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第六章 元カレ襲来④

***



「お手元の資料三ページをご覧ください」


ザッと、一斉に紙を捲る音が広い会議室に響く。

会議の導入部分では、担当者全員の自己紹介を行った後、企画概要の説明に入った。


「特別企画【TohmaBeer-Hopping】の概要をご説明いたします」


テーブルに着いている社員のほとんどが手元の資料を見ている中、一人だけ顔を上げている人がいた。矢崎さんだ。

視線を感じるけれど、なるべく彼と目が合わないよう会議室を見渡しながら、マイクを片手に説明を続ける。


「【TohmaBeer-Hopping】は、“バーホッピング”つまり、“はしご酒”から発想を得た企画です。トーマビール、トーマ飲料を中心としたトーマグループ各社のドリンクを、ご参加いただくお客様に楽しんでもらえるよう、これからここにいる皆様と作り上げていきたいと思います」


ちらりと横目で幾見君に合図を送ると、私の隣のスクリーンにパワーポイントが映し出される。


「それでは前方スクリーンをご覧ください」


一斉に上がった視線に、私は少しだけホッとしながらスクリーンに映し出された概要を説明していく。


「はしご酒は、現段階ではワンデーチケット制を考えております。チケットをお買い上げいただいたお客様に、参加店で当社のドリンクを割引価格でご購入いただけるサービスにります。はしご酒なので、もちろんその日のうちなら何度でもご利用頂けます」


スクリーンを見る社員達の顔は真剣なもので、この企画に興味を持ってくれているのが手に取るように伝わってくる。


「今回の企画の要となっていくのはトーマビールを取り扱う飲食店の協賛です。既存の取引店は元より、この企画を基にこれまでお取引の無かった飲食店様にも当社の酒類飲料類を扱って頂けるように、営業の皆様にお願いいたします」


そう。今回の企画はトーマグループの商品を提供する居酒屋やレストランがどれくらい参加してくれるかが、キーポイントなのだ。


人気店や有名店の参加が多ければ多いほど、この企画は魅力的なものになる。

ここ集まる多くの営業部、彼らの力にそれがかかっているのだ。


ざっくりとした企画の内容を説明し、これから煮詰めていかなければならない事案もきちんと説明する。現場からの意見も参考にしながら決めていかなければならないことが多数ある。

いくつかの質疑応答をしながら、会議は二時間ほどで終了した。


会議室の片付けを大澤さんと幾見君にお願いして、私は会議室から出る。会議後の打ち合せの為、高柳さんに呼ばれていた。


高柳さんももちろん全体会議に参加していたので、会議の中身に関して知っている。会議中に出た質問や課題について、きっと山のような宿題がだされるのだろう。

会議前に聞いた事案のことも思い出され、はぁっとため息が出た。


ミーティングルームへ行くため、階段で降りようと廊下を曲がったところで目に入った人に、思わず足を止める。


「お疲れ」


壁に寄りかかる格好で立っていた彼が、組んでいた腕を解きこちらに手を上げた。


「……お疲れ様です」


矢崎さんはゆっくりとこちらに歩いてきた。


「すっかりキャリアウーマンが板についたな」


すぐ目の前まで来た矢崎さんに、私は体を一歩下げる。高柳さんよりは低いけれど、私よりも頭一つ分高い彼に、妙な圧迫感を覚えたのだ。

他人同士にしては近い距離間は、あの頃と変わらない。パーソナルスペースが小さいのかも。


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