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紫の願い  作者: 沢森ゆうな
第二章:中央校編
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二の九

数年ぶりすぎて本当にすみません。またボチボチ書いていきます。


「お帰り土器かわらけちゃん」


試合が終わった時の土器の残酷な表情に一瞬恐怖を感じたが、鳩羽はとばはそれを隠し努めて明るく言った。


「ただいま〜、勝ててよかった」


水筒に入っているレータ水を飲みながら布で汗を拭って、土器は背伸びをする。


「いきなり向かってくるからびっくりしちゃった。想像していたより、あの先輩攻撃だがら怖かったよ」

「そんな感じには見えなかったよ」

「戦いでは表情出したら負けだから。あー、レータ水美味しいっ」


生き返るわ、と呟きながらレータ水を半分くらい飲んで土器はやっと鳩羽に顔を向けた。


「大丈夫よ、鳩羽ちゃんは友達だもの。心配しないで」


先程の戦いぶりを見て、鳩羽が土器を怖がったのが分かったのだろう。

土器は安心させるように穏やかな笑みを浮かべた。


「うん、ごめんね」


怖がって申し訳ないという気持ちで鳩羽は眉尻を下げたが、土器は大丈夫だと首を横に振る。


「いいの。それより次は梅染うめぞめじゃないかな。一緒に近くで見よう」


差し出された手は先程の冷酷な戦いとは違い、暖かくて柔らかかった。


「そうだね、どんな戦いかたするのか気になる」

「梅染はねぇ、強いよ」


土器はじっと準備をしている梅染を見る。


「梅染はね、ちょっと特殊なの。梅染っていう色自体は紅梅の樹とか根を染めた色のことなんだ。梅染で染められた色は赤梅染とか黒梅染が代表的なんだけどそれの元?みたいな感じだから、赤梅染と黒梅染は梅染には勝てないの。そして系統なんだけど、赤系統でもあるし茶色系統でもあるんだ」

「二色遣いってこと?」

「うーん、ちょっと違うけど似た感じかな。赤系統の性格と茶色系の性格もあるから戦い方は掴みにくいの。本人自体は赤系統の性格で負けず嫌いだから戦い方もそうかなぁって思うんだけど、それは見てみた方が早いかも。ほら、始まるよ」


梅染の対戦相手は見たことがない人物だった。

土器曰く、先生らしいが直接関わりは今のところないらしい。


「試合開始!」


 先に動いたのは梅染だった。

術式を展開して、地面に触れると、そのまま相手の懐に突進していった。

真っ直ぐに胴を狙うが相手はそれを難なく避ける。

それを見越していたようで続け様に足を振りかぶった。

それも軽やかに避けられ、梅染は舌打ちをした。

ただ、それ以降も術式を発動することなく肉弾戦でのやり取りで相手だけが術式を展開していく。

爆音と煙で視界が悪くなっていくなか、目に砂が入らないよう手で顔を覆いながら鳩羽と土器は試合を見続けた。


「やっぱり先生は遠慮なしに強い術ばっかり使ってくるね」

「短期決着狙っているのかな」


鳩羽と土器も気付いているから、あの教師も気付いているだろう。最初に梅染が展開した術式。

それは一定距離の地中に木の根を侍らせ、術使の合図と共に地面から襲いかかるというものだ。


「鳩羽ちゃんも防御しておいた方がいいかも。梅染はこういう術式とは相性がいいから、多分こっちにまで根が襲いかかるよ」

「え」


予想もしていなく、術の気配も感じなかった鳩羽が驚いて土器を見た瞬間。


地面が一斉に盛り上がった。


「わ!!」

「きゃあ!」

「おわ!」


至る所で悲鳴があがる。

鳩羽は土器の腕を引っ張って腰を抱えると、反射的に飛び退いて木の上に避難した。


「びっくりした……」


煙で完全に見えなくなった周辺をまだ警戒しながら鳩羽は土器を抱える手にぎゅっと力を入れた。


「ありがとう鳩羽ちゃん」

「ううん、大丈夫」

「うん、不覚にも鳩羽ちゃんに惚れてしまいそうになった」

「あ、ごめん」


抱えていた土器をそっと木の枝の上におろすと土器はにっこりと鳩羽を見た。


「前見た時よりも術式の威力があがってるけど、相手は先生だしどうかな」


その土器の台詞を示唆するようにふわっと風が舞い、視界が開けていく。


そこにいたのは根に絡まれている梅染とその喉元に短刀を突きつけている教師だった。





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