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第三章 嵐は突然に①


トーマビールはもともと『当麻麦酒(とうまびいる)醸造会社』として明治の終わりごろに立ち上げられた会社だ。


今年はちょうど創業百三十周年で、社名を変更して株式上場してから七十年という節目に当たる。


その周年祭としての特別企画が、これから大詰めを迎えるのが【TohmaBeer(トーマビア)-Hopping(ホッピング)】なのだ。


私たちのチームが中心となって進めており、グループ全社を挙げて準備している真っ最中だ。


中でもグループの主力商品であるビールを扱う私たちトーマビールには、売上予算の比重の多くが占められ、莫大なスポンサー料に見合う、いやそれ以上の売り上げ効果を求められている。


【TohmaBeer-Hopping】とは、【Bar(バー)Hopping(ホッピング)】すなわち『はしご酒』に(ちな)んだもので、大会期間中、東京を中心とした首都圏近郊のレストランや居酒屋で【Tohma】の提供するドリンクを“はしご”出来るというイベントだ。

ちなみに【Tohma】は全グループを合わせた総称で、グループ各社の商品を合わせることで、ビール以外にもワインや酎ハイ、ソフトドリンクなど幅広く提供することが出来る。


現段階では大まかな企画しか決まっておらず、これから参加店舗や参加方法などを細かく決めていくことになる。


発案したのは私だけど、思ったよりも大規模になってしまい、企画というよりは“プロジェクト”と呼んだ方がふさわしい予算まで頂いてしまった。

しかも、どうせならと、ビールや酎ハイ以外にもワインやソフトドリンクも、と欲張ったため、グループ全体を巻き込んだものとなったのだ。

そうなると我が社だけでは決められないことも多く、グループの橋渡し役として親会社の【Tohmaグループホールディングス】から高柳さんが統括マネージャーとしてやってくることになったのだろう。



「青水主任、グループ各社の担当者会議の調整はついているのか?」


「はい。今週金曜日の十三時からで調整済みです」


「都内でうちの商品を取り扱っている店舗の実績、過去三年間のデータが欲しい。今日中に」


「承知しました」


「それと、企画書の第二項にあった―――」


ミーティングルームとプレートの付いた小部屋で、高柳統括を交え、企画発案チームのメンバーとこれからの段取りを打ち合わせていく。


【TohmaBeer-Hopping】のメンバーは、私の他に大澤さんと幾見くんがいる。ちなみに私は一応この企画のリーダーを任された。この企画中での私たちの上司は、統括マネージャーである高柳さんだ。

これから企画を進めるにあたって、このチームには関東エリアの営業から数名と、グループ他社から数名が加わることになっている。


四人でのミーティング中、高柳統括から今後の課題や企画書の見直しなどを指摘される。彼の指摘は鋭くて容赦がない。

ピクリとも緩まない表情の彼に厳しい指摘を受けるのに、一週間経った今でも全然慣れることはなく、仕事中に彼に呼ばれると一瞬固まってしまう。


今日も変わらずその鋼鉄のような表情で私達に幾つもの課題を出し終えた彼は、風のようにミーティングルームを後にしたのだった。


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