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鍛冶師さんは初戦闘。

今日中に後二話いきます。

ギルドにいた時間は一時間ほど。

その大半はギルドタグを握りしめ、茫然としていた。



無駄な時間ではあったが、得た情報もある。

俺のクラス「鍛冶の申し子」は完全に生産特化というわけでもなかったのだ。


頭に流れ込んでくるスキルの情報の中で一つだけは使えそうなものがあった。

それは「武具の心得」だ。


普通、持っている武具スキルは一つぐらい、だがこのスキルではすべての武具スキルが会得可能らしい。

しかし、試してみないことにはハッキリとわからない。



今、俺は平原に来ていた。

近くにスライムがうろついているが、襲ってはこないので大丈夫だろう。


腰に下げていた、斧を引き抜き構えてみる。 ここからどうすればいいのだろうか...?

そう思った瞬間の出来事だった。




頭に流れ込んでくる、型、知識、経験則。

斧を上から振り下ろす。ただそれだけの技。しかし洗練された技。


剣は自己流で鍛錬をしてきたのだから俺が剣の型など知るわけがない。

しかしわかる。わかるのだ。絶妙な身体のさばき方までもが。


試しに斧を構え、振り下ろす。

予想以上の威力で放たれたそれは地面に抉りこむほどだった。



この技の名前は知っていた。


「振り下ろし」だ。

酒場で冒険者に見せてもらったことがある。そして教えてもらった。LV1の斧術スキルだと。



次に防具、盾を試した。

盾術スキルLV1は「堅牢」だったが、これは一人では使えない。攻撃をしてくる相手がいないとだめだ。


まあ、すぐに使うことになるだろうが...





戦闘系クラスにはなれなかったが力は手に入れた。

俺には冒険者と同じ、戦う力...スキルがある。



スキルを確認した俺は森へと進んでいった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


受付嬢さんは言った。

俺がした冒険者登録は仮のものだと。本登録はゴブリンを倒し、その牙を納めることでできるらしい。


父さんが言うには、クラスを持つものが多すぎると駄目らしい。

大きすぎる力は、国が管理できるものではなくなっていく。


そのためギルドは本登録に魔物提出を求め、人をふるいにかける。


ともかく、俺が冒険者になるためにはゴブリンを倒す必要があるのだ。




湖の傍の茂みでじっと息をひそめる。

冒険者たちが教えてくれたが、初心者にとってここは最適の狩場なのだという。


数時間に一度、ゴブリンたちが水を汲みにやってくる。

その数は2~3匹程度。まず、負けることはないはず。



音をたてないように気をつけながらその時を待つ。

息を大きく吸い込み気を落ち着けさせていたところで、笑い声が微かに聞こえてきた。


「...ギュァッグァァ、グギャァ!」


(ついに来た!)


まあ、当たり前だが人の声ではない。ゴブリンだ。それも複数の。

数は三匹。いけるだろうか...


奇妙な笑い声を出しながら、三匹は水を汲み始めた。

奴らが身に纏っているものは粗末なぼろきれ。武器は棍棒。

背の低い俺よりも更に小さく、身体はほっそりとしている。



(何だか...)

楽に勝てそうだ。 そう考えてしまうが、迂闊に正面から挑むことはやめておいた方が良いだろう。


今の俺には飛び道具がないので、遠距離からの奇襲は無理。

静かに近づいて、最初の一匹を殺すのが良いだろう。



ゴブリンは自分たちの塒へと帰っていくのだろうから...

その時に後ろから、脳天をかち割ってやる。



ゴブリン三匹が片手に水桶、棍棒を持ち立ち上がった。


俺は気づかれないよう慎重に近づいていく。


心配していた音はあまり出ず、出ていたとしてもゴブリンの奇声がそれらをかきけしてくれるようだった。


(いける...いけるぞ!)


低く構えていた手斧を高く振り上げる。

そのまま、近くのゴブリンに振り下ろそうとしたが、手を止めた...



俺の力でこいつの頭を割ることはできるのか...?

たとえできたとして、間違いなく刃が痛む。それを直すお金は当然かかる。

頭は止め。





やはり首だな...と、首筋に狙いを定めた時、ゴブリンは不意に後ろを振り返った。


「グバラッシャァアアアアアア!!!!!!」


辺りに鳴り響くゴブリンの威嚇音。

俺は反射的に「振り下ろし」使い手斧をゴブリンの首筋に叩き込む。


首の中ほどまで入り込んだ刃。魔物特有のどす黒い濁った血が噴き出す。

それに自分がやったにもかかわらず萎縮した。


こいつはこれで終わり。しかし、まだ2匹いる。

急いで手斧を引き抜く、その頃には2匹とも、棍棒を振りかぶってきていた。



盾で受け流すように防ぐ、ゴブリンの攻撃は棍棒を振り回すだけのもの。

見極めさせできれば「堅牢」のおかげで防ぐことができた。


左右から来る攻撃を何とか受け流す...しかし、これでは防戦一方、いつかやられてしまう。


両方のゴブリンの攻撃を受け止めた瞬間、盾で棍棒をはじき返し、手斧を振るう。


手斧は丁度ゴブリンの胸の中心辺りに突き刺さった。

しかし、力の加減がうまくいかなかったせいだろう。深く突き刺さりすぎだ。なかなか抜けない。



手斧を抜こうと躍起になっていると、不意にゴブリンが低い姿勢で突進を仕掛けて来た。

予想以上に素早い動き、避けきれない...!



弾き飛ばされ、ゴブリンは勢いのまま俺の上に乗ってきた。

もはや棍棒での攻撃はなく、鋭い牙でゴブリンは俺をかじろうとしている。


眼前まで迫るゴブリンの口。カチッカチッという歯がかみ合う音。


盾は何処かに行ってしまった。そして手斧は結局取れていない。

手で必死に押しのけるが、逆にゴブリンは迫ってくる。


こんなにも力が強かったのか!?

盾で防ぐことはできたのに、やはりスキルの差がある...



腰の剥ぎ取りナイフにはゴブリンが邪魔して手が届かない。

ナイフさえあれば今すぐ首を掻っ切ってやるのに!!




ガチンッ!!


ゴブリンの噛みつきを紙一重で躱す。

ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい!!!


力で圧倒されている。

このままじゃ本当に死んでしまうんじゃ...






せめて、一つのナイフ。一つのナイフさえあれば勝てるのに。


右腕でゴブリンを押しのけながら、精一杯腰の剥ぎ取りナイフに手を伸ばす。

しかし、届かない。 挑戦する、届かない。





くっそ...嫌だ!

死ぬとしても顔からだけは絶対嫌だ!


剥ぎ取りナイフ、剥ぎ取りナイフ! ナイフ! 手ぇ届け! 届けよ!

ナイフを...たった一本でいいからナイフをくれ!!!!

そしたら勝てるのに...




不意に光が右手を包み込む。

そして感じる重み。

そこには小さな、ナイフ。青銅のナイフがあった。


俺は考えもせずにそれをゴブリンに突き刺した。


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