始まり
男「ーーーーーーうわぁっ!!」
(ここはどこだ?俺は今まで何をしてたっけ?)
男が目覚めるとそこは非現実的な空間で
周りには何もなければ誰もいない、
真っ白な風景がどこまでも続いているところにいた。
男が訳もわからずたたずんでいると誰もいないと思っていたその空間から声がした。
?「あ、おはようございます。やっと目覚めましたか」
その声のする方を見ると小さな男の子がパソコンらしき近未来的な機械を見ながら何かブツブツ言っている。
男「…お、お前は誰だ?!ここはどこなんだ?」
?「ふむ、大分意識ははっきりしてますね。よし。」
小さな男の子は男の質問に答えることなく機械で何かを調べているようだ。
男「おい!何か知っているのか?だとしたら教えてくれ!ここはどこなんだ!」
男の子はそれでも男の声が聞こえていないかのように機械を見続ける。
男「何か答えてくれよぉ…………」
(…待て、落ち着け。これは夢だ!こんな非現実なことなんてありえない!そうか、夢だったんだ。もう一度目を閉じれば…)
男は深呼吸をしてゆっくりと目を閉じた。
(これは夢だ。夢だ!覚めたらいつも通り…!)
男はゆっくりと目を開ける…そこには
先程の真っ白な世界に近未来的な機械とにらめっこしている男の子ひとりだけ。
男「…………夢じゃないいいぃぃぃいぃぃ!」
男はその場に崩れ落ちた。
?「よし!これだな!」
男が一人でこの非現実的な現状と戦っているのをよそに小さな男の子は何かを見つけたように言った。
?「改めて、おはようございます!少し遅れましたが自己紹介させていただきます!」
見た目とは裏腹に可愛いげのないぐらい丁寧な言葉で男の子は続ける。
?「僕は人間たちの世界で言う"天使"です!ほら、羽が着いてるでしょ?へへ」
そう言う男の子の背中を見ると確かに背中から二つ綺麗な羽が生えている。
男「…………て、天使?!」
天使「そう!天使!」
(こいつ…なにいってるんだ…脳に何かしら少し障害があるのかな?)
男はもう思考が追い付かなくなってきている。
そんな男に天使と名乗った男の子は更に続ける。
天使「そして、僕の任務は…死んだ人を生き返らせること。」
天使は無邪気に話していたさっきとはうってかわって急に真面目な顔になった。
男「……はぁ?」
こうなってくると男はもうちんぷんかんぷんだ。
男「死んだ人を生き返らせるって…い、意味分かんねぇし、それに…」
(何で俺がここにいるんだってば!)
男が困惑しているところに天使は追い討ちをかける。
天使「そして今回は君の担当に当たったって訳です」
その言葉を聞いて男の思考は停止した。
男「……………え?」
(な、何を言ってるんだこいつ?第一俺は死んで…ない…)
天使「んー、やっぱりそこらへんの記憶はないでしょうねー、うむ。」
天使は仕方ない、といった様子で言葉を続けた。
天使「はっきり言いましょう。君は、昨日死にました。」
男「………はっ、はは、ちょっと待てよ。冗談ならもっと…だって俺は……」
男は今まで自分がしていたことを思い出そうとした。しかし、
男「思い出せない…」
男には記憶がなかったのだ。以前、どの様に暮らしていたのか、誰とどこに住んでいたのか、何をしていたのか
何もかも思い出せないのだ。
男「俺は…俺は誰なんだ?」
男の気持ちはもうどん底だった。まさか、自分が死んでいるなんて思いもしていなかっただろう。ましてや記憶までなくなっているなんて。
天使「まぁ、誰でも最初はそんなものです。でもこれからの試練を乗り越えることができたなら、君を生き返らせてさしあげましょう」
男「…な、何をそんな…試練ってなんだよ…もし、もし試練を乗り越えられなかったらそのまま死んじゃうってことか?!」
天使「まぁ、そうなりますね。別に生き返りたくなければ無理に試練を受けることもありませ…」男「ふ、ふざけるなっ!!」
