十三
『辛いだろうがしっかりするんだ。話ならいつでも聞くから』
さっきまで美味しいと食べていた星飴も、充分に優しさを含んだ鉄紺の言葉も、最早鳩羽の心には何も入ってこなかった。
夕飯を一緒に摂る約束をしていたが断って、部屋に引きこもりベッドへと座った。
(……なんで…どうしよう……)
不安だけが波の様に次から次へと溢れて考えることができない。
逃げることができないなら、これからどうするか――それを考えないといけないのに。
どれぐらい経ったのか、寒さで鳩羽はぶるっと震えた。いくら昼間暖かくても、夜は冷える。寝間着に着替えようとして立ち上がれば、お腹が鳴った。星飴しか食べていないから当たり前だ。
時計を見れば二十三時。
とっくに食堂は閉まっているだろう。
今更ながらに食べておけば良かったと鳩羽はちょっと後悔した。
(寝よう)
空腹だと考えがまとまらない。
寝間着に着替えるため洋服を脱ぐと細い身体が露になった。
こんな身体で術使になったらすぐ死にそうだ。
まずはしっかり食べないと。
今日笑いながら「いっぱい食べよう」と言ったけれど、本気で食べないといけない。
とりあえず一つ決めて、鳩羽は寝間着を着た。暖かい素材の寝間着はいつも鳩羽が家で着ていたものだ。
「おかあさん…おとうさん…おにいちゃん…」
少しずつ身体が暖まる。
今日は眠れないと思っていたのに、ベッドに入るとすぐ意識は闇に溶けていった。