表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

凍てつく感情

作者: 皐月裕

 佳奈子は紙袋の中から本を取り出して、ベッドに腰掛けた。

 それは仕事帰りに立ち寄った本屋で見つけたシャルル・ペローの「眠りの森の美女」だった。本屋に寄るのは、久しぶりのことだった。

 学生の頃は図書室を眺めて、気になった本を手に取って気まぐれに読むのが、唯一趣味と言えることだったが、社会人になってからはそんな暇も、満員電車の中で本を開きながら立っている気力もなく、本から離れた生活をおくっていた。

 佳奈子が本屋に立ち寄ったのは、気まぐれじゃなかった。ただ、この本を見つけたのは、偶然だった。たまたま入った本屋の入り口には児童書のコーナーがあった。最寄り駅のビルのワンフロアを占領している本屋の存在は知っていたが、そこで本を買うのは初めてだった。

 ベッドサイドのランプを点け、部屋の電気を消した。小さなワンルームの部屋が、ほのかなオレンジ色の光に包まれる。ベッドに横になって、本をランプへ近づける。これぐらいの距離と明るさなら、幾何学模様のような複雑な漢字のない本なら読める。

 佳奈子は途中で眠ってしまってもいい、と思いながら布団をかぶり、本をめくった。


 子供のころに読んでもらった「眠りの森の美女」は、怖い魔法使いが出てきて、お姫様を眠らせてしまって、そこに王子様がやってきて、キスでお姫様を起こす、ぐらいの簡単なあらすじしか思い出せない。

 この本を見た時、唐突にどんな話だったのか、大人になった自分にはどんな物語に思えるのか、気になった。本を裏返して、値段を見たが、すっかり本から離れ、学生時代もろくにお小遣いを本に割かなかった佳奈子には、高いのか安いのかわからなかった。

 本を片手に店をうろうろとして、結局この本だけを買って店を出た。店には仕事帰りらしい、スーツ姿の男女が雑誌コーナーに群がっていて、児童書コーナーには誰もいなかった。同僚や後輩の女子の会話に入っていけないのは、ファッション雑誌を一切チェックしていないからかもしれない。そんなことを考えながら、佳奈子は帰宅した。


『王様とお妃様は子供ができないのを悩んでいた』

 佳奈子はああ、世継ぎが生まれないと困るからか、と冷淡なことを思った自分に呆れた。

『やがて、ひとりの女の子が生まれました。名づけの親として国中の妖精が呼ばれました』

 妖精なんて出てきたのか。佳奈子の記憶には全くないシーンだった。妖精がお姫様に贈り物をしてくれることも、ひとりだけ自分勝手な妖精がいて、その妖精からお姫様を守ろうと奮起した妖精がいたことも、真新しい物語のように鮮明に映った。

 お姫様が大きくなって、妖精の言葉通り、機織り機で怪我をして、眠ってしまうところまで読み、魔法使いは出てこない話だったのか、とかすかに落胆した。

 それから、いくつかの疑問が浮かんだ。

 妖精はお姫様が起きた時に困らないように、王と王妃以外はすべて眠らせてしまう。確かに起きた時に誰も知っている人がいなかったら悲しいだろうけど、その時そこで働いていた人たちはどうなるのだろう。

 その人たちの家族は、友人は、お姫様が眠りについたことなんかより、働いていた人々が一緒に眠ってしまって、もう二度と会うことはできないことの方が辛いんじゃないだろうか。王に仕える重大な職とは言え、その人たちと家族や友人たちはお姫様のためだからって、納得できるんだろうか。

 佳奈子は今の時代じゃ考えられないな、と思った。佳奈子には上司のために職場の人たち以外との交流を一切断つなんて、いくら積まれてもやりたくない。

 お姫様と一緒に眠った彼ら、彼女らのために泣く人がどれだけいるか。王と王妃はそれを想像しなかったのか。妖精はお姫様のこと以外は考えなかったのだろうか。

 階級社会という言葉だけでは、なんだか納得ができない佳奈子だったが、おとぎ話だからと、考えるのをやめた。


 お姫様が王子と会ってから、結婚するまでは呆気ないもので、目覚めのキスもない。妖精の魔法ですべて片付いてしまうのが、おとぎ話らしくはあったけれど、佳奈子はちょっとむなしさを覚えた。

 だって、子供の頃から長い眠りについたお姫様が、愛する王子のキスで目覚める、あの物語がロマンチックだと思っていたのだ。ところがこの本の話では、お姫様は一人で寂しく待っているわけでもなく、愛している人からのキスがなければ目覚められないわけでもない。それに、お姫様にとって王子は目覚めて  初めて会う人だし、王子は魔法をかけられて眠っていたお姫様の見た目に惚れたわけだ。

