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バカラ

作者: めがねざる


 カタリア帝国将軍ウィン・A・バートンの名目上第二夫人であるアルマー・リサの子オルク・バートンはバートン家では第二子であり、三歳違いの兄と妹が二人、その下に弟が一人いる。兄、弟は父の血を色濃く受けついでおり、二人とも成長すればその武力、知力により将来の将軍にもなれる才能を秘め、父をも超える勢いを見せている。

 妹たちの姉のほうはぽわぽわ~っとしておっとりとした性格で、妹のほうはキリキリとしたハツラツとした性格をしていて両方とも母譲りの美貌を持ち合わせており、またさまざまな人物からパーティの誘いが舞い込んできてカタリア帝国の美しさの代表とまで言われている。

 そんな規格外な凄さを持っている兄、弟、妹たち囲まれ育った男子オルクは帝国の学園を卒業後、帝国国軍遊撃部魔獣専門科第7部隊で今日も仕事をしている。


 「巨人の散歩する森」

この森は始まりから薄暗かった。あほみたいに太い木が群をなしている。森なのだからそうなんだが。太さもあれば、高さものあるうえに木々は日光を得るために枝を幅広く育たせていた。この森にある木々はみんなそんなんだから、地面を歩くところには日がさしてこないので暗いのである。幸い、日が当たる上のほうにしか枝は伸びておらず歩いていても枝が邪魔になることがない。それでも植物はたくましく栄養のある木が奪うために蔦を木に張り巡らせるためにやったら蔦が多い。蔦が多く地面にも生えているために歩きにくい。走るのにも足に引っかかったりして、こけそうにもなる。

 そんな森のなかでえっちらおっちらあわただしく走る。走る。

 四人の人間と一匹のオオトカゲみたいな怪物。オオトカゲみたいな怪物はこのカタリア帝国では地竜といわれ、腹這いになり4足歩行である。大口を開け、真っ赤にした瞳は憤怒の色を示している。

 「お~い、どうするよオルクぅ。死人カルメルさんじゃ手に負えないぜぇ~」

 オールバックの髪型、サングラス、そしてなによりも目につく青白い肌。なんとも血色の悪い男は斧を背負いながら声を上げる。

 「マスター、完全に仕留め損ないましタ。シェリーはもうすぐ戦闘行動活動限界でス」

 ポニーテールを結ばれたあたりに浮いている大きな光の輪が赤く点滅しており、女性らしいスリムなスタイルがよく見えるスーツみたい服を身に着けている。

 「オルク、もう本気出してください。私リオンが看病しますから」

 メイド服を身にまとい白いフリルのついたエプロンドレスを汚すことなく、颯爽と駆けている。チャームポイントはカチューシャに猫耳。

 「・・・仕方ねぇ。このまま仕留め損ねましたー、なんて報告しに帰ったら兄貴にどやされるからな」

 茶色の首元まであるミリタリージャケットを首元まで絞め、黒いズボンにブーツを履いた短髪の男が直剣を鞘から抜いた。

 「くそトカゲ、観念しろよ。シェリー、手を貸せ」

 そういうと男はポニーテールの女シェリーの手に乗り、そこから地竜の頭上目掛けて投げられた。地竜が上から向かってくる男目掛けて大顎を広げ迫る。閉じかける上顎の横の部分に手をかけ、地竜の歯から逃れた後、その脳天に直剣を差し込もうとするが、地竜の頭を下げる動作と自身のバランスをくずし、首元にしがみつく。

 「このっ、おとなしくしやがれってんだ」

 持っていた剣を持ち直し、再度行動を移そうとしたとき、地竜の首元から体を捻ろうと動いているのに気がつき咄嗟に首から飛び降り一旦距離をとるため遠くに飛ぶ。捻れた体は地面や周囲の木を大きく削った。あのまま首に掴まっていたらミンチになっていただろう。

 オルクは体制を建て直し顔を上げた。地竜はその間に体を跳ね上げ、身を丸め、頑強な背中の外皮で押し潰そうとしていた。

 「力比べか、上等じゃねぇか」

 オルクは中腰で直剣を下から構えた。落ちてくる強大な力の塊に逃げもせず対峙したのだった。

 そして、凄まじい音と風が彼らを中心に巻き起こったあと


 地竜はおびただしい量の鮮血を背中から吹き出しながら押し返されつつ切られた。森全体に響き渡る地竜の叫びが鳴り止んだ後、その大きな体躯は地に沈んだ。

 明からな重症を負った地竜は切られたショックと疲労によりぐったりと動かなく、息も絶えつつあった。オルクはそんな地竜の元に歩み、近づいた。

 「なかなかいい勝負だったな」

 地竜の真っ赤な瞳は徐々に白く戻った後、静かに目を閉じた。その後、音もなく塵となった。

 地竜が押し曲げた木が曲がり薄暗い森に一筋の光が照らす。塵となった地竜は光に照らされ、キラキラ幻想的に輝きだす。

 跡形もなくなったものの傍には、地竜の牙とその核と言われる赤い球体が残っていた。オルクはその二つを手に取りリオンに手渡した。

 「これで任務終了だ」

 「なぁ~んかあっけないねぇ~」

 「何言ってんだ、地竜の動き一つ一つが死ぬかもしれないんだぞ。大変だったさ」

 「あっけなくて何よりですよ。毎回心配します」

 「さすがはマスターでス。迅速な撃破見事でス」

 オルクはそのまま地面に大の字になった。カルメルはオルクを背負い、リオンは拉げた剣を拾った。

 「また剣がだめになりましたね」

 「やっぱ、特注したほうがいいか」

 「それって、材料を持参でしょ。めんどうはやだねぇ」

 「うーむ」

 彼らは森を出るため道無き道を歩く。

 死にたがりの死人のカルメル。

 人と区別がつきにくい機械人形のシェリー。

 捨て猫、拾われた猫、獣人のリオン。

 そして、ウィン・A・バートンと名目上第二夫人アルマー・リサの子であり、帝国国軍遊撃部魔獣専門科第7部隊隊長であるバートン家の問題児のオルク。

 そんな彼らの仕事であり、日常は魔獣狩りである。


 「あ、マスター活動限界でス。通常行動再開まで30分。スリープモードに移行しますので動かさず寝かせてくださいイ」

 ポニーテールの輪から光が無くなり、シェリーはその場で丸くなって静かに息を立てた。 

 彼らはそんな彼女が起きるまで、一緒に寝に入ったのだった。


とりあえずは、完結ということで。

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