第十章 決起会⑤
「お前、昔と違ってアッチの技も上達したんだろ」
「な、」
何を言っているのか意味が分からない。
「本社で噂を聞いたぞ。女の武器で高柳統括に取り入っているらしいな」
「っ!」
「それにあの幾見、って若いヤツも、ずいぶんとお前に躾けられているようだし」
根も葉もない噂と酷い言いがかりに、頭がカッとなって言葉が出ない。
「そんなことは全部ウソだ」と言いたいのに、唇がわなわなと震えて声にならない。
「俺はな、青水。自分の行いを後悔したよ」
ねっとりとした声が耳に張り付く。逃げ出したいのに掴まれた手首と壁、そして目の前に塞がるがっしりとした体が邪魔をして、一歩も動けない。
「あの頃のお前を面倒くさがらずに、あのまま付き合っておけばよかった」
(なにを勝手なことを!)
そう反論したいのに情けないことに声が出ない。震える足で何とかその場に立っているだけで精一杯。
矢崎さんは「俺も若かったな」と呟いて「フフッ」と笑う。
「まあでも…今のお前となら楽しめそうだ」
そう言った声が聞こえたすぐ後、首筋に唇を押し当てられた。
「いやっ!!」
ほとんど悲鳴と同じ拒絶の声は、すぐに大きな手で塞がれた。
逃れようと体を捩るけれど、矢崎さんが足の間に膝を差し込み、体自体を使って私を壁に押し付けるようにしているから身動きが取れない。
首筋に吸いついている生温い感触に全身が粟立った。足元からせり上がってくる恐怖に、足の震えが抑えられない。
吸いつかれている場所に痛みを感じて「ううっ」とうめき声が漏れた。
「大きな声を出すなよ」
やっと離されたと思ったら低い声でそう言われ、反論しようと口を開けたところで腰から下を後ろから大きく撫でられた。
「っ」
ぞわっと体に悪寒が走る。悲鳴が声にならない。あまりの不快感に吐き気が込み上げる。
「こんなところには誰も来ない。お前も楽しんだらいい」
腰の下を撫でていた手がプルオーバーのシフォンブラウスの裾から侵入してきた。
「いやっ、やめっ」
「黙ってろ。誰か来て見られたら困るのはお前の方だろ」
必死に両手で矢崎さんを押し返そうとすると、あっという間に片手で私の両手を括るように封じられる。
ジッと睨むように見下ろされて、震えて崩れ落ちそうになる足をこれ以上支えることが出来そうにない。
素肌を撫でる手が一気に私の胸元まで伸びてきた。下着の上から触れられ、不快と恐怖のあまり涙がこぼれる。
ガタガタと噛みあわない歯を鳴らせながら「やめて」と懇願するが、弱々しいその声に余計に煽られたように動きが激しくなっていく。
ゴロゴロゴロ――
耳に届く雷鳴もそれだと認識する余裕すらない。
ピカッ――
閃光と同時に、私の脳裏に映し出されたのは、動かない表情。それでいて柔らかな瞳。
盛り上がった涙がこぼれ落ちる直前、私はありったけの力を振り絞って叫んだ。
「だれかっ……たすけてっ!」