「そんなもんかなぁ、やっぱり」

 佳奈子は横になりながら、かすかに濡れた黒髪をつまみ上げた。一度も染めたことがない髪。かといって、傷んでいないわけでもないし、枝毛も白髪もある。髪をいじりたい盛りの頃にはすでにこんな髪質で、染めたくても傷みがひどくなるような気がして、手が出せなかったまま、生まれた頃からの黒髪を二十年以上保っている。最近では少しずつ分け目が目立つようになってきて、薄毛の心配までし始めたくらいだ。

 髪質は悪い方だし、とてもおとぎ話のお姫様のような美しくて若い髪も、コルセットで締め上げられるウエストでもない。魔法がかかっているとはいえ、お姫様の愛され方からすれば、肌の手入れも申し分ないだろうし、そもそも生まれつきの容姿がよかったんだろう。佳奈子は勝手に本に書かれていないことまで想像して、ため息を吐いた。

 本の続きには、結婚式の様子が描かれ、お姫様がおばあさんのような古びた盛装で式に出て、王子はそれをいわないように我慢した。お姫様はそんな格好でも美しかったからだと書かれている。

やっぱりおとぎ話のお姫様は決まって美しいんだな。佳奈子はお姫様が目覚めた後の話は知らなかったと思いながら読み進めた。

 美しいお姫様には機織り機でけがをして眠りについただけじゃなく、姑が人食い鬼という悲劇まで待っていた。久しぶりに読んだ童話の、妖精や鬼が当たり前のように出てくる世界感に、頭の中が硬くなっていたことを実感する。昔はどんな世界設定でも、いったんは受け入れて読むことができたのに、今はいろいろと引っかかるばかりだ。

 王子が王位を継いで、戦争になった時、悲劇が起こる。夫が戦争に旅立つだけでも、大変なことなのに、お姫様は姑と一緒に暮らすことになった。

 物語は料理長の視点で描かれ、お姫様にはあまり触れられない。姑ははじめに息子を食べたいと言い出した。料理長は人食い鬼に逆らえずに、小さな男の子の寝室へ行くが、無邪気にかけよってくるのを見て、改心した料理長は男の子を鶏小屋にかくまった。

 この時、お姫様は何を思っただろう。息子が知らないうちに料理されて食べられてしまったと思って、どう人食い鬼に逆らえるだろう。もう死んでしまった息子のために何ができただろう。

 お姫様のことは一切触れられないまま、今度は娘を食べたいと姑が言い出す。料理長はもう肝が据わったもので、娘を鶏小屋にかくまい、小山羊の肉を出す。それでも、その料理は娘を調理したものとして出されるので、お姫様には息子、娘が無事なことなんてわからない。

 お姫様と姑は同じテーブルにはついていないらしい。さすがにここで同じ場所にいたのなら、息子や娘を食べたいなんて言い出せないはずだし、お姫様の様子を描くはずだと思い、佳奈子は考えた。

 佳奈子には子供はいないし、そんな予定のある相手もいないけれど、無邪気な子供たちを見て、食欲がわくとはどういうことなんだろう。たとえ人食い鬼だとしても、血のつながった孫を食べたいと思うなんて、理解できない。

 王子が帰ってきても、だませると思ったのか。王子が子供が死んだことを悲しまないと思ったのか、悲しむとわかっていても、食欲に勝てなかったのか。佳奈子は憤然としながら、ページをめくった。

 今度はお姫様を食べたいといわれ、料理長はお姫様の代わりにする肉はないと思いながらお姫様の元に行く。するとお姫様は料理長がどうして自分のところに来たのかも、子供たちが食べられてしまったことも理解していて、自らの首を差し出す。あまつさえ、それがあなたの仕事だからと料理長を責めもせず、子供たちのところへ行けるとさえ言う。

 これには料理長も参ってしまい、本当のことをお姫様に話して一緒にかくまった。子供たちに再会したお姫様は、ここで初めて涙を流す。

 お姫様の寛容さと理解のよさ、姑に逆らわずにいる様が目に浮かぶようで、佳奈子は布団の中で丸くなった。本当に、子供たちが殺されるかもしれないと思わなかったんだろうか。姑が人食い鬼だと知っているのに、子供たちのそばにいなかったのは、なぜなんだろう。目上の人間に逆らわないことが、気立ての良さなんだろうか。本当にそうだろうか。

 子供たちが部屋から消えた時の恐ろしさと、苦しみ、悲しみがどれほどか、佳奈子にも想像はできた。でも、それが現実になった時、自分がお姫様と同じ対応ができるかは、まったくわからなかった。

 姑に三人が生きていることがばれた理由はとても単純だった。弟がいけないことをしたから、鞭でたたいてもらおうとして、それを姉が許してほしいと頼んでいるのが聞こえてしまったということだった。

