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第三十話  私の家族

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 シャリエール伯爵家は昔から敬虔な信者だった為、祭日には必ず家族揃って神殿に向かっていた。一応、私もシャリエール家の一員だったので参拝には行くことになっていたのよ。


 ただし、私が家族と一緒の馬車に乗ると姉のヘンリエッタが大暴れをするため、私だけ別の馬車に乗っていた。敬虔な信者だから私も連れて行くけど、私のことなんか見向きもしていなかったわね。


 神殿でも家族から放置されてひとりぼっちでいることが多かったため、そんな私に目をつける人間はそれなりにいたわ。ひとりぼっちの私を誘拐するのは簡単なことだものね。誘拐犯は身代金目的で私を誘拐したわけだけれど、その時も姉のヘンリエッタが大騒ぎをしたみたいで、両親は姉の方にかかりきり。


 そうこうしている間に、お金を用意することも、誘拐されたということを誰かに相談することも忘れてしまったみたいなの。


 結果、伯爵家は一切の交渉に応じることがないと判断された為、とりあえず私の体の一部を切断して伯爵邸まで送ってみようという話になったのよ。その時、私はまだ四歳だったのだけれど、男たちに体を抑え付けられて、指にナイフを当てられた。


「指を一本ずつ送っていけば流石にシャリエールも黙認は出来ないだろう?」


 毎日、毎日、子供の指が切断されて送られてきたら、貴族としての家門も女神様を信奉する信者としての格も損ねることになってしまうものね。流石にそうなったらお金を用意するだろうと考えたみたいなの。


 自分の指の三倍以上の幅があるナイフを押し付けられて、この時ほど両親に対して助けを求めたことはなかったわね。だって、神殿でも神官様が親は子供を慈しみ愛するものだと言っていたのだもの。親って、子供が危ない時には絶対に助けに来てくれるものでしょう?


 だけど、その時、誰も私を助けになんて来てくれなかったの。

 誰も助けに来てはくれなかったけど、野犬が一匹、開けっぱなしの扉から何故だか飛び込んで来て大暴れをし始めたの。


 エレスヘデンでは野良犬や野良猫が多いのだけれど、誘拐犯が潜伏している貧民街なんかはそこら中に野良犬が歩いているような状態なのよ。餌でもあるのかと思ったのか、気に食わない犬が居るとでも思ったのか、ワンワン吠えながら犬が走り回った所為で、私の指を切断しようとしていたナイフは、クルクル回転しながら誘拐犯の足にブスリと刺さってしまったの。


 野良犬は一匹だけでなく三匹も四匹も駆け込んで暴れ回り始めたため、私はその騒動の隙を突く形で逃げ出したのだけれど、不思議と誘拐犯は逃げ出した私を追いかけては来なかった。


 そんな訳で私は人に道を尋ねながらシャリエール伯爵家の離れ家にある自分の部屋に戻ったの。私が戻っていることに気が付いた使用人は流石に驚いて、私を抱えてお父様やお母様の前まで連れて行ったのだけれど、

「何故、アンシェリークがここに居るんだ?本邸には連れて来るなと言っておいたではないか!」

 と、怒られちゃったのよね。


 その時もお姉様が新しいドレスが気に食わないということで大騒ぎをしていたのだけれど、お父様やお母様の頭の中には私の存在なんてものはないのよ。一応、執事は私が誘拐されたということを覚えていたので、何処に囚われていたのか尋ねて来たのだけれど、その後、誘拐犯たちがどうなったのかなんて知りもしないわ。


 我が家は宝石で儲けているし、女神様を信奉する敬虔な信者だった為、私が神殿に参拝に行くと、伯爵が身代金を払って娘を解放することに成功したのだろうって裏社会の人間たちは考えるようになってしまったの。


 その後、四回ほど誘拐されることになったのだけれど、その度に誰も助けに来てくれなかったわ。ただ、ただ、いつでも何かしらのアクシデントが起こって逃げ出すことに成功したし、無事に離れの自分の部屋まで帰ることが出来たのよ。


 私の家族は誰もが私のことなんか気にやしないのだけれど、流石に次女が誘拐される度に放置して、結局自力で帰って来ているということが外にまで漏れたら、体裁が悪いにも程があると思ったみたい。そんなわけで、私だけは神殿の参拝に行かなくても良いというように執事が手配をしてくれたの。


