二の十六
区切りでちょっと短めです。
「選抜試験合格者?」
「ああ、今年は一名だけだな」
「名前は?」
「桔梗だ。鳩羽と同じ術使校の生徒だな」
明日から一緒に授業を受けると聞いた時、鳩羽は嬉しさと寂しさを感じた。紅樺は駄目だったのだと知った寂しさと安心感からだった。紅樺はここには向かない。こんな殺伐とした世界ではなくて、まだ笑って過ごせるあちらで笑っていてほしい。
「鳩羽?」
鳩羽ちゃん、と可愛い声で呼んでいた土器がいつしか鳩羽を静かな呼び捨てで呼ぶようになっているようなことを紅樺でも味わいたくなかったというのもある。
「あ、ごめん。なに?」
「桔梗って人と知り合いかなと思って」
「そうだね……」
桔梗と交流があったのはほんの僅かな時期だったのでそこまでは知らない。
「綺羅ではすごく優秀だったよ。一番できる男の子だった」
純粋な強さは桔梗に勝てるわけがない。自分がいるのは言式をみつけたからだと鳩羽は理解している。
「そう、ありがとう」
「うん」
土器は嬉しそうに微笑んだ。
土器は意外に好戦的な性格をしており、時々鳩羽にも練習がてら対戦を頼みにくる。最初は断っていたが、他の皆にも教師にも言われ今では言われるがままに対戦をしている。
決して戦いが好きなわけではない。なのに、もう日常的になってしまっている。
そのうち何も思わなくなってしまうんだろうか……。
それを考えると胸に何かが詰まったように息苦しくなる。
そっと息を吐いて、鳩羽は教室を出た。