エピローグ⑥
翌朝、目が覚めると隣では気持ち良さそうに眠る高柳さんの顔が間近にあって、昨夜のことを思い出し一人羞恥に悶絶した。
素敵な一夜だった。
高柳さんはとても優しく私を抱いてくれた。どこまでも丁寧に扱われるから、まるで自分がガラス細工で出来ているのかと思えるほどだった。
これまで大事にとっておいたわけではない貞操を、正直重たいと思った時もあったけど、今はこれで良かったのだと思う。彼がこんなにも大事に扱う自分を、自分でも大事にしたいと思えたから。
そんなことを考えていると、ふと首元に違和感を感じた。
(髪の毛でも絡まったのかな)とそこに手を遣ると、予測していなかった触感が指に触れる。何だろうと、そっとそれを指で摘まんで持ち上げると、それは細く銀色に光るチェーンだった。
チェーンの先には花びらに見立てた薄紫の宝石。その真ん中には小さなダイヤが輝いている。
「え、なに…なんで……」
昨日まで存在しなかったものに戸惑いの声が口から出た。すると突然隣から声がした。
「おはよう、雪華」
「あ、高柳さんっ…おはよう、ございます」
「それ、気に入ってくれた?」
「これ……高柳さんが?」
「ああ。誕生日プレゼント。昨夜渡しそびれて、すまないな」
申し訳なさそうに眉を下げる高柳さんに、慌てて首を振る。
「すまないなんて!…私、てっきり昨夜のお食事がプレゼントなのだと思って……」
「まあ、あれも誕生日プレゼントの一部でもあるけどな。こっちが本命。…気に入らなかったか?」
「そんなことっ!…ありがとうございます。私にはもったいないくらい素敵です。大事にしますね」
「良く似合ってるよ」
満足そうに微笑む彼に、「ありがとうございます、高柳さん」ともう一度お礼をして、私はベッドから起き上がろうとした。
が、――腕を引かれポスンとベッドに逆戻りする。
「わっ、びっくりした……」
目を丸くする私に、眉を寄せた高柳さんが不満げな声を上げる。
「違うだろ」
「え?」
「……もう忘れたのか?昨夜はあんなに呼んでくれたのに」
「あっ、」
『昨夜』という単語に顔が赤くなる。私が呼べるようになるまで幾度も甘く攻め立てられたことを思い出し、全身が火照りだす。
「呼んで? 雪華」
さっきまでのしかつめらしい表情が、急に甘く変わる。大きな窓から差し込んだ朝陽が、彼の瞳にキラキラと映り込む。
「こ……滉太さん」
「良く出来ました。愛してるよ、雪華」
「滉太さん……私も」
近付く唇に瞳を閉じる。どこまでも甘い口づけが角度を変え何度も降ってくる。
朝陽が差し込む明るい部屋の中、私を抱き寄せる大きな腕に身を預けた。
【了】
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汐埼ゆたかと申します。
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