表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/95

第六章 元カレ襲来⑥

***



「おかえりなさい」


「ただいま。遅くなって悪い。青水はもう食べたのか?」


「はい。お風呂もお先に頂きました。ご飯用意しておきますので、先にお風呂に入られたらどうですか?」


「ありがとう。そうさせて貰うよ」


階段で矢崎さんと別れて、高柳さんとミーティングルームで二人きりになった時、少しのだけ二人の間に沈黙があった。


いつもと変わらぬ無表情が怒っているように感じてしまうのは、矢崎さんとの遣り取りを見られた気まずさからだろうか。


(無表情はいつものことなのに……)


何か言われるかとビクビクしながら黙っていると、高柳さんは何も言わず打ち合せが始まった。


その打ち合わせの後、自分のデスクに帰ってからスマホを見ると、矢崎さんからメールが入っていた。

彼と付き合っていた頃はまだ今みたいにSNSが盛んではなかったから、連絡手段はほとんどがメールだった。別れてから携帯アドレスは変えていない。


(まどかに『携帯変えた方がいい』と、言われてたのに……)


親友からのアドバイスを『そこまでしなくても大丈夫よ』と流したのが悔やまれる。


【18時半に会社の最寄駅で待ち合わせな】


一方的なメールに、正直腹が立った。


(行かない、って言ったのに)


腹立ちついでに、お弁当の玉子焼き取られたことも思い返す。


【他に予定があるので行けません。

今後は仕事のお話は社内メールでお願いします】


それだけ返すと、スマホの電源を切っておいた。面倒だけどアドレスを変えよう。


矢崎さんの誘いを断る為に言った『予定があります』と言うのは決して嘘ではない。

私には食事当番という用事がある。


別に食事当番でも外食や飲みに行ってはいけないわけではない。きちんと相手に連絡をすれば良いだけ。

けれど矢崎さんと食事をするつもりなんてサラサラない。ただの口実だ。


あの後、私は定時と共にオフィスを飛び出した。駅で矢崎さんに捕まりたくなかったからだ。その作戦は成功し、無事彼に捕まることなく電車に乗り、いつもより早く帰宅することが出来た。

そのおかげで、いつもより丁寧に夕飯作りが出来たことに今は満足している。


それでなくても、当番の日は早く帰るのを心掛けているのだ。

料理上手な高柳さんと違って、レシピサイトを逐一確認しなければならない私には、料理に時間が掛かる。慣れないから手際も悪く、目標時間までに献立を作り上げることに精一杯。


仕事が詰まっている時は手抜きをしようとは思っているものの、私より何倍も忙しい高柳さんが、毎回バランスのとれた美味しいご飯を作ってくれるのだから、料理が苦手だからとサボれるわけがない。


「今日は魚か」


お風呂から上がって来た高柳さんがこちらを見て言う。

グリルからの匂いで焼き魚だと分かったのだろう。


「はい。昨日一昨日がお肉だったので、今日はお魚にしました。あ、もしかしてお昼がお魚でしたか?」


「いや、昼は忙しくてきちんと取れなかった。ちょうど魚が食べたいと思っていたから嬉しいよ」


「そうだったんですね…。あ、お弁当ご馳走さまでした。美味しかったです」


「ああ」


「私ばかりすみません……。夕飯も秋鮭を焼いただけなんですけど」


「好きだから大丈夫」


胸の中で何かがピョンと跳ね、頬がじわっと熱を持つ。


(いやいや、好きなのは料理。もしくは秋鮭でしょ?)


ちょうど良く焼き上がった鮭を皿に出し、温めた味噌汁と里芋の煮物と一緒に、トレーに乗せて持って行く。テーブルの上には先に胡瓜の浅漬けを出しておいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