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第二話【闘技場】

ギャンブル場の構造は、その名の通り、主にポーカーやスロットや、ありきたりな設備が各地に点在している。その大きさは、この街の中で一番派手な場所だ。スラム街があるものだから、富裕層が居住しているエリア、貧民層が居住しているエリア、その区分けは差別と言っても良い程に城壁にも似た区分けがされている。富裕層のエリアは商店街は栄えているし、高級レストランと銘打ってもいいレベルの建物が立ち並んでいる。その建物通しが、裏路地が無いほど、密集している。それに引き換え、貧民街には建物がポツンポツンと建ち並んでいる位だ。ところかしこに裏路地は合って、その合間を縫ってアパートが建っている位には。トウマはもう立ち退きをされたから、その貧民街にも住めはしないが、本来なら彼は富裕層のエリアに住める位のお金は持ち合わせている筈だし、1日に金貨を数十枚稼ぐ実績を事実として叩き出している。それなのに。彼が貧民街にすら住めない理由は、このギャンブル場の常連だからだ。それも、毎日。その日の資金を依頼報酬で稼ぎ、その日のうちに大半を使い損じる。彼は、ギャンブル中毒のレベルを超え、生き甲斐となっていた。それは理由は彼の一族の血がそうさせているのか、その本人であるトウマに聞かないと分からない。だが、彼は答えない。その会話よりも、ギャンブルを優先する。言葉のキャッチボールが彼の中に存在しないのかも、しれない。


彼はルーレット場や、ブラックジャック場には、目もくれない。その広場を通り過ぎて、闘技場の受付へと早足で向かう。道中、様々な人が彼に声をかける。が、彼は無視をし続ける。


「お! やっぱり! トウマがきた〜!!! 賭けてみようかな…」

「おーい! トウマー! 今日の調子はどうだ! 首捻ったりしてねぇだろうなー!」

「きゃー! いつにも増して、イケメンじゃない! あの時の顔が好きなのよね! …他の時はブッサイクだけど」

「トウマさ〜ん! ねぇ〜! 今日買ったら、私と遊ばない? そのままだったら、最後まで付き合うけどな〜!」

「うわ! ビッチが何言ってるのよ! トーマはね。そんな女には吐き気を覚えるくらい、趣味じゃないんだから! ね〜え〜? 勝ったら〜。ご飯に行かな〜い? その後、少し遊びましょ?」


このギャンブル場で彼を知らない者はいないのが良く分かる。全員が彼を見つけると、呼び掛け、応援をし、夜の遊びへと誘おうとする者もいる。昼間の彼はどこへいったんだ。常に彼の顔には、自分の欲求を果たそうとした、勝ち誇った顔を浮かべて急いでいる。



【ギャンブル場、闘技場受付】


トウマは受付へと到着し、受付嬢へと声をかける。その声はテンションが天高くへと突き抜けていく高揚感で満ち溢れていた。その声を聞いても、やはり慣れているのだ、受付嬢は笑声で迎え入れいる。


「表の受付嬢から聞いたぜ! 闘技場が開催されるってな! 俺は出られるか!? 出られるよな!?」

「お話は伺っておりますよ〜! 当支配人からは、是非とも、参加をしてほしいとお言葉を頂いております」

「是非とも!? それってつまり、賭け甲斐があるってことでいいな?」

「もちろんです! トウマ君が良ければ、既にお相手が決まっていますよ!」

「どいつだ! 知ってる奴じゃぁ、ねぇよな!?」

「それに対しても、もちろんです! なんでも、外の惑星から来た、筋肉隆々の化け物って聞いていますよ?」

「っ。くぅぅぅぅぅううううう! なんっだよ、それ! さいっこうのギャンブルじゃねぇか!!!」


トウマの声が受付のホール全体に響き渡る。周りの人間も足を止め、トウマの発言と、受付嬢の言葉に耳を傾けている。何やら、ヒソヒソ話をしている。…ここはギャンブル場だ。ヒソヒソ話といえば、オッズを話し合っているのだろう。


この闘技場におけるオッズは事前には公開されない。両者が入場して、そしてアナウンサーの開催のアナウンスが流れてから公開されるのだ。そのタイミングでは、券を購入することはできない。ただ、対戦者の名前とその人の画像データだけ公表される。それを見て、こいつなら勝つだろうと予想を立てて賭ける。それ故、結果を見通す事は難しい。


だが、トウマはここの常連。彼の実力を加味して、周りは静かな声で議論する。その議論は受付場が言った【化け物】と発言した時点で、オッズが割れそうな雰囲気を醸し出していた。トウマが負ける可能性がありそうだと。


そんなのトウマには関係ない。彼はギャンブルをしたいのだ。賭け事をしたいのだ。だから、闘技場でなくてもルーレットやポーカー等でも彼の欲求を満たしてくれる。しかし、『闘技場』となっては話は別だ。


彼は、自身の命をも、ベットしたいのだ。お金でなくでも、それは彼にとっては違いはない。いや、命の方が、彼にとっては賭け甲斐のあるギャンブルなのだろう。


「嬢! 早く参加申込書をくれ! 誓約書もな!!!」

「もう用意していますよ! こちらにサインを」


トウマは捲し立てるも、受付嬢は彼の参加を確信していて、机の下に用紙を準備していた。トウマは誓約書の中身を確認せず、汚い字で自分の名前を書いた。そして、受付嬢へと提出する。それを受付嬢は精査して、問題ないと答えた。


