2章後半
全5回の短編です(4/5)
【注意】
本作品には犯罪描写が含まれますが、犯罪行為を肯定・助長する意図は一切ありません。あくまでフィクションとしてお楽しみください。
本作品では、一部AIツールを用いて補填・整文章作業を行っています。
本作には“隠語”による会話が登場します。
本編ではあえて説明を省いていますので、ぜひ“裏の意味”を想像しながらお読みください。
会話の真意は章末のあとがきにて解説しています
「班長。例の事件の関係者、また確保できましたよ。取調室に連行しています」
「またか…」
俺は、つい目頭に手をやった。ここ数年、密輸が急増している。
「我々も人のこと言えませんが向こうも何やってるんですかね」
ため息が出る。我々の管轄内への密輸入だけでなく管轄外への密輸出…頭が痛くなる。
やはり最近また増えてきた『検査』をかいくぐる方法。もともといくつか存在する。
・【神の加護】を利用する手口
・素材の中に隠す手口
・複数スキルの併用によって発生する未知の効果
だがそのすべてが解明されたわけではない。スキルとはそれほど複雑なものだ。
「それで局長、どうしますか?いい加減、上が本当にブチギレますよ」
「チッ、現場も知らねぇ老害どもが…」
「おぉブチギレてますね『千里眼』出てますよ」
「『神業:千里眼』だ」
「はいはい。見える距離と視点が増えただけじゃ解決出来ませんもんね」
馬鹿にしやがって。場所か犯人さえわかればこんな事件も簡単に解決できるのに。
「また外回るので何かわかったら連絡しますね。それじゃ」
そういってドーブは部屋を出ていった。
「あ、あの~技術部隊からの連絡です。スキル併用による『検査』回避法の手掛かりがわかったそうです」
「そうか。わかった。ドーブを呼び戻してくれ。君も先に教わってくれ」
「わ、わかりました」
クリアはドーブを追いかけるために部屋を出た。
そういえば事件の関係者が取調室にいるといってたな。『神業:千里眼』では見ることは出来ても、聞くことは出来ない。
「お疲れ様です」
「お疲れ。彼の資料をくれないか」
手渡された資料に目を通す。
・氏名:ギャロル・ユルシカ
・職業:冒険者
・【神の加護】:雷の化身
その他にもスキルを見ると冒険者らしいスキルが多く、これといった怪しいものはない。
「どうして関係者だと?」
「半年間監視した結果、複数回の密輸現場での人払いを始めとした不審な行動、なにより直前に密輸品の手渡しが発見されました」
「そうか。コイツはおそらく尻尾だな。本命の受け渡しが別に行われていると考えたほうがいい。それよりコイツは今どこに?」
指したのはアドル。身元不明の男。数年前からギルド専属の荷物持ちをやっているが、【神の加護】が判明していないとのこと。
怪しい。経験からくる勘が働く。
「彼らの事情聴取に向かう。資料のコピーを3部頼む」
『神業:千里眼』で確認し、技術部隊にいるドーブとクリアを連れて行く。
「班長これからどこ行くんですか?」
「お前の捕まえた関係者の仲間のところだ」
2人にアドルの資料を渡す。
「ん~全員、特にじゃないっすか?アドルは怪しいっすけどギルド職員でしょ?どうして行くんすか?」
「クリアを連れて行くためだ」
「だったら俺はいらないじゃないですか」
「お前は戦闘が起きたときに備えだ」
「はぁ夕飯奢ってくださいね」
「クリアには奢ってやる」
「なんで!?」
「今回は聴取だから『神業:記憶』と『間違い探し』のスキル頼みだからだよ」
「備えにも奢れ!」
3人で騒ぎながらもギルドに到着した。ギルド内にいた冒険者から一斉に視線が集まる。
「ここにシンとそのパーティーそれにアドルというものはいますか?少々お話を聞きたい」
少し待つと、奥からギルド長と6人の男女が出てきた。
「君たちはシンさんとそのパーティー…アドルさんはどなたですか」
「はい。俺です」