「……鞭、ねぇ」

 このお話が語り継がれていた時代を考えると、おしおきが鞭打ちというのはよくあったことなのかもしれない。だけど、たった数行の状況説明の描写に、佳奈子は本を閉じた。

 そのおしおきが大きな、取り返しのつかないトラウマを子供たちに植え付けることになったら、母親はどうするのだろう。姉が弟をかばって母親に許しを乞うたように、とても辛いこととして、子供たちの心の中に、記憶の中に残ったら、母親は何をしてくれるのか。


 佳奈子は残りの少しを読み終え、本をベッドサイドへおいた。

 姑は大桶にヒキガエルやヘビを入れさせて、そこに三人を入れようとしているところを、運悪く王子が帰ってきて、母親に何をしているのかと問いただした。気が動転した姑、人食い鬼は自ら大桶に飛び込み、死んでしまう。王子は深く悲しんだが、お姫様たちのおかげで立ち直ることができた。

 物語はそれでおしまいだった。

 佳奈子は天井を見上げた。見慣れた白いアパートの天井に、うっすらと深い茶色の木目の板が視界の端まで、じわじわと広がっていった。

「違う」

 うわごとのように、かすれた声は、他人のもののように思えた。天井が古い板張りの天井に変わっていく、幻覚が見える。

「そう、本物じゃない」

 本物の天井は、ただの白い、名前もわからない建築材料でできた、普通のアパートの天井だ。佳奈子にはアパートの天井の違いなんてわからないけれど、あれだけは違う。

「ここはあそこじゃない」

 佳奈子が仕事にのめり込んだのは、すべてを忘れるためだった。ちょうど真上の板の中に、丸い年輪が、二つ並んでいる。

 もう声は出なかった。あの二つの丸が、嫌いだった。幼い頃から、あれが人の顔に、目に、口に見えた。

 私を見るときのあの人たちの顔。そのときのあの目。表現しようのない感情に追い立てる言葉を吐く、あの口に見えて来る。

 佳奈子は耳を塞いだ。話し声が聞こえてくる。あのいやな声が。

「もういない!」

 あの人はもういない。佳奈子はぎゅっと目をつむった。

 こんな歳になってまで、幻覚や幻聴におびえるなんて、馬鹿みたいだと思いながら、それらが去って行くのを待った。


 彼女は母親になりきれていなかったんだと思う。

 きっと、あの姑は息子が可愛かったんだ。だから、自分から子供が去ってしまったようで、恋人ができたであろうことも喜べず、孫も息子と同じように可愛いとは思えなかった。だって、息子が小さい頃、彼を食べたいとは思わなかったはずだから。

 もし食べたいと思ったのなら、彼女は夫にどう言われようと食べただろう。たとえ自分が殺されることになっても、食欲を抑えられなかっただろう。

 彼女は母親としての意識が強すぎた。子供を教育することに熱心すぎた。子供をおしおきすることなんかよりも、自分たちが命を狙われていることを思い出すべきだった。責任感と義務感は時に人をおかしくさせる。

 佳奈子はゆっくりと目を開けた。白い天井が見える。なんの模様もない、シンプル極まりない、安らぎの天井。そっと手を耳から離し、すべてが過ぎ去ったことを確認した。

 過ぎ去ってみれば、悪夢は徐々に和らいでいく。悪夢を忘れさせてくれる人がいれば。王子はそれで救われた。眠りの森の美女を起こした、彼の勇気が彼自身を救った。

 佳奈子には美女もいなければ、彼のような勇気も度胸もなかった。だから、佳奈子に返ってきたものは、一人っきりのこの部屋。思い出したくもない記憶と悪夢、それだけだった。


 母は父を深く愛していた。けれど、それは恋人の彼であって、父親の彼ではなかった。それがよくわかるようになったのは最近だ。

 幼いころ、ずっと不思議だったことがある。佳奈子の家は共働きで、学校から帰ってくると、誰もいないことがざらにあった。母も父も帰ってくると忙しなく家事を済ませ、眠ってしまう。遊び相手になってくれたのはいつも父だった。それだけで母が自分を愛していないとは思わなかったが、時折母が佳奈子に一人遊びを勧めるのが、不思議だったし、寂しかった。

 佳奈子はベッドサイドの明かりを消し、布団を深くかぶった。頭までかぶってしまうと、足のほうが少しだけ足りなくて寒かった。もう少し大きな布団に買い替えたい。大人になったこの体をすっぽり包んでしまうシェルターになるように。

 佳奈子は膝を曲げ、少しだけ腹へ引き上げる。丸まるように布団に潜り込み、瞳を閉じた。

 母はよく父と二人で出かけた。学校の日も、土日も、佳奈子は一人っきりになることが多かった。たまに父が外へ連れて行ってくれるのが、小さなころはとてもうれしかった。

 中学生になったころ、自分の家庭がほかの人たちとは違うのだと、はっきり理解した。母は一人では学校の行事に顔を出さなかった。熱を出しても、迎えに来るのはいつも父だった。学校を早退して、父に半休を使わせた私に、帰ってきた母はいら立ちを隠さないで言った。

