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第二章 『はじめまして』をもう一度⑥


「私はいいと思うけどな」


「え?何が?」


「何がって、高柳さんだよ」


唐突な台詞に首を傾げた私に、まどかは間髪入れずにそう答える。


「お見合いで再会した上に仕事でも一緒になるなんて、やっぱり運命なんじゃない?告白してみたら?」


「ごほっ、~~っ、まどかっ!」


あまりにも突拍子もないまどかの思いつきに、私は口に入れたばかりのマロンパイを詰まらせそうになった。


「だって、相変わらずかっこいいんでしょ?高柳さん」


「…………」


まどかの問いかけに無言のまま、詰まりかけた喉にコーヒーを流す。

彼女とは大学は別々だったけれど、サークルのイベントの時にこっそりと“初恋の彼”を見せたことがある。遠目にでも分かるくらい彼のイケメンオーラはすごかった。


「大学の時もモテモテだったんでしょ?きっとゆっかちゃんの会社でも人気がすごいことになっちゃうんじゃない?他の子に取られる前に先手必勝よ、ゆっかちゃん!」


「先手必勝って……何度も言うけど、私は高柳さんとどうこうなろうなんて思ってないってば」


「えー」


「それに彼の人気はすでに『すごいことになっちゃって』るわよ?」


トーマビールにやってきてまだ一週間ほどの彼だが、すでに女性たちの噂の的だ。休憩室や給湯室での会話に彼が出て来ない日は無い。


「親会社から来た独身エリートイケメンだもの。先輩後輩関係なく、みんなすごい意気込みよ?」


「ゆっかちゃん…そんなのんきなこと言って……」


「だって私には関係ないから。むしろ関係があると思われたら周りからどんな目にあうか……」


考えただけでもそら恐ろしい。

女同士の熾烈な争いに巻き込まれるなんてまっぴらごめん。私は波風立てずに定年まで今の会社に勤めていたい。私の望みはそれ一点だ。



「そもそも彼には恋人くらいいるでしょ?イケメンエリート様だもの。それに向こうからも『君に興味はない』ってハッキリ言われたし」


私が話している間中、目の前で聞いているまどかの顔から、不満がありありと伝わってくる。


「でも恋人がいたら“お見合い”には来ないんじゃないの?」


「ああ。彼も知らなかったんだって、呼ばれたのが“お見合い”の席だって。私とおんなじ」


サラリと言い放った私に、まどかは深い溜息をついた。


「……分かった。でも、何かあったらいつでも相談にのるからね。ちゃんと言ってよ?」


「うん、もちろん。そのときは一番にまどかに言うから」


「約束よ?守ると誓いますか?」


「はい、誓います」


まるで結婚式の誓いの言葉のように真面目に答える。

三秒ほど真剣な瞳を交し合ったあと、同時に「ぷっ」と吹き出した。


「心配してくれてありがと、まどか。話しを聞いてもらってずいぶん落ち着いたわ。明日からは平常心で仕事にまい進できそうよ」


にっこり微笑んだ私に、まどかは微妙な顔を浮かべた。


それからもまどかとのお喋りは尽きることなく、彼女の愛息である瑛太くんの話や佐知子さん夫婦の話、話題の映画の話など、話題があちこちに飛びつつも盛り上がり、あっという間に時間は過ぎていった。


そうして夕方くらいに、瑛太くんを連れて車で迎えにきた結城君と一緒に、まどかは帰って行った。







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