2章前半
全5回の短編です(3/5)
【注意】
本作品には犯罪描写が含まれますが、犯罪行為を肯定・助長する意図は一切ありません。あくまでフィクションとしてお楽しみください。
本作品では、一部AIツールを用いて補填・整文章作業を行っています。
「クルト!アドルさん!こっちもお願いします!」
「OK!行きましょうアドルさん」
「はい!」
そう言って私はアドルさんと一緒に魔物を解体して『アイテムボックス』に収納していく。
「クルトさんの『神業:解体』はとても素晴らしいですね」
「いえいえ、アドルさんの『鑑定』あってこそですよ」
数日前に私達のパーティーに参加したアドルさん。数年前にギルド専属の荷物持ちになった人だ。
数年前に近くの森でギルドに保護された。優秀なスキルを持っていたため、そのままギルドに雇われることになった。ただ身元不明の人間をギルドに置き続ける危険を避けるため、一定以上の実力者が監視すること、そのための冒険者の荷物持ちをしてるとのこと。
それを可能にしているのが彼の持つ2つのスキル『鑑定』と『アイテムボックス』。ギルド内では実力持ちの雑用として、扱われている。
私達のリーダー、シンはそれに怒り、パーティー最後のメンバーに彼を選んだ。ギルド職員のため常勤には出来なかったが、優先して私達のパーティーに参加させることができる。無茶もしないし荷物持ちは私もいるこのパーティーで、少しでも休憩できるように。
「アドルさん。こっちの素材もお願いします。それにしてもアドルさんがパーティーに入ってくれてありがたいです。仕事がすごく楽になりました」
「パーティーと言ってもギルドからの派遣ですけどね。でも、あなた達みたいに優しい人と一緒にできるのは私も嬉しいです」
少し照れくさそうにしながら、はにかんだ笑顔を見せてくれた。私達は作業を進めながら雑談を続けた。
「そういえば記憶喪失は治らなかったんですか?」
「そうですね。ここ数年、カウンセリングも受けているんですが、どうにも思い出せなくて」
「そうですか…。早く思い出せると良いですね」
彼の手がピクッとして止まる。なにか悪いこと言ってしまったのかと思い続ける。
「そうすれば、ほら身元不明扱いされませんし、何より『神業』を思い出せるじゃないですか?」
私の続けた話に彼は少し暗い顔をして俯く。
「正直、今の暮らしのままでいいんじゃないかと思っています。今の暮らしに満足しているんですよ。俺は」
なにか声をかけるべきだとはわかってる。だけど言葉は何も出てこない。沈黙が流れそうになったとき、
「2人とも~。もうそろそろ行けるか~?」
シンからの帰還の指示がでた。
「行けるよ~。帰ろっか」
私は手を差し伸べるも、手を取らずに立ち上がる。
「行きましょうか」
彼は今まで通りの笑顔と明るい言葉を向けてくれた。その笑顔の裏にある心理は私にはまだ分からない。
ギルドに帰還後、私はアドルさんに関する報告書を作成した。未だに身元不明のため、怪しい行動などがなかったかどうか報告しなければならない。
私は何の変哲もない報告書を作った。最後の違和感、書こうか迷っていると、
「アドルはまだ仕事ですか?」
シンがギルド職員に聞く。
「はい。定時まではまだ時間がありますから」
「今日は早上がりさせることは出来ませんか?」
シンが少し怒っていることがわかる。彼の優しさに私たちは集まったのだから。そんなシンを裏切る行為はできない。私はペンを置き、報告書を提出した。
「シン、夕方まで待ちましょう。もともとその予定ですし」
シンと一緒にギルドから出る。
「シン!どうだった?」
「無理だった」
「そっか。それじゃ予定通り夕方まで待ってから歓迎会だね」
「仕方ないのはわかりますけど、やるせませんね」
メンバーは口々に不満を漏らす。私たちはそれぞれ時間を潰すことにした。
せっかくだし図書館でスキルの勉強をすることにした。
「クルちゃんお疲れ様」
「ココちゃん。久しぶり~」
話しかけてきたのは図書館の職員で幼馴染のココちゃん。私の隣りに座りお話を始める。
「そっちの調子はどう?シンさんとは相変わらず?」