一人の青年が手を上げた。
「すみません。少々お話を聞きたいのですが…場所を移動しましょうか。空いている部屋、3部屋ありますか?」
ギルド長に奥の部屋を案内され、一人ずつ部屋に呼び出して話を聞く。
「ドーブお前は廊下で監視だ」
「うぃーす」
1つ目の部屋に一斉に案内し、2つ目の部屋では一人ずつ事情聴取を行った。
まず確認事項を並べ、クリアの『神業:記憶』に平時の様子を記憶させた。続けてギャロル逮捕の経緯を説明した。
それぞれ驚きや泣き出す反応を見せた。クリアを見るが、首を横に振る。話が終わった人は接触を避けるため3つ目の部屋に別れさせた。
ここまでは想定通り、ここからが本番だ。
最後にアドルを呼ぶ。
「それではいくつか聞きたいことがあります。まず初めにギャロルという方を知っていますか?」
「はい。彼とはパーティーメンバーとして何度も魔物退治をしました」
確認事項は完了。ここからが本番だ。クリアも頷く。
「実は本日、ギャロルさんが現行犯で逮捕されました」
「え?!」
「罪状は教えられません。そのため彼に関わりのある人たちに話を聞いています」
「そ、そうなんですか」
「彼になにか変わったところはありませんでしたか?怪しかったところとか」
「いえ、わかりません」
彼は下を俯いて答えた。それ以降もギャロルやスキル、【神の加護】についても質問を続けたがわからないと続いた。まるで機械のように淡々と答えを返し続けた。
クリアも首を横に振り、何も得られないまま終わってしまった。
「最後に一点、『千里眼』というスキルはご存知ですか?」
彼はゆっくりと顔を上げ答えた。
「はい。遠隔から座標を覗くことができるスキルですよね」
「そうです。私には『神業:千里眼』があります。能力は範囲の拡大だけでなく、場所のほかに人物を指定することもできます。ただ人物を見れるようにするには許可が必要ですが、協力していただけますか?」
「それは強制ですか?」
「いえ、強制ではなく協力です」
沈黙が続くなか、私生活を覗かれたくないとの理由で「NO」と言われてしまった。
「そうですか。ありがとうございます。…そういえば記憶喪失なんでしたっけ?」
「はい。警察の方にも何度か行ったのですが結局手がかりは掴めず…」
「そうですか。また何時でも相談に来てくださいね。きっとご家族も心配しています。それでは失礼します」
ギルド長にも挨拶を終え、帰路につく。
「あ~あ、空振りでしたね」
「そうだな。私の勘も鈍ったものだ」
クリアは『神業:記憶』のアドルで『間違い探し』をしている。
「何も反応はなかったんだろ?」
「い、いえ。実は最後、ご家族って言葉に反応しました。それにそれ以外の質問は下を向いていたので正直判別がつきません」
「家族って、そりゃいくら記憶喪失でも家族くらい気になるだろ」
「ありがとうクリア。参考にさせてもらうよ。帰ったら報告書を作っておいってくれ。ドーブお前は私と聞き込みだ」
「は、はい!」
「なんで俺には冷たいんですか!」
「夕飯は3人で飯でもいくか」
「ついていきます!」
アホも使い方だな。
聞き込みは空振りに終わり、3人での食後、所内に戻りクリアの報告書を見た。付箋にクリアのメモがあった。
「違和感あり」
クルトの証言「アドルはこの生活に満足しているとのこと」、そしてアドルは「家族」の言葉に反応したこと。
普通のことに見えるが、クリアには違和感があるように見えるのだろう。電話をかける。
「ドーブ、今日からアドルを監視してくれ」
「は?今日から!?今何時だと思ってんすか!?」
「頼む」
「あー!また飯奢ってくださいね!」
杞憂ならいいんだが。
―――
クソクソ。あいつヘマしやがった!なにサツにパクられてんだよ。
『神業:アイテムボックス』から通信機器を取り出す。『神業』による機器のため傍受される心配はない。とはいえ部屋が盗聴された場合意味がない。隠語を使って会話しなければならない。
