1章前半
全5回の短編です(1/5)
【注意】
本作品には犯罪描写が含まれますが、犯罪行為を肯定・助長する意図は一切ありません。あくまでフィクションとしてお楽しみください。
本作品では、一部AIツールを用いて補填・整文章作業を行っています。
雨が降る夜。街灯のオレンジの光が、濡れたアスファルトを照らしていた。
光は水たまりに反射し、目を焼くほど眩しいものだった。
バンッ!
「全員乗ったか!?」
「乗ったぞ!早く出せ!」
言うが早いか、車はすぐに発進した。
しかし、今回の家は防犯がしっかりしていたため、すぐにパトカーに追いかけられた。
「クソ!ハズれじゃねぇか!」
「銃はどこだ!?」
ダッシュボードにある二丁の拳銃のうち、ひとつを渡される。窓から体を乗り出し、発砲する。
ガタンッ!
車体が大きく跳ね、掴んでいた窓枠から手が滑った。次の瞬間、俺の体は外へ投げ出されアスファルトに叩きつけられた。 激しい痛みに身動きが取れない。
そうしていると車が俺に近づいてきて…
その瞬間、目が覚めた。
まただ。最近、似たような悪い夢をよく見る。知らない世界の知らない国で泥棒をする夢。
このことは親には言えない。心配をかけたくない。
僕の朝は夢を見るたびに一度、心を落ち着かせる時間が必要だ。
「アブム~ご飯よ~!」
お母さんが呼ぶ声が聞こえる。
一階に降りるとお父さんが新聞を読みながらコーヒーを飲んでいた。
「「おはよう、アブム」」
「おはよう!」
机にある朝食を食べ始める。焼いたパンの香りが鼻をくすぐる。いつもの朝だ。
「今日は【加護の儀】の日だな」
【加護の儀】は毎年10月31日に行われる。10歳以上でまだ【加護の儀】を受けていない人が受けることのできる儀式。
そこでは通常のスキルよりも強力なスキル『神業』がもらえるとのこと。
「でも、お母さん心配よ。もし戦闘系の『神業』なんてもらったら…」
お母さんの肩にそっと手を置き、お父さんがこちらを向く。
「大丈夫だよ。もしも、戦闘系のスキルでもお父さんたちがちゃんと支えるから」
どことなく悲しそうな顔をしているように見えた。
朝ごはんを食べ終わり友人と一緒に儀式が行われる神殿に向かう。
「おう!アブム」
「やぁ!ゾット、ルーベル」
「そっちの親どうだった」
「お母さんに泣かれたよ」
「やっぱりか、やっぱり親ってそういうもんなのかな」
ゾットが少し考え込む。それでもルーベルは戦闘系の『神業』が欲しいらしい。
「それでも俺は戦闘系がほしいよ。父さんみたいに戦いたい」
「お前のオヤジさんカッコいいもんな。やっぱ俺も戦闘系がいい!アブム、お前は?」
「僕は戦闘系は嫌だな。お父さんとお母さんを悲しませたくないし」
「…そっか。お前は偉いな」
「そうだな。俺達なんて自分のことばっか恥ずかしいったらありゃしない」
「で、でも2人も戦闘系だったら街を守れるんでしょ。それも偉いことだよ」
「まぁな。でも、やっぱりお前が一番偉いよ」
「そうだぞ!自信を持て」
2人に褒められ少し恥ずかしい。
「でもやっぱり気になるのは『神業』を2つもらえるかどうかだよな」
「前世の魂ってやつ?」
「そうそれ。実際どうなのよ前世って…」
そうして3人で話していると時間になったことを知らせる鐘の音がした。
全員が静かにして正面を向く。そうすると白い服を着たおじいさんが出てきた。
「皆さん。こんにちは。この神殿の守人です。改めて説明します。ここでは【神の加護】を受けることができます。【神の加護】は他のスキルとは違いより強力な力、もしくはスキルにない力が与えられます。それらを総称して『神業』と呼ばれます。
そして『神業』は本来1つだけですが、極稀に2つ与えられます。その際は一時的に気絶してしまいます。倒れた方がいても焦らなくて大丈夫です。
質問のある人はいますか?」
「はーい。どうして2つも『神業』がもらえるんですか?」
