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2/5

1章後半

全5回の短編です(2/5)

【注意】

本作品には犯罪描写が含まれますが、犯罪行為を肯定・助長する意図は一切ありません。あくまでフィクションとしてお楽しみください。

本作品では、一部AIツールを用いて補填・整文章作業を行っています。


あの日の盗み以降、俺は知らないうちにまた盗んでしまうことがある。多くても月に1度、体が動いてしまう。


盗んだものは今も『神業:アイテムボックス』の中で眠っている。この能力を使うには手の内側で触らなければならない。そして生き物は入れることが出来ない。その代わりスキルを使うのに魔法陣がです、瞬間移動のように出し入れできる。


最近では学校終わりにゾットとルーベルの修行を手伝っている。


ルーベルのもらったのは『神業:剛身体』と『神業:運気』だった。


ゾットは剣士としてルーベルは武道家として魔物退治を目指している。


僕は『神業:鑑定』が出たことでたくさんの人から声をかけてもらえた。今すぐ決められないからと、大人になるまで待ってほしいと告げ、今では父さんが壁になってくれている。


「あ~早く戦闘用のスキルの修行してぇよ!」


「あと4年は長いよね。俺も早くスキルの修行がしたい」


ゾットの叫びにルーベルも賛同する。


「なぁ、アブム。1年でどれくらい強くなったか分かるか?」


「昔の値なんて覚えてないけど、確実に強くはなってるよ」


それにしても、まさか人間まで『神業:鑑定』できるとは思わなかった。2人の数値は周りと比べて少しだけ高い程度だ。


「それにしてもアブムはスキルの勉強は大丈夫なの?」


「学校のあとに勉強は流石にキツイって」


戦闘系のスキルは15歳にならないと許されない。それまでは『アイテムボックス』や『自然治癒』を始めとした、習得に危険性が無いスキルの習得は許されている。


僕には追加でスキルの勉強を半ば強いられている。1週間に1日しか休みをもらえていない。ずーっと勉強の日々だ。


勉強は辛い。そして辛いときにだけ盗みをしていることに気づいた。ストレスが盗みのきっかけになるかもしれない。


盗みの技術も使っていることがわかった。見られていないときだけでなく、視線の誘導、腕や体で隠して、わざとぶつかってその隙に…全部無意識にやっている。技術が無意識で習得されて行く。


だから僕は友達といる。3人でいる時間と家族でいる時間が僕にとっては幸せだ。


そんな日々が続き数年が経ち15歳になった。スキルの本格的な習得が可能になり、盗みの頻度も上がった気がする。次第にこの市場には泥棒がいると噂が立ち始めた。


自分のことだとわかっている。噂を聞くたびにあの時のリンゴの重さを思い出す。


本当にこのままでいいのか?僕にはわからない。誰にも話せない僕だけの秘密。


ふと、商店街のハズレの道に目をやると、子供が寝そべっていた。まだ小さいがこんな子でもホームレスになるのか。


気になった僕は気づくとその子供の元まで行って以前に盗んだ果物を渡しながら聞いた。


「大丈夫?」


僕の言葉に怯えながらも手にある果物をすぐに取り、かぶりついていた。『神業:アイテムボックス』の中は時間が経過しないことがわかっている。


美味しそうに食べる姿に、ほんの少しだけ罪の重責が軽くなった感じがした。


「あ、あり、がとぉ…ございま…す…」


食べ終わると掠れながらの声でお礼をもらった。この子を見ていると放っておけない気持ちが駆り立てられる。


僕はまた道を踏み外した。


カサノ――それが彼女の名前だった。僕は彼女に盗みの技術を教えた。『神業:アイテムボックス』を使わなくても盗めるものはある。視線への注意と誘導、体の使い方、隙の作り方、そして捕まったときの逃げ方と合図。


そんなこといつどこで覚えたのかはわからない。これも前世の影響か…知らないことがスラスラ出てくる。やってはいけないこと、頭ではわかっている。それでも手も頭も勝手に動く。


それから数日、彼女は元気になったように見えた。だが彼女は僕に決して近づかない。約束を守ってくれている。僕達は他人だ。


――数カ月後。


父親と市場にいたときだった。


「この盗人の小娘が!今まで何度やられたと思ってんだ!」


男の声が市場に響く。人々の視線が一斉にその方向に向く。カサノの手が掴まれていた。


最近の増えた盗みに、市場の人達のストレスが爆発するのには十分だった。その行き場のない感情は、いくら子供相手でも暴力は起こってしまった。


カサノと目が合う。


「助けて!」


その言葉が市場に響く。カサノに向いていた視線はこっちに向く。咄嗟に合図を送る。人になすりつける合図。


対象は――父親だ。


自分の父親を差し出した。否定する父に彼女は「あの人から教えてもらった」と言う。


父親のポケットに『神業:アイテムボックス』の盗品を仕込む。


やってしまった。頭で考えるより先に体が動いた。初めて盗みをしたときと同じ。心が壊れそうになる。


誰かが父親のポケットにあった盗品を取り出す。


「見ろ!盗品だ!」


父親にどんな目で見たのか、自分でも思い出せない。ただ周りからは恐怖と失望に見えていたんだろう。


群衆の矛先が変わった。今まで暴力をせずに傍観していた者は大人相手には容赦ない暴力が降り注ぐ。殴られ、蹴られ、地面に叩きつけられた。俺はただ立ち尽くしていた。誰も止めなかった。誰かを叩きたかったのだ。 正義の証明を。


「ボウズはこっちに来い!巻き込まれるぞ!」


手を引っ張られ、裏路地へ押し込まれる。その手は震えていた怒りか恐怖か。それでもこの手は僕を守ろうとしている。


最後に見た父の表情は思い出せない。


――あれが俺のしたことだと気づいたときにはもう。


騒ぎが沈んだのは、しばらく経ってからだった。群衆の中を警察は進むことができず、警察が駆けつけた頃には、手足が折られ、血まみれで無惨な姿になっていた。


父は入院した。退院後に逮捕されることになった。母は泣いた。父親の病室でうわ言のように何かを呟いていた。


ー俺は家を出た。もうここにはいられない。荷物をまとめる気にもなれず『神業:アイテムボック』に必要なものを放り込んだ。


「あ、あの!」


街を出る少し前にカサノの声が聞こえた。父親の騒動に紛れて逃げ切れたようだ。


「助けてくれてありがとう」


彼女の言葉が心に刺さる。怒りが湧いてくる。いや、悲しみ、何にも縛られない喜び。


もう何も感じたくない。


「私も連れて行ってください!」


「顔を見たくない」


絞り出した言葉を置き、歩き出す。


小腹がすいた。リンゴを一口かじる。お腹いっぱいだ。

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