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第二十四話  森の小屋にて

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「アンシェリークだけ一人で居るなんて可哀想よ!」


 ある日、私のお姉様はそう言って離れ家に居た私を本邸へ呼び戻したのだけれど、彼女にとって妹とは自分の下に置いて気分を良くさせる素材。両親にとって私は姉の機嫌を良くさせるための都合の良いおもちゃのようなものであって、あの人たちにとっても私は家族の一員ではなかっただろうし、私自身もあの人たちのことを自分の家族だと考えたことはなかった。


 食事と寝床と衣服はそれなりに与えただろう?と、言われたとしても、執事が見かねて渋々用意したものでしょう?その資金は誰から出ているって?知ったことじゃないわ、万が一にも女神様の天罰が降ったら恐ろしいからという理由で生かしておいただけの話じゃない?


「というわけで、私は家族っていうものがちっとも分からないの。家族とはどういったものなのか、そういったことはフィルの方が熟知していると思うの」


「はあ・・家族・・そうですね、アンシェリーク様と俺が夫婦となったのですから、俺たちはこれから家族ということになるんですしね」

「そう、一応は貴方の妻なのだから、アンシェリーク様と呼ばないでと言ったでしょう?」

「アン様」

「様は要らないのだけど」


 ジロリと睨みつけたら、渋々といった様子でフィルは、

「アン・・さ」

 『さ』の時点で殺気を感じた様子で、何度も咳払いをしたわ。


「アン・・と呼びます。アン・・さ・・アン、アン!これから夫婦として宜しくお願いします!」

 最後には自棄を起こした様子で片手を差し出して来たので、私はフィルと握手をしたの。


「はあ・・夫婦って互いの呼び方を決めるのにも苦労するのね、正直に言って面倒だわ・・」

 思わずため息を吐き出すと、フィルはビクッとこちらが驚くほど体を震わせた。


 王子と結婚だけはしたくないという理由で専属の護衛騎士であるフィルベルトと結婚をした私なのだけれど、大神官様が用意した森の中の小屋みたいな一軒家で住み始めることになったのよ。


 女神様を信仰しているエレスヘデンの神殿なのだけれど、大陸で迫害された人だとか、亡命した人なんかが海を越えて女神様の慈悲を求めてやって来ることもあるのですって。そういった(それなりに金持ち)の人たちを匿うための家というものを神殿は昔から幾つか所有しているのですって。


 私が姉に代わって本物の巫女と認定されたら困ってしまう母が毒入りクッキーを用意したのだけれど、

「間違いなく、女神様はお怒りになっている」

 と、大神官様は仰っているの。確かに、宝石が一気に採れなくなったって普通じゃ起きるようなことじゃないわよ。


 生まれながらのヒロイン気質であるお姉様が、

「貴族の方々の信仰心の低下が今回のような宝石の枯渇を招いたのです!」

 と、宣言したのよ。自分と宝石の枯渇は関係ないんだというアピールを即座にしたのは流石だと思うわ。私じゃ思いつくことも出来ないもの、流石は責任転嫁の天才、凄い才能だと感心してしまうわ。


 採掘される宝石を売って我が世の春を楽しんでいた多くの貴族たちはパニック状態となっていたのだけれど、ヘンリエッタお姉様の言葉を聞いて、確かに自分たちは不信心だったと自覚したのかしらね?女神様から赦しを得るの為にそれは頻回に神殿を訪れるようになったのよ。


 だけど、大神官様は貴族からの寄進(お金)の受け取りを一切拒否している。宝石が出るかどうかは女神様のお心次第だと考えている大神官様は、貴族たちから下手にお金を受け取った後に、

「なんで宝石は戻って来ないんだー!」

「なんとかしろー!」

 と、大騒ぎされるのは目に見えているので、受け取りを拒否しているのだけれど、

「なんで寄進を受け取らないのですか!」

「お金は受け取るべきです!」

 と、大騒ぎしている一派が神殿内に居るのですって。


 神殿内のゴタゴタは今に始まったことではないのだけれど、女神様の怒りが頂点に達して噴火でも起こっては大変だと考えた大神官様は、

「とりあえず事態が落ち着くまでは中央神殿からも近い隠れ家を使って欲しい!」

 と、泣きついて来たの。


 一応、私、大神官様も認めた本物の巫女らしいので、ただでさえ女神の恩恵が薄れて来ているところで私まで遠くに行ったらどうなるか分からないという強烈な不安感があるみたい。


