第六章 元カレ襲来①
十月もあと少しで終わろうかとしている今日。台風で延期になった【TohmaBeer-Hopping】の全体会議がこれから行われる。
午後からの会議の為、私達本部チームは準備に追われていた。
「主任、テーブルとイスのセッティングが終わりました」
「じゃあ、大澤さんは総務さんに各席に資料とドリンクを置くのを手伝って貰ってください。幾見君はプロジェクタの設置をお願いするわね」
「了解です」
「了解しました」
会場セッティングを大澤さんと幾見君に任せた私は、会議の流れを確認するべく、手元の資料に視線を落とした。会議の司会進行は企画リーダーである私の仕事だ。
あと数時間後にはここに、これから半年以上の長期に渡って企画を成功させるために力を合わせていくメンバーが揃うのかと思うと、少し緊張してくる。
「青水」
呼ばれて振り向くと、会議室の入口に高柳さんが立っていた。
「ちょっといいか?」
「はい、なんでしょうか」
近付くと、階下のミーティングルームへと促された。
「忙しいのにすまないな」
パタンと扉が閉じると、彼は私に着席を促しながらそう言った。
「大丈夫です。滞りなく準備は進んでいますので」
「それは良かった」
「はい。ところで、何かありましたか?」
わざわざここに私を連れてきたということは、何かあったのだろう。
目の前の上司から言われることを、少し身構えて待つ。
「今回の企画だが、全国の主要都市での開催を、という声が上から上がっている」
「えっ!」
関東エリアを越え全国での開催となると、あちらのスタッフとも連携を取らなければならない。
今この時期にこれから新しく、となると一刻も早い対処が必要だろう。残された期間とこれからの段取りを考えただけで眩暈がしそうだ。
「今は『上からの意見』という段階だが、このまま行くと実際にやることになるだろう。この話はまだ他には漏れていないから、今日の会議では黙っておいていい。もしも企画担当者からそう言った案が出た場合は、『現段階では関東エリアのみの開催予定』だと言っておけばいい」
「……分かりました」
「会議直前にすまないな。大丈夫か?」
固まってしまった私を気遣うように覗きこんできた高柳さんに、「はい」と短く返事をするとミーティングルームを後にした。