「アドルです。今日ニンジンが収穫できました」
誰かが捕まったときは報告、ギャロルが捕まったときはこういう決まりだ
「そうか。タルは割れなかったか?」
「いえ、タルは割れませんでした。ただもう使えないため別のを用意してください」
「わかった。町外れにある木にはよく雪が積もるらしいが見たことはあるか?」
「はい。あります。今年も積もるかはわかりませんが」
「行けるようなら行ってくれ」
「今度は料理を振る舞ってほしいです」
「機会ができたらな」
通話が終了する。
次の指示が出るまで大人しくしておくか。おそらく監視も入るだろう。
1週間荷物持ちの仕事はなくなった。警察からギルド長に指示があったのだろう。シンのパーティーもしばらく活動禁止に。
1週間後
「アドルです。前回は聞きそびれましたが得意料理ってなんですか?」
「魚が一番楽かな。今回はニンジンも入れようと思う」
「ニンジンをですか?わかりました」
「一緒にどうだ?今日は12日か。そうだな明日はどうだ?レシピは当日教えるよ」
「明日ですか?わかりました」
ギャロルが捕まってから黒い感情が渦巻くのを感じる。あの時以来だ。気づけば俺は「死にたい」と思っていた。いや違う。
…コロシタイ。
その言葉が頭の中でこだまする。
3日後
町から遠くにある魔物が掘ったであろう穴があった。なるほどここで殺せば魔物のせいにできるのか。
そこでボスとその兵隊と一緒に待っていると、
「お待たせしました」
「おう。ペールお疲れ」
ギャロルを抱えた男ペールが現れた。
「早速ギャロルを始末するか、ついでにお前もなアドル」
その言葉とともに突如首を絞められる。そっか。俺もここで始末されるんだ。
それもいいなと思っていると、
「その手を離せ!」
聞き覚えのある声、シンたちだった。
「どうして、ここに?」
「ギャロルが連れて行かれるのを見たから!そしたらお前まで!何があったかは知らないが今助けるぞ!」
「おいおいおいおい。なにか勘違いしてるんじゃねぇか?こいつらは素材や薬物を違法に密輸していた犯罪者だぜ。それを助けるってことは犯罪者の片棒を担ぐってことだぞ~?」
「っ、それでもその2人は俺達の仲間だ!そもそもこんなところでその2人を殺すってことは、お前ら口封じかなんかだろ?」
「さぁね?」
「行くぞ!お前ら!」
シンたちと兵隊がぶつかる。人数差が有るとはいえ冒険者。兵隊に負けていない。
「チッ、おいアドルお前も殺れ!」
ナイフを渡される。
黒い感情が心を支配する。前世の記憶が今になった鮮明に浮かび上がる。前世でやった犯罪の数々が思い出される。
…あぁもうダメだ。俺はもう根っからの悪人だったんだ。
前世からの正真正銘のド屑の極悪人だったんだ。
頭の中にあった黒い感情を受け入れると体が、心が軽くなった。
受け取ったナイフでボスの喉を切り殺し、『神業:アイテムボックス』に隠す。
『神業:鑑定』が一斉に状況を吐き出す。人数、傷の深さ、呼吸の速さ──どれも即時に把握できた。ここにいる奴らは全員俺より強い。
『神業:アイテムボックス』で地面の一部を収納する。一瞬にして地面がなくなった奴らは対応出来ず、穴に落ちる。
そして蓋をするように地面を戻す。
ドォン、と鈍い衝撃が辺りに響いた。闇に沈むように、彼らの声が消えていった。
落下の衝撃で地面が割れる。全員死んだ。いやもう一人いる。
「んー!んー!」
口を塞がれて悲鳴を上げているギャロルの口の縄を外す。
「お、お前…何者なんだよ!」
何者か。悪者だよ。
「死ぬ前に教えてやる。俺の【神の加護】は2つ。『鑑定』と『アイテムボックス』。お前の知りたがっていた『検知』をかいくぐる方法だ。」
そう言いながら『神業:アイテムボックス』から死体を取り出す。