 そんな訳で、夫婦となった私たちは神殿の裏に広がる広大な森の中にある、人もあんまり来ないような小さな湖の畔にある小屋に住むことになったのだけれど、

「それじゃあ、旦那様、これからどうやって生活をしていくか考えていかなくちゃならないわね」

「旦那様呼びはやめて欲しいです」

 今後のことについて話し合いをしているのだけれど、非常に面倒臭いことになっているの。


 フィルベルトは私と同じ年なのだけれど、女神の湖の崩壊で母と妹を亡くし、湖を崩壊させた犯人だという罪を着せられて父を処刑されたという悲劇の人なのだけれど、とにかく顔が整った男なのよ。


 まつ毛は影を落とすほど長いし、琥珀色の瞳は光を宿したようにキラキラと輝いているように見えるし、すっきりと高い鼻梁の下にある唇は薔薇の花びらのような色をしているの。エレスヘデンでは好まれない黒髪だから、今までそれほど持て囃されることはなかったのかしら?これ、明るい髪色のカツラでもかぶったら大変なことになるんじゃないかしら。


 もしくは、女装をさせてみたらどうかしら?恐ろしく似合うだろうという顔の男なのだけれど、平民でありながら神殿騎士として採用されるだけあって、ギッチリと筋肉がついているようなタイプなの。


「はあ〜、気の毒に・・」

 フィルの顔を眺めていたら思わずため息を吐き出してしまったわ。

「こんな風に慌ただしく結婚するような男では決してないのに、申し訳ないったらありゃしないわね」

「いやいや!申し訳ないのはこっちの方ですよ!」

 フィルは美しい顔を真っ赤にしたり、真っ青にしたりしながら面倒臭いことを言い出しそうだったので、思わず立ち上がって彼の口を手で塞いでしまったわ。

「フィル、それ以上は面倒臭いから聞いていられないわ」

「・・・・」

「とにかく、この森の中の一軒家でどうやって生活をしていくかを話し合いましょうよ」


 大神官様が用意をした中央神殿の裏に広がる森の中の一軒家(小屋)なのだけれど、実はこの森の中には、木こりを生業としている人々(信者)の一家がポツリ、ポツリと点在しているのだそうよ。


 森ってただ放っておいても綺麗には育たないので、折れたり腐ったりした木を取り除いたり、時には間引きをする必要があるというのね。そんな木こりの一家のおばあちゃんが一応、面倒を見に来てくれることになっているのだけれど、なるべく二人で生活するようにと言われているの。


「裏に畑があるからそこで野菜を作るのかしら?肉はフィルに獲ってきて貰えば良いのかしら?私、掃除と簡単な洗濯までは出来るのだけれど、料理はやったことがないわ」


 お姉様に嫌われている私は料理長に嫌われつつ、恐れられつつあったので、厨房に入るなんてことはしたことがないのよね。


「いや、そういうことは俺が一通り出来るので、アン様は心配される必要もないし、何もする必要はないのですが」

「面倒くさいのだけれど〜」


 本当に心底面倒くさいわ〜。


「もう貴族令嬢じゃないし、家では懇切丁寧に育てられた訳じゃないし、放置されていたから、陰ながら自分で何でもやれるようにはしていたのよ。だから、料理以外は出来るので、夫婦になったのだし、お互いに出来ることをやっていきましょう」


「は・・はあ」


「とりあえず私が掃除と洗濯係で、フィルが食料調達と料理係といった感じかしら?一応、大神官様は当面の食材は置いていってくれたのよね?今日は何を食べさせてくれるのかしら〜」


「は・・はい!それじゃあ、今日はシチューでも作って!」


「今日は初夜だけど、セクシーなネグリジェもなければ、甘い匂いの香油もないのだけれど、別に無くても問題ないかしら?」

「しょ・・・」

 フィルベルトが固まってしまったわ。

「面倒臭いわね〜」


 私がお姉様ほど美しかったら、フィルベルトも喜んで飛びかかって来たのでしょうけれど、ハズレクジの妹の方なのだもの。

「フィル、それでも仕方がないことなのよ!貴方が頼りなの!」

 王族との再婚を拒否するには形ばかりの夫婦では困るのよ!


「フィル!お願い!必要だったら私の顔はタオルで巻いて隠しておいても大丈夫だから!」

「わ・・わかりました!とりあえず!俺はシチューを作るための鳥肉を捕まえてくるので!」

「フィル!料理に逃げないで!大切なことなのよ!」

「わかっています!それとタオルは必要ないですから!」

「フィル!フィル!」


 ああ、逃げて行ってしまったわ。これじゃあ夜になっても帰って来ないかもしれないわね。


過去編となりまして、裏切りとか、策謀とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でいますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

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