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第三十九話  嘘をつく人

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 ベルナール王子から逃れる為に急遽結婚してしまった私なのだけれど、結婚当初は家事を分担しましょうという話だったの。私が掃除と洗濯係で、夫であるフィルが食料調達とお料理係だったのだけれど、神殿騎士である夫が神殿に行くことが多くなった為、家事の分担は即座に崩壊することになったのよ。


「最初はな、お前を愛しているから家事はいくらでもやってやるとか、お前と結婚出来るなら家のことは何でもやってやるとか、調子の良いことに言い出す男がいるんだが・・」

 歯の抜けた口をくちゃくちゃと動かしていたロッテばあさんは、

「男の言う言葉に真実なんてものはねえ、いつだって調子が良いことを言って煙に巻いていくもんなのよ」

 と、言い出した。


「男の言う言葉に真実なんてものはねえ・・」

 すっごい名言よね、流石は百戦錬磨のおばあさまだわ!言葉の重みが凄すぎる!

 本当にそうよ〜!真実なんてものはないのは当たり前だったんだわ〜!


 申し訳ないことに、私なんかと結婚することになってしまったフィルベルトなのだけれど、彼はいつだって怪我をして帰ってくるの。世間知らずの私は獣を狩っている際に、暴れる獣を押さえつけたりするので怪我をするのだと思っていたのだけれど、全然!そんなことなかったのよ!


 野菜の皮剥きを練習していると結構な回数、指先にナイフを当ててしまうの。自分の傷の手当てをするようになって遂に理解したわ。フィルベルトの傷は刃物でつけた傷だってことにようやっと気が付いたのよ。


 後から問いただしたところ、私が一生懸命、治療をする姿を見たかったから自分で傷を付けていたのですって。私を傷の処置をする専門家にでもするつもりだったのかしら?私が普段から傷の手当てにどれだけのストレスを感じているかなんて考えもしないのよ?これについてはきっちりと叱ったので、以降、傷を負って帰ってくることは無くなったけれど、彼が嘘をついたということを見抜いた初めての出来事がこれね。


 あと、彼は時々、やたらと血を浴びた状態で帰ってくるのだけれど、鹿や猪を捕まえた時の血抜きで失敗したからだと言うのよ。世間知らずの私は獣の血抜きなんてどうやるか分からないし、失敗するとそうなるんだ〜程度にしか考えていなかったのだけれど、ハイ、これも嘘。いくら血抜きで失敗してもあんな風にはならないとロッテばあさんの孫のニロが教えてくれたのよ。


 男は嘘を吐くものだというけれど、本当みたいね。これからどんな嘘を吐いていくのかしらって思って待ち構えていたのだけれど、そのうちに夫が神殿に通わなくちゃいけないってことになってしまったの。


 お肉とか食材とかはロッテばあさんが提供してくれることになったんだけど、仕事だから仕方がないとはいえ、家事は全て私の仕事になってしまったの。ハアッ、最初の約束事からして反故されてしまったわ!ロッテばあさん一家の手助けがなかったらどうなっていたか分からないわよね!


 私をいつでも助けてくれるロッテばあさんなのだけれど、彼女は常々、

「結婚に理想を抱いたらいけねえよ」

 と、言うの。本当に、結婚に対して理想って抱いてはいけないものだと私も思うわ!


 森の中に住む人々は神殿まで働きに出ていたりするのだけど、最近、ロッテばあさんの娘さんがとっても興味深いお話をしてくれるの。その話を聞いて、本当の本当に、私、とってもとっても驚いてしまいましたわ!


「まあ!まあ!まあ!それじゃあ、フィルは神殿に行って騎士としての仕事をしているというよりかは、時間があればヘンリエッタお姉様のところまで遊びに行って、一緒に過ごしているというの?」


「ええ、ええ、そうみたいなんですよ!仲が良い神官見習いが巫女候補様たちの居住区を出入りしているのだけれど、最近ではみんな、このことを噂していると言っていて」

「んまあ!噂にもなっているほどフィルはお姉様のところへ行っているのね!」



 でました〜、でましたわ〜。過去に私と仲が良くなる使用人もそれなりの数、居たのですがその使用人の全てが姉に傾倒して、最後には私の存在なんて忘れるようになってしまうのです。とにかく私の姉は、女神の化身と呼ばれるほど美しい人なので、男であろうが女であろうが、魅了されてしまうのよね!


