表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/85

第三十八話  天罰の検証

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 ベルナール王子の側近であるブラム・ベイエルは、恋人を見下ろしながら物思いに浸っていたのだが、

「どうしますか?今、足を切断しなければ腐肉の影響が全身に回ってしまうことになるのですが?」

 と、医師から言われてハッと我に返ったのだった。


 王子の側近として働くブラムには市井に囲っている平民の女が居たのだが、外を歩いている時に石に躓いて転んでしまっただけなのに、足首がポキリと折れてしまったのだ。ベルナール王子に命じられたブラムがアンシェリークを殺害するための毒を用意して、彼女の母であるシャリエール伯爵夫人の元へと届くように手配をしたところ、ブラムの恋人は足の骨をポキリと折った。


 アンシェリークを殺すために毒入りのクッキーを作った母親は、地下牢に入れられるとあっという間に肉が腐り落ちたと話に聞いたが、ブラムの恋人も同じように骨折部分の周囲が壊死を起こしているため、今すぐ切断しなければならない状態になっている。


「先生、彼女の足の切断をお願いします」

 人間の肉は一度腐り始めると、あっという間に全身に広がるというのは知られた話である。彼女の足の腐臭から判断するに、今すぐ切断しなければ命に関わることになるだろう。


 ブラムがベルナール王子の側近になったのは、ブラムの母が側妃の従姉妹だったから。巫女アルベルティナを毒殺した側妃は自分の周囲の人間には神経質なまでに気を遣い、親族で固めていたのだが、もしかしたら巫女アルベルティナを殺した際にも何かしら祟り的なことが起こったのかもしれない。


 女神リールは自分の加護を与えた巫女を遣わすようなことをするのだが、加護を与えられた巫女を傷つけるようなことをすれば、何かしら天罰が降るようなことをするらしい。


 ただし、中央神殿と王宮の中に居る分には女神の天罰が降らない。天罰を受けるべき人間に天罰が降らないと、その人が大事に思う人間が代わりに天罰を受けることになるようだった。


 アンシェリークを虐めていたヘンリエッタやコルネリア嬢に天罰が降ることはなく、代わりにヘンリエッタの母やコルネリアの祖母が足を骨折することになったのだ。それと同じ原理で、王子の尻拭いのために王宮に引きこもり状態だったブラムの代わりに恋人の元へ天罰が降ることになったのだろう。


 恋人の足の処置をしてくれる医師と、恋人の面倒をみるために雇っている老婆にそれなりの金額を渡したブラムはそのままの足で中央神殿へと向かうと、待ち構えていた様子の上級神官レオンがブラムを出迎えたのだった。


 女神リールを祀る神殿は27ある全ての島に設けられているのだが、アルンヘム本島にある中央神殿が女神崇拝の総本山となり、ここには大神官と共に七人の上級神官が女神の為に仕えていることになるのだが、

「君の恋人はどれくらい症状が悪化した?」

 上級神官であるレオンはブラムを部屋に招き入れるなり問いかけて来た為、思わずブラムは大きなため息を吐き出した。


「私の恋人は足を切断しないとならないようです。アンシェリーク嬢は姉のヘンリエッタ様が女神から加護を与えられた巫女だから、その妹にもおまけ程度に女神の加護や庇護があるようだと言っていたみたいですが、実際問題、アンシェリーク嬢に危害を加えようとする者やその関係者たちが足の骨を折っているわけですよね?」


 シャリエール伯爵家では多くの人間が足の骨を折っているのだが、それを偶然で片付けるのは難しい。


「それで、レオン様の方は上手くやれたのですか?」

「ああ、最近ではヘンリエッタ様に恨みを持つ貴族も多かったので、仕掛けるのは簡単だったのだが・・」


 アンシェリークに害意を持つ人間は軒並み足の骨を折っていったのだが、今までヘンリエッタに害意を持つ人間が居なかったので、ヘンリエッタが関わっても足の骨が折れるのかどうかが分からなかったのだ。


「ヘルペン家の当主がヘンリエッタ嬢に貢ぎ過ぎて家が大きく傾くことになったので、恨みを抱いたディアンタ嬢が毒物を入れたチョコレートを用意したのだよ。毒物といっても死ぬようなものではなく、一日中、腹痛で大変なことになるようなものなのだが、実際にそれを食べてヘンリエッタ嬢が苦しんでもディアンタ嬢は足の骨を折ってはいない」