以前にボスから頼まれた死体処理を頼まれた時に俺に体格が似ていたことからくすねた。
まさかこうも早くに使う時が来るとは。割れた地面を回収し死体を投げ入れる。あとは顔が擦りつぶれるように地面を戻した。
「待って、待ってくれ!俺達仲間だろ?今回の被害者だって俺らだ。だから…」
何か喚いているが聞こえない。聞き取れない。
手錠でスキルが使えない今なら簡単に殺せる。ナイフを構えて一気に喉をかっ切る。最後に何かを言いかけたが、その言葉も聞こえなかった。
思い出したんだ。あの日、俺はミスしていない。仲間に裏切られたんだ。仲間なんていらない。
『神業:アイテムボックス』に入れた2人を遠く離れた場所に捨てる。
あぁ、リンゴを食べる手が止まらない。今日はリンゴが美味しい。
―――
数日後、大体的に事件が報じられた。
森の奥で地面に埋められた死体が13人見つかったが原型が保ってないため被害者が全員特定できたわけではない。しかし、装備品の情報から冒険者シン率いるパーティーとギルド職員アドル、そしてギャングの兵隊が7人、さらに離れたところにギャロルとギャングのボスが死んでいた。
過去に起きていた密輸や違法薬物の取引の件数が減少した。これでこれまでの事件は幕を下ろすことになった。
部屋には珍しく落ち込んでいるドーブがいた。
「すみません、隊長。俺が見失ったばかりに」
「何度も言わせんな。お前の『神業:身体強化』と『鷹の目』で追えなければ誰にも追えないよ」
唸り声を上げて机に突っ伏している。
「そんなことよりも仕事しろ」
「クリアは今日から復帰なんですよよね」
そんな雑談をしていると扉が開く。
「ご、ご迷惑をおかけして、す、すみませんでした」
「お~クリア。風邪は治ったのか?」
「は、はい。ってドーブさん今日テンション低いですね」
「こいつ今回の事件で容疑者見逃したあげく、死んでしまったからヘコんでんだよ」
「その容疑者ってアドルさんですよね」
「そうだ。一応資料見とけ」
クリアに資料を渡した後、じっと見つめる。10分経過してクリアから驚きの言葉が発せられた。
「アドルさんの写真ってどれですか」
「あ~7枚目だろ?」
「この方違う人ですよ」
「本当か、クリア?」
「は、はい。原型は保っていませんが細かい体の部位は違います」
つまりアドルは生存の可能性が高い。
「ドーブ!すぐに街全体の捜索にあたれ。クリアは上層部に。アドルを指名手配にする!」
読んでくださってありがとうございました!感想・ブクマ等、とても励みになります!
隠語会話の解説
「アドルです。今日ニンジンが収穫できました」(アドルです。今日ギャロルが捕まりました)
「そうか。タルは割れなかったか?」(そうか。運び屋は捕まったか)
「いえ、タルは割れませんでした。ただもう使えないため別のを用意してください」(いえ、私は捕まっていません。私も怪しまれるかもしれませんので他の人をお願いします)
「わかった。町外れにある木にはよく雪が積もるらしいが見たことはあるか?」(わかった。町外れにある木に、薬を隠せ。場所は分かるな?)
「はい。あります。今年も積もるかはわかりませんが」(わかります。しかし行けるかはわかりません)
「行けるようなら行ってくれ」(いけ)
「今度は料理を振る舞ってほしいです」(次の作戦をお願いします)
「機会ができたらな」(準備ができたら連絡する)
「アドルです。前回は聞きそびれましたが得意料理ってなんですか?」(アドルです。前回聞いた作戦はどうなりましたか?)
「魚が一番楽かな。今回はニンジンも入れようと思う」(標的は一人。ギャロルを処分する)
「ニンジンをですか?わかりました」(ギャロルを?わかりました)
「一緒にどうだ?今日は12日か。そうだな明日はどうだ?レシピは当日教えるよ」(お前も来るように、作戦は3日後だ。)
「明日ですか?わかりました」(3日後ですね分かりました)




