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紫の願い  作者: 沢森ゆうな
第二章:中央校編
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二の十八


 鳩羽が目覚めた時、外は真っ暗だった。

月は爛々と輝き、そして学校や他の部屋は真っ暗で静まり返っていた。

 机の上に軽食が置かれてあり、土器の字で労りの言葉が書かれていた。


「負けちゃったかぁ」


 けれど、きっと桔梗は手紙をくれる。読ませないと言ったのは私のやる気を出すためだ。

 そう思って、明日読めるであろう紅樺の手紙を楽しみにしながら鳩羽はご飯を食べ、再び眠りについた。


ーー翌日。

 鳩羽は朝早くから教室に行き、桔梗が入ってきたのを目にした瞬間に声をかけた。


「手紙…あぁ、持ってるよ」


桔梗の懐から昨日見せられた封筒が取り出された。


「ありがとう!」

「なにが?」

「試合には負けちゃったけど、くれるんでしょう?桔梗は優しいなと思って」

「いや、やらないよ」


そう言って桔梗は鳩羽の目の前で手紙をびりびり破いた。それはもう回復不可能なまでに粉々に。

そして見せつけるように術式で火をつけた。


「え、うそ」

「嘘って、そういう約束だろ。見せないよ」


 灰になり、焦げ臭い燃え滓を見つめ、顔をあげると桔梗は綺麗な顔で表情ひとつ変えずに言葉を続ける。


「言った通り、術使校での紅樺の様子も話さない」

「ひどい!」


「ひどくないぞ、なに甘えた言葉言ってるんだ」

 後ろから声が聞こえ、振り返るとそこに立っていたのは赤だった。


「お前は負けたんだぜ。敗者は素直に勝者の言ったことに従え」

「そうね、この場合はしょうがないわよ」


 いつの間にか近くに来ていた土器も桔梗を擁護することを言った。多少なりとも仲がいいと思っていたのに、と鳩羽は落胆した。


「悔しかったら桔梗に勝ってみろよ」

「そうね、やられたらやり返さないと」

「そうだな、ま、できればだが」



「……分かった」


そう言って鳩羽は誰が見ても分かるぐらい泣きそうな顔で教室を出ていく。

もう教室にはいたくなかった。

赤も土器も友達だと思っていた。なのに桔梗の肩をもった。裏切られた気分になったが、二人からすれば自分は元々そういう存在ではなかったんだろう。


「あーあ」


森の中に寝転がり、空を見上げた。

どこまでも青い綺麗な晴空だった。



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