「いい質問です。それは前世の魂だと考えられています。前世の魂が強いため、その魂にも『神業』が与えられます。
その際に前世の記憶が思い出されるため、気絶してしまうんです。わかりましたか?」
「守人さんは前世知っているんですか?」
「はい。私の前世は…」
前世の記憶…そういえば去年その話を始めて聞いたときからかな、あの夢を見るようになったのは。
「それでは只今より儀式を行います」
神殿の周りにあるロウソクに火が付く。守人さんが詠唱を始める。
体が熱くなる。脳裏に刻印のようにスキルが浮かぶ。
『鑑定』『アイテムボックス』
その瞬間、気がついた。今まで見てきた夢は前世だ。
ドサッと、隣にいたルーベルが倒れた。
『神業』を2つもらえたようだ。戦闘系をもらえたのか考えていると、自分の状態に気づく。
『鑑定』と『アイテムボックス』…確かに僕は2つの『神業』をもらった。でも気絶はしていない。どうしてだ?守人さんの言葉を思い出す。「前世の記憶が思い出されるため、気絶してしまう」僕はすでに前世の記憶を少しずつ見ていた。
そのためだと分かり、唖然としていると。
「やったー!」「クソー」
ガヤガヤと声が聞こえ始めた。全員が『神業』をもらい終わったらしい。
ルーベルの奥にいたゾットがこっちを見る。
「やったぞ!俺は『カマイタチ』だぜ!何でも「斬撃を飛ばせる」ってこれ戦闘スキルだよな!やったー!」
飛ぶように喜んだゾットは、こちらを向き直った。
「それにしてもルーベルは2つ持ちか。戦闘系だといいな。それでアブムは何をもらったんだ」
「僕は…」
__
嘘をついた。
「僕は…『鑑定』だよ」
嘘をつく必要なんてなかった。けれど、喉が勝手にそう言った。 心臓の高鳴り、喉が渇く。
「『鑑定』って大当たりじゃねぇか!引く手あまたの、スキルの取得がすっげー難しい『鑑定』を【神の加護】でもらえるなんて羨ましすぎるぜ!」
『鑑定』という言葉に、周囲の視線が一斉に集まる。 あたりまえだ。『鑑定』はどこの仕事でも使えるスキルなんだから。そんなスキルを手に入れたら、注目されるのは当然だ。
……なんで注目されるのが嫌なんだ? そんな疑問を抱いていると
「よかったじゃん。これで親たちを悲しませずに済んだじゃん」
胸にドンと拳が当たる。その言葉がとても嬉しく思わず涙を流しながら応えた
「うん!」
「それにしてもスキルの修行まであと5年か~。待ち遠しいな」
「そうだね。それまでに少しは剣の鍛錬に付き合うよ」
「本当か!ありがとな!」
神殿を出ると両親がいた。『鑑定』だと伝えると2人ともとっても喜んでくれた。母さんなんて泣いて喜んでいた。
「今日はご馳走だぞ!」
その足で僕達は商店街へと向かった。
嬉しいな。2人ともあんなに喜んでくれて。あんな夢のことなんて忘れて『鑑定』でちゃんとした仕事しないとな。
試しにリンゴを『鑑定』をしようとしたが、店内での『鑑定』は禁止されていた。
残念に思いながらも仕方ないと思いりんごを戻し歩き出す。
少し歩いたあと、急に手を掴まれた。
「大人しくそのポッケに入れたものだしな」
いきなり言われたことに驚きながらも、リンゴを盗んだと思われているようだ。
「知りません。それにポッケにも何も入って無いじゃないですか!」
「ふん!どうせ『アイテムボックス』でも使ったんだろ!」
『アイテムボックス』その言葉に思わず心臓が跳ねた。まさか…
後ろから男の手を掴む父さんが現れた。
「うちの息子がどうかしましたか?」
「こいつの親御さんかい?こいつが中のリンゴを盗んだんだよ。どうせ『アイテムボックス』でも使ってね」
「『アイテムボックス』ってこの子はまだ10歳ですよ。スキルの勉強はこれからです。それに【神の加護】も『鑑定』です。『アイテムボックス』を使えるなんてありえません。
そもそも「どうせ『アイテムボックス』でも使って」って魔法陣を見たんですか?」
父の言葉に少し後ずさる店主。そこに駆けつけたのは警察だった。野次馬の一人が呼んだらしい。
「どうしました?」