「熱が出たぐらいで、わざわざ連絡させないで。一人で帰ってこれるでしょ?」

 その時の私が、なんて答えたのかは思い出せない。ただ、酷く苦しい気分が、生々しく心に残っている。

 家事をするのは母だったけど、私の世話をするのも、たまにお小遣いをくれるのも父だった。決して多くはないたまにしか貰えないお小遣いでは、友達と遊びに行くことも本当にたまにしかできない。そのせいか、佳奈子はじわじわと周囲から浮いていった。

 学校の中だけでは問題ないものの、遊びに行く約束を切り出されると、相手の家に遊びに行くか、公園ぐらいしか選択肢がなかった。母は家に友達を上げるのを酷く嫌った。幼いころ、目立って厳しく言いつけることがなかった母が、唯一禁じたのが友人を家に招くことだった。

 女の子というのは非情なもので、遊びについてこられない佳奈子を次第に煙たがり、仲間外れにし始めた。それが顕著になったのは、中学に入って半年たつかどうかといった時期だった。

 それまで佳奈子の周りに寄っては来ないものの、話してはくれる女子たちが、ある日一斉に佳奈子を無視し始めた。首謀者が誰だったのかはわかっていた。昨日まではおしゃべりしていた子たちが、困った顔で視線を投げている相手が、みんな一緒だったから。

 ああ、いじめられるの怖いもんね。わかるよ。私も怖いから。

 佳奈子は小学校のころからの友人の奈々ちゃんが、隣のクラスからやってこなくなったのを実感しても、泣かなかった。泣いたって仕方ないから。誰も話してくれないのに、泣いて話しかけてくれるわけがない。

 でも、でも、と佳奈子はこぶしを握った。

――どうして、自分がされた怖いことを、他人にしていいって思えたの? その相手が苦しむって想像できなかったの? それがわかっていても、そうするしかないって思ったの?

 帰り道、一人で泣いた。周りには誰も近寄ってこないし、振り返る人もいない。声を出さずに泣いた。

 自宅につくと、珍しく母がいた。涙を拭いながら部屋に入った佳奈子に、母は目を見開いて言った。

「どうしたの?」

 驚いて浮ついた声。佳奈子は母の優し気な声を聴いた瞬間、声を漏らして泣いた。母の問いに答えることはできなかった。ただただ、泣き続けることしかできなかった。


「ブーッブーッ」

 がたがたがたと小刻みに振動する音を聞いて、佳奈子は布団から顔を出した。サイドテーブルに置いていたスマートフォンの画面が光っている。

 手に取ると画面には「奈々」と表示されていた。あの奈々ちゃんは、周りが佳奈子をいじめるのに飽きたころから、何もなかったかのようにひょっこり佳奈子に会いに来るようになった。佳奈子は奈々ちゃんと「奈奈コンビ」として、また友人を続けていた。

 内容は元気な挨拶から始まった、合コンのお誘いだった。佳奈子はそれを読み終えると、ため息をついた。

 少し悩んでから返信した。こんな時間に来た連絡とは言え、アプリの機能上既読マークはついてしまっている。返事をしないのも気分が悪い。

『ごめん。喪中だからやめとく』

 世渡り上手なのに、空気の読めないところは相変わらずだな、と佳奈子は数少ない友人に呆れた。

 返信を打ち終えてから、電源を切った。最後の一鳴きのようにバイブレーションが机を揺らして、部屋は静かになった。

 佳奈子は再び布団の中に潜り込んだ。佳奈子のパジャマは半年前から黒いまま。一人の部屋に仏壇はない。

 母に先立たれて、後を追いかけんばかりに落ち込んでいた父を一人にして、逃げ出した佳奈子の部屋は、今日も静かだった。

 一人娘に逃げられた父は、どんな気分であの古い家で過ごしているんだろう。佳奈子の部屋と同じように毎日、ひっそりと静まり返っているんだろうか。

 眠りに落ちる前、母が死に際に吐いた言葉が、聞こえてきた。

「あんたを生まなかったら、私は死なずにすんだのかもね」

 その言葉がただの感想だったのか、本当に病気発症の原因になっていたのか、佳奈子が知る機会は来ないままだった。父は母が亡くなってから、佳奈子を振り返る余裕なんてまるでなく、葬式をなんとか乗り越えた後は、仕事にも行かず、母と一緒に灰にでもなったようだった。

 あの声が聞こえてきても、もう悪い気分になることはなかった。佳奈子は母の声を無視するように、暗い眠りへ落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