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鍛冶師さんはスキルを使う。

大量の血を吹き出し既にこと切れたゴブリンを引きはがす。


首を掻っ切ったまでは良かったのだが、その下にいる俺には当然血が降り注いだ。

おかげで全身ゴブリンの血だらけ...臭い。



全身真っ赤で血の匂いをさせながら街に入ることはできない。

ましてやゴブリンの血、その匂いは強烈だった。

体を洗う必要がある。



ここが池で良かったな...他の魔物が来ないうちに血を落とすか。

周りに警戒しながら防具品を脱いだ。





防具を濯ぎながら考える。


さっきのナイフ。

あれは俺のスキルだよな...?奇跡が起こったという訳ではないし、夢でもない。

未だに青銅のナイフは地面に転がっている。



突然右手が光に包まれて、次の瞬間手に金属の冷たさが伝わった。

あれは一瞬の出来事だった。


手を伸ばしナイフを手繰り寄せる。

血に塗れてはいたが、池の水で濯いでみると刃はしっかりとついているし、実際ゴブリンの首は切れた。

造りの確かなものであることは間違いない。



それを一瞬で、しかも考えるだけで造れる...すごいじゃないか。


鍛冶師関係のスキルは役に立たないと決めつけていたが、どうやらそうでもないようだ。

あの時、ナイフがなかったら、どうなっていただろうか...



これも俺の力と成り得るもの。

帰ったらしっかりと確認しとかないとな。



濯いだ防具の水を落とし、着た。

身体はまだ血でべとべとしている。しかし、長居もしてはられない。



ゴブリンの血の匂いが辺りには漂っている。

仲間のゴブリンが来るかも...何人で?


兎も角、俺は今、戦いたくなかった。

弱いとされるゴブリンと三匹戦っただけで死にかけた。

もっと沢山来たらどうする、今度こそお終いだ。



腰に下げていた剥ぎ取りナイフを取り出す。

手近なゴブリンの牙を剥ぎ取り、腰袋に入れた。






足早に街へ向かい歩いていくその道すがら思う。



あのゴブリン、普通の大人より力は強かったし、すばしっこい。

あんなのと毎日殺しあってたら、命が幾つあっても足りない。


それを雑魚というのだから、冒険者たちの強さが窺われる。


きっと、冒険者の強みはスキルにあるのだろう。

スキルを使っていたら受け流せていた攻撃も、スキル無しでは太刀打ちできなかった。

それに「振り下ろし」あの威力は絶大だ。



今まで会った冒険者の全員が強化系のスキルを持っていた。

例えば強化、俊敏、遠目、遠視、思考加速、等。


それらは補助的なものだと考えていたがそれは間違い、きっと絶大な効果を発揮する。

だからこそゴブリンを雑魚だといえるのだ。



対して俺には強化系統のスキルは無い。ゴブリンにも手こずる。


やはり、受付嬢さんの言っていたことは正しかったのかも?

鍛冶師に冒険者は向いてない、当たり前だ。




しかし、易々と諦められるものではないのだ。

俺には確かに戦闘のスキルは無い。しかし、鍛冶のスキルならある。


それを使って生き残っていくしか無いのだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ゴブリンの血で汚れた身体を清潔にしてからギルドへと向かった。


あの受付嬢は俺がゴブリンを倒せないと高をくくっていたように見える。どんな反応をするか楽しみだ。


受付にドンッとゴブリンの牙を置いた。


「ゴブリン、倒してきましたよ」


自慢げに言ってのける俺に、やはり彼女は驚く。


「鍛冶師のあなたが...てっきり逃げ帰ってくるかと。不正はありませんよね?」


なるほど、そういった手もあるのか。

だが勿論...


「誓って、そんな事はありません」


そういった後も彼女はしばらく不思議に思っていたようだが、やがて切り出す。


「...では、ギルドタグを貰えますか?本登録を行いますので」


差し出した手からタグをとると彼女は受付にある機械にそれを通した。

これで本登録とやらができるのか?


「はいできましたよ。確かめてみてください」


確かめるとはタグを持ち念じるということだろう。

念じてみると確かに、鍛冶の申し子の横に「冒険者」が増えていた。


これで俺も冒険者か。

なんか、ジーンと来るものがあるなぁ。


余韻に浸る間もなく受付嬢さんは話を続ける。


「えーと、これであなたは冒険者です。本登録の行われたタグは紛失の無いようにお願いしますね。それとあなたのクラスとスキルをギルドのほうで管理させていただきます。もう一度タグを貸してもらっていいですか?」


再度タグを渡す。


「ッぷ...あなたのクラスは鍛冶の申し子ですかぁ、聞いたこと、無いです。それにスキルもふしぎなのばっか」


こいつ、今笑ったか!?

確かにふざけた名前ではあるけども...


「ちょっと待っててください。確認してきますね」


彼女は奥のほうへと消えていった。しばし、取り残される。


「やっぱり、登録されてないクラスでした。それにスキルも。鍛冶即効、神の素材庫、魔石目利きは登録されていません。あなた、凄いですねぇ。加護まで持ってて、ほんとに鍛冶師向きって感じで」


凄いといわれたところで...