「う、うん。どうもキッカケがなくて」
「まずは押していかなきゃダメだよ。しっかり意識させないと」
「うん。頑張ってみるね。それよりも仕事しなくていいの?」
「いやコレも仕事。というか本題」
そういうと一枚の紙が渡された。内容は犯罪者の目撃情報について。
「どうやら最近、闇市が活発になってるらしくて、警察は素材を流す犯人が冒険者にいると考えてるらしい。それでスキルを勉強しにくる冒険者にコレを渡して情報収集してるんだって」
改めて紙を見ると、闇市に流れた素材の一部が書かれていた。
「『アイテムボックス』持ちが疑われているらしいけど、『検査』をすり抜けることなんて出来ないはずだし…どうやってんだろうね」
「あんたにわからなければ私にもわからないよ」
「そっか、もしだったらメンバーの人にも聞いてみてね」
そういうとココちゃんは仕事に戻っていった。私は紙をしまうと勉強の続きを始めた。もしかしたらスキルの組み合わせで『検査』をすり抜けることができるかもしれない。
いやそれよりも『神業』なら…浮かんだのはアドルさんの顔だった。
まさかね。
―――
数年前
近くの国に入った俺はすぐに『神業:アイテムボックス』の中にあるものを闇市に二束三文で売った。そのまま整形で顔を変えた。
顔を隠し、山を超え、国境を超えた近くの森で倒れる―ふりをした。
近くを通りかかった冒険者に助けられた。
記憶喪失のふりをして、あらかじめ用意した偽名の入ったナイフを見せ、アドルとしてギルドに保護されることになった。
しかし、ギルドとしても子どもとはいえ身元不明の人間をいつまでも置いておくわけには行かないらしい。どうやら過去になにか問題が起きたとのことだ。
俺は『鑑定』と『アイテムボックス』を見せることで自分の有用性を見せると、ギルドには特例で荷物持ちとして雇われることになった。
もちろん『神業』は見せていない。『神業:鑑定』は情報量を絞れば『鑑定』に見せることができる。『神業:アイテムボックス』では中身が見えないことを怪しまれてしまうため、『アイテムボックス』を改めて習得した。
【神の加護】は不明で通した。記憶喪失の人ではよくあるとのこと。
それからはギルドから冒険者の荷物持ち派遣に出ることになった。実力がある冒険者を監視するのが狙いだろう。
仕事をする中でひどい扱いをするパーティーもいた。そういったパーティーに対しては魔物の素材を『アイテムボックス』にしまうと同時に、『神業:アイテムボックス』で奪う。他にも道中の違法薬草も採取する。
もちろん、帰還後の『検査』には引っかかることはない。
『神業:アイテムボックス』にしまったものは闇市に流している。闇市からは「調達は頻度も量も少ないが、素材は優秀。運び屋としてはコイツ以外には頼みたくない」という評価だ。
別にお金が欲しいわけじゃない。日々のストレスに殺されないように犯罪をしていた。繰り返すうちにそれが犯罪だって思わなくなってきた。そうして俺は裏社会の中に抜け出せないほどハマってしまった。
そんな日々が続くこと数年、あるパーティーに優先参加することになった。リーダーのシンって人が俺の扱いに同情したからだ。
「それでお前がリーダーに話したんだろギャロル」
「まぁな。お前も俺がいたほうが動きやすいだろ」
ギャロルとは裏社会で知り合った。どうやら俺の現状を聞いた裏の人が差し向けた連絡役兼、監視役。こいつがいることでギルドの監視も少し甘くなった。
「シン、あいつは根っこからの善人だからな。お前の状況を話したら「許せない」って張り切ってたぞ」
バカにしながら笑うギャロルを横目に見ていると紙を渡される。
「コレが次の依頼だ」
依頼内容を確認した後『神業:アイテムボックス』にしまう。
「いい加減『検査』をかいくぐる方法教えてくれよ」
「それは秘密だ」
ギルドの宿へ戻る。改めて依頼内容を眺めて次の犯行手順を考える。一人の時間は気楽だ。今日はお腹が減らない。
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