「んだども、巫女様はベルナール殿下の花嫁となるべき人だというのに、平民身分の男を出入りさせても何の問題にもならねえのか?」

 ロッテばあさんの疑問に、娘さんは笑顔で答えておりましたとも。


「噂によると、どうやら国王陛下が神殿に参拝にいらっしゃった時に、ほとんど巫女状態のヘンリエッタ様がご案内をして差し上げて、その際にその・・どうやら深い仲になったみたいなのよね!」

「はあ?国王陛下とですか?」

「驚いちゃうけど、以前からコルネリス王は気に入った女性にはちょろっと手を出すようなところがあるのよ。ヘンリエッタ様はお美しい方ですし、陛下の食指が動いたということになるのでしょう」


 え〜!ありえない〜!


「姉はベルナール王子と深い間柄だと思っていたのですが?」

「息子が手を付けた女性、しかも巫女の最有力候補に手を出しちゃうなんてどうなんだろうとも思うのだけれど、こういうことは、意外に良くあることなのよ」


 そんな馬鹿な、破廉恥すぎる話ではないの!


「大陸の制度を王国に取り入れた五代前の王まではまだマシだったとされていたエレスヘデン王国も、その子や孫の代までいきゃあその優秀さも薄れていき、玄孫までいけばそりゃあもう見る影もなくなるって言うけえなあ」

「おばあさま!それは不敬罪で捕まってしまう奴ですわよ!」


 歯に衣着せぬロッテばあさんのことを私は愛しているけれど、時々、言動が危な過ぎるのよね。


「アン様のお姉様は王子だけでなく国王陛下も転がして、最近では妹の夫である狂人まで手に入れたということになりますでしょう?みんなが噂して、噂して、大変なことになっているんです!」


「その狂人とは、私の大変嘘つきな夫のことを言っているのですよね?」


 あっ、みたいな顔をしていますけども、ロッテばあさん親子は別に何も悪いことは言っていませんのよ?人には色々とあだ名というものがありますものね。私も常々『ハズレくじ』『根暗』『巫女じゃない方』『存在感ゼロ』などと言われておりましたが、フィルは『狂人』と呼ばれているのですね?知りませんでした。


「フィルが姉に近づくのは理由あってのことですので、そこをとやかく言うつもりはないのです」


 なにしろ、フィルベルトは家族を死なせる原因となった王家に対して復讐を誓っているような男(推測の域ではありますが)ですし、元々、ベルナール王子に近付くために私の専属護衛についたような人ですから。


 森に引っ込んでしまった私では利用価値ゼロではありますが、ベルナール王子のほぼ婚約者みたいな姉の方が利用価値がありますもの。最近、帰りが遅い日が多いなとは思っておりましたが、彼は彼なりに、自分の役目というものを思い出したのかもしれませんね。


「それにしても、よく分からないのですが・・」

 フィルベルトは家族の復讐のために王家へ近づきたいはずなのに、

「何で彼は私の姉と親密な関係になっているのでしょうか?」

 そんなことをしていたら、ほぼ婚約者であるベルナール王子に嫌われるでしょうし、下手したら手打ちにされてもおかしくないですもの。姉と一緒に居たら王子と遭遇する率は高くなるでしょうけれど、親の復讐に利用できるのかどうなのか・・


「やっぱり男はお顔が美しい女にはめっぽう弱いということじゃ」

 ロッテばあさんの言葉に、思わず大きなため息を吐き出してしまいました。

「確かに・・男の方はああいった美人が大好きだと思います!」


 まあ、仕方がないですわよね。

 男の人は美人が好きですもの。


「おばあさま、明日、神殿まで付き合ってくださるかしら?」

「おお、なんぞ用でも思いついたか?」

「大神官様のところへ行ってこようと思って」

「アン様、何で大神官様のところへ行くのでしょう?」

「だって、離婚申請書を貰ってこなくっちゃいけないもの」


 出生届も結婚届も離婚届も死亡届も、ぜんぶ、ぜーんぶ、神殿の管轄で執り行われているものですものね!


「え?離婚?」

「誰と離婚?」

「そりゃフィルベルトと離婚するに決まっているではないですか!」


 勢いで結婚しただけですもの、勢いで離婚をしても何の問題もないでしょう。


過去編となりまして、裏切りとか、策謀とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でいますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

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