鍛冶師になるつもりはさらさら無い。


「新しいスキルと加護の方、記録させて貰いますね。ちょっとやってみてください」


やってみてください? しかしどうやって...?


「やり方わからないです?タグを持って考えればわかりますよ」


タグを握ると確かに、細かい情報が頭に入ってくる...



///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


スキル

鍛冶LV1…鍛冶全体の質に補正がかかる

武具素材強化LV1…武具を素材で強化する際補正がかかる

武具修繕LV1…武具の修繕に補正がかかる。

武具目利きLV1…見ることで武具の情報を得られる

素材目利きLV1…見ることで素材の情報を得られる


固有スキル

武具の心得LV1…全ての武具スキルが取得可能

        斧術LV1盾術LV2

武具庫LV1…LVに比例し武具を収納できる

神の素材庫LV1…LVに比例し素材を収納できる。LVに比例し素材を無限に扱える

        LV1~LV10…糸、弦、麻、毛皮、なめし皮、木、青銅、ガラス、染色料

武具魔石強化LV1…武具と魔石を合成する

魔石目利きLV1…見ることで魔石の情報を得られる


加護

鍛冶神の加護・・・素材さえあればその過程を伴わずに鍛冶、強化、修繕ができる。

       完成品の質が大きく上がる。

///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


...頭が痛くなってくる。

生産特化すぎだろ。


大体、この手で加工をせずとも完成品ができるのがおかしい。素材はどこからか出てくるし...


そんなことできるわけがないとは思うができるみたいなんだよなぁ。



取り敢えず、何を造ろうか...さっきも造ったナイフが丁度いいかな。


手が光で包まれた後、青銅の板が出現する。

良し、ちゃんと出た。


「これが、神の素材庫ですね」


「へぇー凄い。どこから出したんですかぁ。鍛冶師になればいいのになぁ」


それは絶対にない。

返事もせずに頭の中で想像する。青銅のナイフを。


またもや手は光に包まれ、思う通りのナイフができた。


「そしてこれが、鍛冶神の加護。あの~魔石武具合成は魔石がいるみたいなんですけど。僕、持ってないです。」


そう。武具魔石合成には魔石が要るみたいなのだ。


極稀に、スキルを持った魔物が出ることがある。その魔物の心臓あたりにあるのが魔石だ。

冒険者の中では持っている魔石を誇りとし、数を競い合うが、俺は当然持っていない。


「あー、そうですか。じゃあ誰かに貰いましょうか。えーと、あ、そうだ!ダンさんならいっぱい持ってるから分けてくれるかも」


そういって彼女は手招きをする。

その方向にいたのは酒を飲みほす大柄な大男だった。


「あ?なんだあ!俺は今忙しいんだぞ!」


ダンと呼ばれた大男はゆっくりとこちらに近づいてくる。

その姿は意図せずとも周りを威圧するようだった。


「あのーこの人、武具魔石合成っていうスキルを持ってるんですけど魔石がなくって。一個貰うことってできませんかねぇ?」


それを聞いた瞬間、ダンは笑い始めた。


「魔石をやれるかって?...やれるわけねぇよ!魔石は俺たちにとって誇りだ。誇りは渡せん。」


確かにその通りだよな。

魔石を持つ冒険者に魔石を見せてもらったことがあるが、触らせてももらえなかった。それ程大事な物なのだろう。


「困ったなぁ...そうだ!あなたの武器と合成して貰ったらどうですかね?きっと強化されると思いますよ。」


彼女はそういうが、強化される保証はない。

(適当なこと言うなよなぁ...)


「本当か?おい、そこの坊主」


急に話を振られる。

食いついてきたか。


「ええ、多分ですけど。何かしら良いことはあるかと。タグでスキル確認してみますか?」


ダンにタグを手渡す。

ダンはタグを握ったまま黙り込んでしまった。何故か怒っているようにも見えるが...?


「そうか、それならやってもいいぞ」


良いのかよ...成功すれば良いんだけど。

ダンは腰袋から魔石を一つと肩に下げていた長剣を手渡してきた。


それらを受け取り手の上に乗せる。

眩い光の後、出てきた長剣はあまり変わりが無いように見えるが...

いや少し、違う。柄の部分に魔石が嵌め込まれていた。これで何かが変わったのか?


ダンに長剣を返す。


「うーん、あんま変わってねえぞ?お前、武具目利きのスキル持ってたよな。見てみろよ」


そうか、そのスキルで見れば...!

ダンが持っている剣を俺は見た...


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


鉄の魔剣


質:低級

素材:鉄、なめし皮、特攻猪の魔石


爆発する


///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


え?...爆発する?しかもそんだけ?

これはどういうことだ?


「おい、坊主!何が見えた。もったいぶらず早く言え!」


どうしよう?

言えったって、何て言えば良いんだ?あなたの剣は爆発しますとでも?


「早く言えよ!面倒なやつだなあ!」


ダンはイラつき始めている。

(もういいか、言ってしまえ)


「あのー言いにくいんですけどぉ」


「何だ!!」


「あなたの剣、爆発します...」




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