表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

鍛冶師さんは落っこちる。

すみません...すみません...

今日中に後二話行きます。よろしければ、そちらも。


この話は書き直しです。

前話は削除しました。

(何だこれ?)


落ちてる…よなぁ。













クソがあああああっ!!

死んどけよクソ野郎が!






脚にはまだ分銅が絡まっていて、俺とダンとを繋いでいる。


(せめて、こいつを殺してから…)


短剣を、落下しながらダンに投げる。

底はまだ見えない。



不安定な姿勢から放った短剣だったが、寸分の狂いもなくダンの頭に突き刺さった。


しかし、反応は無し。

…元から死んでるのか?




ダンにばかり構ってはいられない。

これはもう死体だ。


底を覗く。

何も見えなかった。ホントに、何にも。

光すら届いていない。どれ程の深さなのだろうか?




(絶望的だな…)


助かるか?この距離から。

助かるわけないよなあ。



ゴーグルを掛け、再度覗く。

やはり、何も見えなかった。


此処で世界が割れているような、そんな感覚に襲われる。



何処に繋がっているのか。

ふと思ったが結果は決まっている。



待っているのは硬い岩肌だけだ。

きっと、おれは潰れてしまうだろう…ペシャンコに。



唯一の救いは痛みを感じずに死ねそうだって事か…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



相変わらず、落ちていた。

底は見えない。


(大分、落ち着いたかな)


現在進行形で落ちているわけだが…

助かった訳ではない。


思い出したのだ。

俺には、最強の盾がある。あの…


「あらゆる衝撃を吸収する」


と言う説明書きが、この状況でも効くのなら助かる見込みはある。


上まで上がれるかはわかんないけども。



取り敢えず、潰れて死ぬのは回避だ。

盾が駄目だったらって言うのは考えない。考えたくない。




盾の上に胡座をかいて座り込む。


(本当、何処まで落ちるんだろうなコレ)


落ち始めてから数分?数十分?

兎に角、いつかは地面に着くはずだ。



ゴーグルを掛け直し、また底を覗いた。


変わらずそこに広がる闇。

段々辺りも薄暗くなってきている。


目まぐるしく過ぎていく岩肌を眺め、辺りを観察する。

ふと、違和感に気付いた。

底の方…何か緑っぽい?



その正体に近づいていく。

光っているのは辺りの岩にある鉱石?


淡い緑の光。

それが辺りを包み込んでいた。


(何処だここ?普通の場所じゃないよな)


雰囲気が違う。

なんて言うか…神秘的なのだ。


やっと底が見えてきたか…?

着地に備える…備えようも無いけど。



…うん。

見えた、底だ。底も緑色の光で満ちている。


段々近づいて行く…



(盾の力を信じろ...!!)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


衝撃は来なかった。

代わりに凄まじい轟音が俺の耳を襲う。盾は岩に激突し、それでも勢いは止まらず谷底を叩き割ったのだ。


細かく砕けた岩の粉塵が晴れるまで、暫く待つ。


(やっぱりか...)


此処は、谷の底。地上からは底も見えない深い、谷の底。

明かりなど存在するはずもない。だが...


粉塵に...色が付いている。淡い、緑の光。落ちている途中にもあった、鉱石の光だ。

これは地上の鉱物ではない。少なくとも鍛冶を手伝っていた俺に、ドワーフに分からないのだから普通の物じゃあない。


(兎も角、ここから出たいな...)


此処はどこかは分からない。

だが這い上がらないことには帰れない。行動を起こさなくては。折角、ダンを殺したのに自分が死んだのでは意味がない。



盾を掘り起こさないと...

盾は幾らか地面に埋まっていた。隙間から手を差し込み、手探りで盾の場所を探る。やがてそれが手に触れると「武具倉庫」を使い消し、地上へと出す。









(...!?あーあ...)


それは真っ二つに割れていた。正面に嵌め込まれた魔石ごと、綺麗に。

やはり、幾らスキルの力と言えど無敵ではなかったのか?俺のスキルで直せるだろうか...無理に思える。俺が直せるのは武具であって魔石ではない。


手を触れ、念じてみる。

光の後に出てきたものは新品同様の盾だった。しかし、魔石は駄目だ。やはり、割れて崩れたまま...


(あーあ...)


ついてないなあ...

...兎に角、上に上がろう。そうすれば、何かしら事態は好転してくれるはずだ。






壁に立てかけるようにして梯子を造り出し、穴から出る。


やはり...と言うべきか。穴の上も緑の光に照らされていた。


綺麗に平らな地形。それに人工物は見られない。

しかし、自然に出来たにしては、こう...完璧すぎるというか、無駄がないというか...何か人為的なものを感じる場所だ。


這い上がった場所。

そのすぐ近くに異様なものを見る。原型を留めていない赤い塊。

それらがある地点を中心にばら撒かれていた。鉄臭い匂いだ。その赤は、まるで血のようで...





まあ...ダンだな。

一緒に落ちてきたわけだから、無事で済むわけはない。潰れて、飛び散り、見るも無残。


(俺が殺したんだよなあ...)


そう。それは紛れもない事実だ。

しかし、俺は悪くない。あいつが...いやに絡んできたから...うん。仕方がない。


別に罪悪感は感じない。あいつが悪いと思う気持ちは変わらない。

ただ、幾ら自分を正当化しようと心の中で言い訳を並べても、何処かもやもやとする。


ダンであった塊に、頭を下げた。それに謝罪の意志はない。ただ、無意識のうちに、頭を下げていた。





(そういえば...)


...と頭に浮かんだものはダンが持ち歩いていたもの、魔石だ。

この...塊の中にあるはず。


...漁る?

そういった考えが出た時点でやはり、ダンを殺したことに対し、自責の念などないのだろう。

ただ、人を殺してしまった自分に驚いているだけなのかもしれない。




血に濡れた岩肌へと進む。


(俺はこんなことでいいのだろうか)


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


...それなりか。

造り出した袋に入れた魔石を、じゃらじゃらと弄りながら歩く。


ダンは丁度二十個魔石を持っていた。

苦労なく持ち運べる、最適の量といったところか。予想以上の数だ...


内訳としては「自爆」が十七個。それに、

「俊敏」、「剛腕」、「見切り」、の三個。


ほぼ特攻猪というわけだ。

まあ、スキル持ちは滅多にいないからこんなもんだろう。


切らしてしまった「自爆」がそれなりに補給できたのは有り難い。

しかし、地上へと這い上がるための足掛かりとなるものは得られなかった。「風魔法」でもあれば何とかなったかもわからんかったが...


「自爆」以外の三個は、どうやら武具との相性が悪いらしい。「武具魔石合成」を使ってはみたが、効果は得られなかった。






...歩く。

ゴーグルで見えたものまで、あと少し。


(やはり、此処は...)


幾らなんでも落ちすぎだった。深い谷、と言っても限度がある。数分、ではなく数十分落ち続けられる深さの谷が、果たして存在するだろうか?


見知らぬ鉱石。

俺が知らない鉱石があるのか?冒険者に聞いた話に出てきたような...光る鉱石。


切り取られたようにまっ平らな岩肌。そして、そして...今前にあるもの...






()だ。木の()


この時点で俺の中を渦巻いていたある考えは、確信へと変わっていた。


(此処は、迷宮か...!!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