
「良いの選んで、持ってきてください」
羊皮紙は...四枚。
しっかり読まないとな。
隅っこの、空いている席へと腰かける。
視線が集まっているのが分かる...居心地が悪いな。
早く決めてしまおう。
先ず一つ目。
種族全体が咆哮スキルを持つ緑翼竜の討伐...無理。
次。
透明化スキルを持った森林狼亜種の討伐。
これは...無理。
三枚目。
直ぐ近くの森。丁度、俺が戦った湖だ。
これ、どうだろ...
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ゴブリン亜種の群れの掃討
条件:魔石、ゴブリン亜種の牙の提出
報酬:金貨十五枚、銀貨五枚
ゴブリン亜種三匹が、森の湖に住み着いた。
近頃、馬車が襲われる等の被害が相次いでいる。
情報により、内二匹のスキルは判明しており、剣術と光魔法と分かっている。
一匹は不明である。
昼間は馬車を襲い、夕暮れになると森の湖の方角へと向かう姿が目撃されている。
常に三匹で行動している。十分に注意されるよう願う。
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これが、一番簡単そうだな。
後の一枚は...駄目そうだし。
受付嬢さんに羊皮紙を渡す。
「この、ゴブリンのでお願いします」
判子を押して、彼女は言った。
「では、くれぐれもお気をつけて!」
出来るかは、分からない。
しかし、やるしかない。
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湖の近くの茂みで身を隠す。
前と同じだ。
陽は傾き始めた。
情報通りだとしたらもうすぐやってくるだろう。
最初に戦った時とは俺は違う。
やってやるさ...
十数分待った時。
奴らは来た、その佇まいにまず驚く...
ゴブリンと言えば、奇声を上げて、棍棒を振り回す。
そんなイメージしかないが、こいつらはまるで違った。
声も、音も立てずに警戒している。
奴らには知性がある。
そして、その姿。
ぼろきれでは無い。馬車から奪ったものだろうか?身ぎれいだ。剣、杖、弓。各々武器を持っている。棍棒ではない。
それに、普通のゴブリンと比べ、大きいように思える...俺と一緒くらいか。
スキルを持っているだけで、魔物はこんなにも変わるものなのか...?
どうするか...?
思ってたよりも強そうだ。
今なら逃げれる。まだ安全だ。どうする...
いや、逃げちゃ駄目だ。
ここでやんなきゃ弱いまま。
やるしかない。
やるぞ...!
三匹の周りに張りつめた空気。
迂闊に近寄って行っては必ずばれる。
ここは、遠距離だ。
短弓と矢を、手に造りだす。
ここからでも、今の俺なら届く筈だ。
先ず、「精神統一」。
一連の動作を終えると弓術スキル「拡大」と「強撃」を使い、限定的に身体能力を上げる。
狙うのは、光魔導士らしきゴブリン。
あの、ローブを纏ったゴブリンだ。
スキルのお蔭で良く見える。
外すことは無い...構えをとる。
「グガアアアアアアアアア!!!」
不意に弓持ちが叫ぶ。こちらに向かって...
(何故ばれた...この距離だぞ!!)
「っらあああ!!」
なりふり構わず弓を撃つ。
ばれてしまったのならしょうがない。
放たれた矢。
狙い通りに杖持ちの脳天に突き刺さった。
後、二匹...!!
間髪入れずに攻撃は来る。
弓を消し、手斧、それと吸収の盾を取り出した。
飛んでくる矢。
それは、俺を少しずれて土へと刺さる。
(弓持ち、あいつは弓術じゃないのか?)
命中率はそれほどでも無い。
時折、俺に当たりそうな軌道の矢は盾で防ぐ。
その攻防の合間。剣持ちとの間は縮まっていた。
数メートルに剣持ちが差し迫った時。
突然、加速した。一足で...俺へと到達する。
咄嗟に盾を前に構え、防いだ。
激しい金属音が鳴り響く。
今のは知っていた。剣術スキル「踏み込み」だ。
眼にもとまらぬ速さ。盾があってよかった。きっと俺は吹っ飛んでいただろう。
盾はびくともしない。
動きもしない金属へと力をぶつけると、当然、反動が来る。
隙を見せたゴブリン。
「兜割り」で頭をかち割った。
こいつはこれで終わり。
後は...
ひゅっと俺の頭を掠める物があった。
弓持ちだ。
少し大きな盾を造りだし、弓持ちへと向き直す。
がんがん盾に矢が当たるのが感触で分かった。
しかし、驚異では無い。構わず走る、走る、走る。
そして、そのままの勢いで盾で体当たりを仕掛ける。
ただの体当たりではない。「盾特攻」盾術スキルだ。
体勢を崩したゴブリン。
その上に馬乗りになる。
この前とは逆だ...
盾でゴブリンを殴りつける。
何度も、何度も。