男は天使の言葉を遮って怒鳴った。
男「上等じゃねぇか!やってやるよ!その試練とやら!このまま訳もわからず死んでいくやつがいるかよ…!」男が強く握った拳はかすかに震えていた。
天使「ほう、なかなか芯があるようですね。大体の人は頭が真っ白になり、何も考えられず辞退するものですが…」
(記憶がなかったことも幸いでしたかね)
男「早くその試練を教えろよ!」
男は焦る気持ちを隠しきれなかった。いったい自分は誰なのか、どうしてこんなことになったのか…
天使「まぁ、まぁ、落ち着いて。これからあなたにやってもらうことは…まず"ある人"に乗り移ってもらいます。」
男「の、乗り移る…?」
男の頭上にクエスチョンマークが飛び交う。
天使「ふふ、はい、乗り移って、その人の生活をあながします。そしてその人の人生を変えることができたらミッション成功でーす♪パフパフ」
男「………あのよ、…」
いろいろな疑問が止めどなく沸いてくる。
天使「まぁ、細かいことはさておき取り敢えず行きますか!」
男「ちょ、ちょっと俺の話も聞けよ!てか行くってどこに?!」
天使「どこにって…"ある人"のところですよ?」
男「ま、待て待て!まだ心の準備ってもんが…」
天使「それでは!レッツゴー♪キラキラ」
男「うわーーーーぁぁぁー……」
天使がそう言うと男は眩い光に包まれだんだんと意識が遠のいていった。いろいろな疑問は一つも解決されることなく。
(俺は…どうなるんだ?そもそもこれは現実?覚めにくい夢なのか…)
(心配しないで大丈夫ですよ♪)
(あぁ、ありが…)
男「…脳内に入ってくんな!!!……うっ!!」
男が目を冷ますとベッドの上で寝ていた。
(やっぱり夢だったのか?!でも…ここは…?)
そこは病院の個室だった。シンプルなその部屋には少しの本と綺麗な花が飾られているだけ。
そして男の横には女の人がいて驚いた様子でこちらを見ている。
?「…か、かず?かず?!気づいたのね!すぐお医者様を呼んでくるわ!!」
男「…かず…?」
見知らぬその女性はあわてて部屋を飛び出して行った。
男が困惑したいると聞き覚えのある声が聞こえた。
天使「ふぅ、少し遅くなりました♪」
男「お、お前は!!!…夢じゃなかった…ってどこ?」
天使「ここ!ここ!机の上です!」
言われた通り近くにある机の上を見てみると小さな生物がピョンピョン跳ねている。
男「………こんなに小さかった?」
天使は約3㎝ほどしかなかった。
天使「人間にばれないようにこうするしかないのです!えっとですね~…今の君は"かずやくん"です!
澤村和哉くん13歳!若っ!!」
天使は同じように小さくなった例の機械を見ながら男が乗り移ったと思われる人について話始めた。
"かずや"「13歳…ガキじゃねぇか…」
天使「おやおや、かずやくんは自殺未遂のようですー」
そのあとしばらく"かずやくん"について聞かされた。
天使「まぁ、分からないことはおいおい説明していきますので!」
"かずや"「自殺未遂の13歳…はぁ、どうやって人生やり直すんだよ…」
そう、男はこれから"かずやくん"になってこの子の人生をやり直さなければいけない。
かずや「ってゆうかよ、どうなったら成功なんだ?……っていねぇし…」
いつの間にか姿を消した天使の代わりに先程の女性が医者を連れて現れた。どうやら、天使の情報によると"かずやくん"のお母さんらしい。
母「…先生!ほらっ!かずが起きてます!!」
先生「…信じられない」
かずや「…」
そこで男は重大なことに気づく…
(どんな風に喋ればいいんだ?!こいつの話し方とか聞いてねぇよ!)
取り敢えず男は記憶がなくなったと告げることにした。
(う、嘘ではないし…いいよな?)
こうしてかずやの第二の人生を歩むことになった。