「どうしたもこうしたもこいつがリンゴを盗ったんだよ!」
「うちの息子はそんなことしていません!」
父さんと店主が睨み合う。
「僕、正直に話してね。リンゴを盗んだの?」
警察がしゃがみ視線が合う。
「と、盗ってません」
堂々とした振る舞いで答える。警察がじっと見たあと、手を掴む。今度は掴んだ手を見る。
「スキルを使用した痕跡はあります。しかし『アイテムボックス』の中には物は何もありません」
「今出したんじゃないか!?『アイテムボックス』が無いわけじゃないんだろ!」
「いえ、『アイテムボックス』自体は全員持っています。しかしスキル『アイテムボックス』は、その機能を扱えるようになるだけです。
そして中身がないのは私の『検査』で確認することができます」
その言葉に店主は食い下がる。父さんも『アイテムボックス』の言葉を聞いたときは顔が引き攣ったが今は安堵の表情をしている。
「それじゃこいつのスキルは何なんだ!『アイテムボックス』じゃなくてもそれかもしれないだろ!」
「そうですね。僕、君はなんのスキルを使ったのかね?」
「『鑑定』です。今日【神の加護】の儀でもらって…」
「このリンゴを『鑑定』したのかね?鑑定は禁止されているはずだが」
「ご、ごめんなさい。使ってみたくて…」
その言葉に野次馬も「舞い上がったのね」「盗人呼ばわりされて可哀想」など声が聞こえる。
「『鑑定』の結果はどうだったの?」
「あの、文字が多くてリンゴとその人の顔以外よくわからなくて…」
「それじゃ今しようか」
手に乗ったリンゴを『鑑定』する。
「リンゴ。産地、トード地の農園。x、40.00094、y、142.590211…ってこれなに?他にも数字がいっぱい…100日とか賞味期限が30日とかいっぱいで…」
「…何行くらい書いてある?」
1,2,3…10と数えている最中に警察が割り込んできた。
「分かりましたもう大丈夫です。あなたもいいでしょう。彼の『鑑定』は本物。通常の『鑑定』ならせいぜい5行程度です。10行に達するなら【神の加護】で授かった『神業:鑑定』。それは紛れもない事実です。お二人とももう行っても大丈夫です。店主さんからは私が話を聞きますから」
父さんの手を掴み帰ろうとすると、
「いえ、まだうちの息子に謝罪をいただけていません」
警察に促され嫌そうな顔で謝罪をしていた。
「ご、ごめんなさい」
「…アブム、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だから、もう行こ」
そう言うと父さんは僕の手を握りその場を離れた。
後ろからは店主の「あの子供が通ったあとにリンゴが一つ消えてんだよ!本当だって!」そう聞こえた。
その後、事の顛末を話した母さんのことを止めるのに苦労した。
夕飯のご馳走を食べたあと、僕はすぐに自分の部屋に向かった。
昼の件もあったため、両親も心配なんだろう。気にするな。部屋を出る前にそう言われた。
…部屋に入り、ドアを背に倒れ込む。――そして『アイテムボックス』からリンゴを取り出す。
なんで。なんで。なんで。なんで。なんで。なんで。 なんで。なんで。なんで。 なんで。なんで。なんで。 なんで。なんで。なんで。 なんで。なんで。
――なんで。
背筋が凍る。鳥肌が立って寒気がすると同時に心臓の鼓動が早くなって体が熱くなる。足が震えて立てない。無意識にやってしまった。それに嘘までついてしまった。その全てが現実だということをリンゴの重さが嫌でも伝える。
あの時のことは曖昧だ。まるで自分が自分じゃないかのように。そうしてふと思い出す。前世のことを。今からでも遅くない。本当のことを言おう。
今日のことは忘れない。もう二度とこんなことは無いように気をしっかりする。そう誓って眠りについた。夢を見なくなった夜ほど、胸の奥がざわついて眠れなかった。
読んでくださってありがとうございました!感想・ブクマ等、とても励みになります!