「中身を確認させて頂きました。これをもって受理といたします。それにしても、躊躇いのないですね! 死んでも構わないって誓約書にサインするなんて」

「いつものことだ! さぁ! 待機室はいつものところか!?」

「あ、今回は反対側です! お相手さんが初めましてで、…実はオッズが高いのもあって」

「そうかぁ! それじゃ、この金貨を俺にベットしてくれ!」


トウマは懐から依頼報酬の入った金貨50枚を受付嬢へと渡す。それも、受付嬢は快く受理した。


「わかりました! お預かりします! それでも、オッズはあんまり変わりません」


受付場がニヤニヤしている。彼女は、どちらが勝つと思って、その表情を浮かべているのか。


トウマは金貨の入った袋を渡し終わったら、またも早足で待機室へと向かった。周りの声援や、陰口も何も気にすることなく、本能の赴くままに。



【闘技場】


「レディース。アンド、ジェントルメン! 今回はこのご晴天で猛暑の中、ご来場頂き、誠にありがとうございます! 只今より、闘技場第三戦目を開催させて頂きます! 今回は私、ジャンが皆様に興奮して頂けるよう! 実況をさせて頂きたいと思います! この実況席から、皆様の輝いた眼差しが一望できております! それも当然! この3戦目は、私も含めて、皆様が興奮してやまないカードが出揃っているからでしょう! 長い話は止めといたしましょう。早く! このカードがぶつかり合う対決を観戦したい! それでは、北門から登場いたします! そこから現れるのはー!! 惑星ポリガからの刺客! なんでも、暴れに暴れ回り、惑星追放を受けたとの事! これは、我らのガリアからしたら、願ってもない人材! 準備が出来たでしょうかー!? 素晴らしい! 彼のボルテージは最高潮のようです! それでは、ご入場して頂きましょう! その名は! ガンマァァァァァ!! パニッシャァァァァァァ!!!」


客席から大歓声が鳴り響いてたのが、闘技者の名前を実況者が名乗りを上げると、更に歓声が激しさを増した。縦に長い北門が外開きで解錠される。そこから出てきたのは、全長2mを超えている、腕も、胸も、腹も、太ももも、首筋も、全てが筋肉によって太く鍛え上げられていた、肌が黒い怪物が現れた。その姿を見た観客は感嘆の息を飲むも、歓声は鳴り止まなかった。


「素晴らしいとは表現できません! 美しいとも表現できません! 人間とも表現できそうにありません! そう! 彼は戦いの神に愛され、戦う為にその身を神から授けてられた、真の戦士だと! 彼の存在自体、人知を遥かに超えています!!!」


実況者のジャンがガンマパニッシャーから受けた感想を実況する。そして、次に南門の参加者をこの場へと召喚しようと進めた。その実況はしっとりとしたものだった。


「続きまして、皆さん、ご存知でしょう。敢えて、何も申しません。彼は、私は勝つのを信じておりますから。南門から登場いたします! 彼は、彼が、彼である為に。全てのこの一瞬に賭けます。その先に何があるのか。私は見てみたい! 準備はできましたでしょうか! やはり、彼に待ったなしはありませんでした。では! ご入場して頂きましょう! 【ギャンブル喰らわれ】トウマァァァァァァァ!! プラチスぅゥゥゥゥゥゥ!!!」


南門が解錠され開き、トウマは闘技場の中へと歩を進める。歓声はガンマパニッシャーの時よりも、少し控えめな気がする。だが、彼はその歓声は聞いてはいない。目の前にいる、化け物を見て満面の笑顔を浮かべていた。


「いいねぇ、いいねぇ、いいなぁ!!! おい!!! 予想よりも圧倒的じゃねぇか!!! 隠し事はなしだ。わかってるなぁ!!! お前!!!」


ガンマパニッシャーはトウマの言葉に応えたのかわからないが、人から出せるとは思えない咆哮をトウマへと発した。その風圧にトウマの髪と服が靡く。トウマは満足した。これは、賭け甲斐のある相手だと。


トウマの右肩にある丸いプレートが肩から外れて、空中へと浮遊した。実況者が解説をしようと大声を上げる。


「来ましたぁ!!! トウマ選手は最初からエンジン全開で戦おうとしているようです! トウマ選手のお家から代々伝わる、あの『変身』が早々に見れるようです! 瞬きをしないように、ご注意下さい!!!」


「いくぜぇ…来いよぉ…地塊王ちかいおう!」


トウマの呼びかけに丸いプレートの金属が反応して、その大きさが見る見るうちに大きくなっていく。そして、そのプレートが砕け、そして色が銀色だった物が赤色へと変色し、その金属らは、両腕、両足、胴体、頭、各パーツへと変形していく。そのパーツが変形を終えたら、それらはトウマへと激突して負傷してもおかしくない速度で向かっていく。


まずは足から。トウマは慣れた様に後方へとジャンプをして、両脚が前方へと向くように半宙返りとなる。そのお陰か、両足のパーツはトウマの脚へと装着される。それを彼は感覚的に認識し、半宙返りから宙返りして、足を地面へとつけて着地した。


次は両腕。パーツが飛んでくる手前、両腕を後方へと仰反るようにして衝撃を緩和させる様にした。そして、問題なく両腕のパーツは装着された。


次に胴体。これは彼自身の案がないのだろう。向かってくるパーツを避けるのでもなく、衝撃を何かの手段で相殺するでもなく、ただ受け入れた。表情が悲痛で歪めるが、これで胴体は装着できた。


次に頭。あっさりしたもので、パーツが飛んできたら片手でキャッチをし、頭部へと装着させた。


そうして、地塊王という武装スーツを見にまとったトウマ。その武装スーツは全身が赤色で強調されているものの、そこらじゅうに金色の紋様が浮かんでおり、美しくもあるが野生味を帯びている。まるで、獅子の様な格好をしていた。


「さぁ、お前さぁ。すぐ終わるんじゃねぇぞ!!! 始まるんだからさぁ! ギャンブルの醍醐味が!!!」

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