 驚くべきことに、私が神殿に行かないことをお姉様が拒否し始めたのよ。同じ馬車に乗るのも嫌で、神殿で合流したって喋りかけもしない人なのだけれど、お友達と遠くから私を眺めて、変わり者で困った妹、迷惑をかける大変手がかかる妹だと言っていたいみたい。まだまだ妹で苦労をする哀れな姉を演じ続けたかったみたいなのよね。


 お姉様は神殿に行かないだなんで不信心だと大騒ぎしたんだけど、家としての体裁を考えた両親が私を神殿に連れて行くのは断固拒否の構えを見せるようになったところで、

「アンシェリークは何故、一人だけ離れで暮らしているの?家族揃って暮らさないなんて可哀想よ!一緒に暮らしてあげましょう!」

 と、頭が沸いたことを言い出したってわけ。ここから私の悲惨な生活が始まったのは言うまでもないわよね。


 私にとって両親とは、私の存在をひたすら無視する不快な存在であるし、姉に至っては陰湿で意地悪で攻撃的で、自分の思い通りにならないと大騒ぎをするモンスターみたいなものなのよ。


 家族とは疎ましい嫌悪の対象で、出来れば生きたまま地面に埋めてこの世から隔絶したい存在なのだけれど、普通ってそうじゃないのよね。神官様曰く、家族とはお互いを慈しみあって支え合う存在で、相手の痛みを自分の痛みのように感じる、お互いを思い合う存在だというのだけれど、ちょっと私には良くわからないわ。


「あっ!」

「アン大丈夫?」

「ええ、大丈夫、大丈夫よ」

「大丈夫じゃないよ、見せてみて、血が出ているじゃないか」

「うう〜ん」


 ジャガイモの皮を剥くって意外なほどに難しいのよ。

 つるっと滑って自分の親指をナイフで傷つけてしまったわ。


「アン、こっちに来て、まずは水で洗い流さないと」


 料理係のフィルに習って野菜の皮剥きを実践しているのだけれど、これが想像以上に難しい。水を張った桶で私の傷口を丁寧に洗ったフィルは、きれいに洗った布でぎゅっと傷口を押さえつけてくれるの。


 お料理初心者の私は、傷の処置も初心者なのよ。


 最近、外から帰って来るフィルベルトは怪我をしていることが多いのだけど、妻として傷の消毒をして包帯を巻いてあげているの。包帯って思った以上に巻くのが難しくて、きっちり巻けていないからヨレヨレだし、傷口から滲み出る血で当て布に血が広がってしまうの。


 私がきっちり包帯を巻けたら良かったのだけれど、自分の傷の処置も出来なくて丸任せのような状態なのよ。ああ、情けないったらありゃしないし、フィルの傷を見ているだけで涙が出て来てしまうわ。


「アン、どうしたの?泣くほど痛かったんだろう?だったら料理は俺がやるから大丈夫なのに」

「指を切った痛みで泣いているんじゃないの」

「なら何故?」

「だって、指をちょっと切っただけでこれだけ痛いのに、フィルはどれだけ痛いんだろうと思ったら、思わず涙が出て来ちゃったのよ」


 王子様から逃れるために慌てて逃げ出すようにして結婚した私たちだけれど、私が洗濯と掃除係で、フィルベルトが料理と狩りの係りなの。猪を捕まえてくるフィルは血だらけで帰って来ることが多いのよ。


 初心者の私には猪をどうやって捕まえるのか良く分からないのだけれど、血だらけになるほどだから、猪って本当に獰猛な生き物なのよね。


「フィル、もう猪は狩ってこなくても大丈夫よ。あなたの怪我がこれ以上増えたら血がなくなりすぎて死んでしまうかもしれないわ」

「大袈裟だよ」


 フィルはそう言って私を優しく抱きしめてくれたのだけれど、神官様曰く、家族とは相手の痛みを自分の痛みのように感じて、お互いを思い合う存在だというのでしょう?だったら私、フィルベルトのことを自分の家族のように感じているのだと思うわ。


過去編となりまして、裏切りとか、策謀とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でいますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

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