「令嬢は大丈夫でも、他の誰かが骨折をしているかもしれないですよね?」

「そこのところは十分に調査をしたが、誰も足の骨は折っていない。すでに腹痛を起こして十日が経っているので、大丈夫だと思う」


「家が大きく傾いて破産寸前にまで追い込まれているというに腹痛を起こすだけのチョコレートを用意するとは、ディアンタ嬢は非常に人が良い人なのですね」


「その他にも恋人がヘンリエッタ嬢に夢中になっていることを恨み思った修道女が、祭殿の間に移動中のヘンリエッタ嬢の頭上からバケツの水をかけたのだが、その修道女も今のところ足の骨は折っていない」


「神殿にいると骨折が起こらず、外の人間に被害が起こることが多いじゃないですか?」

「修道女の親族に骨折した者はいない」

「とすると、やっぱりヘンリエッタ嬢は巫女ではないということですか?」

「検証例が少ないからまだ何とも言えないが、やっぱりアンシェリーク嬢が本物の巫女なのかもしれないな」

 

 エトとヘイスという二人の神官から始まり、カウペルス家とダンメルス家という二つの貴族家の没落まで女神の天罰と言い切ることは出来ないが、足の骨を折った人間には必ずと言って良いほどアンシェリーク嬢が関わっているのだ。


 今は神殿の森に移動をして大神官ヘルマニュスの庇護下に入っているような状態だが、本人が辞退をしたとしても本物の巫女はシャリエール伯爵家の次女、アンシェリークということになるのだろう。


「何よりもプライドが高い殿下がアンシェリーク嬢にプロポーズを断られまして、今現在、彼女を亡き者にしようと暗殺者を送り続けているのですが、そのことで天罰は起こっていないようですが」

「送り込まれた刺客は全滅しているのだろう?」

「まあ、そうなのですが・・」


 送り込んだ兵士が全滅した為、ベルナール王子の立場はかなり危うい状況となっているのは間違いない。国王からも直々に叱責を受けたと話に聞いてはいるが、そもそもこの国の王は自分の息子に死ぬほど甘いのだ。


「自分の立場が微妙になったのを敏感に察知したヘンリエッタ嬢は国王陛下の誘惑に成功をしたようですが、これで本物の巫女ではないということが公となれば、ヘンリエッタ嬢はどうするつもりなのでしょうね?」


 幼い時から飛び抜けた美貌を持つヘンリエッタは物心ついた時から自分こそが巫女なのだと思い込んでいるようなところがある。ここで、実は今まで虐めてきた妹の方こそが巫女なのだと神殿が宣言をすれば、彼女はどういった手で巻き返しを図るのだろうか?


「アンシェリーク嬢こそが巫女であると宣言するつもりなのですか?」

 ブラムの質問に上級神官であるレオンは皮肉な笑みを浮かべながら言い出した。


「巫女はヘンリエッタ嬢であるし、ヘンリエッタ嬢はベルナール王子やコルネリス王だけでなく、狂人フィルベルトまで手の上で転がしているようなのだよ?」


 実際問題、アンシェリークの夫となったフィルベルトは最近、頻回にヘンリエッタの元を訪れているのだ。


「ヘンリエッタはなかなか使えるし、最後まで利用し続けようと思っているよ」

「それでは、一連の天罰については本国の方へ報告をするのですか?」

 ブラムの問いに上級神官レオンは首を横に振りながら言い出した。


「女神の天罰は足の骨をポキポキ折る程度のことなのだから、別に報告する必要もないだろう」

「エレスヘデンの防衛線についても、正確な情報を伝えておりますが」

「そうでなければメヘレン王国がここを占領するのに苦労することになるだろう?」


 レオンは大きなため息を吐き出しながら言い出した。

「祖国の命令で何十年と潜伏し続けてきたが、バカなエレスヘデンの王と何もかも足りない王子のお陰で侵攻は簡単に行われるだろう」


 大陸では女神の怒りや呪いというものが恐れられているのだが、精々が足の骨を折るという程度のものなのだ。アンシェリークを戦いに巻き込むようなことをしなければ、大きな障害にはならないだろう。


過去編となりまして、裏切りとか、策謀とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でいますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

☆☆☆☆☆ いいね 感想 ブックマーク登録

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