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第二十三話  毒杯と大陸の神

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 シャリエール伯爵の妻が毒杯を賜ることになってしまった。

 夫人は神殿の地下牢に閉じ込められている間に足が腐り落ち、最後には自ら毒を望んで死んだのだ。


 王家と神殿の不仲は有名な話でもあるため、エレスヘデン王家が大神官の暗殺を企んだのではないかという話も出たには出たが、夫人の魂に悪魔が宿ることになって巫女を殺そうと企んだ。最終的にはその毒入りクッキーは妹のアンシェリークと一緒に居た大神官の前まで運ばれることになったのだが、誰も毒の被害を受けることはなかったのだ。


「殿下、やはり真の巫女とはアンシェリーク嬢のことではないのですよ」


 ベルナール王子の側近ブラムは慰めるように言い出した。


「カシアスの毒を手配したのは私ですが、もしもアンシェリーク嬢が本物の巫女であるのなら、私や私の家族の誰かが足の骨を折るような事態となっていたでしょう?ですが、私も私の家族も足の怪我などしておりません」


 アンシェリークに悪意を持った人間は、もれなく足の怪我をするという。であるのなら、ブラムの足もとっくにポキリと折れているはずなのに、ブラムも家族も足など折れていやしなかった。


「今まで足の骨を折った人間は、たまたま骨折しただけのことであって、偶然が重なっただけの話だと思うのですが?」


「だがな、宝石の採掘量はちっとも戻る兆しがない!頼みの真珠ですら満足に採れていないではないか!」


 27の群島を従えるエレスヘデン王国が大陸の王族並みに贅沢をして生活が出来たのは、いくらでも宝石が採掘出来たからだ。現在、宝石の採掘量の減少を補うために貝の浜揚げ作業を急がせているのだが、取れる真珠は小粒ばかり。大粒の真珠が取れなくなっている。


「ヘンリエッタに毎日のように祭殿で祈りを捧げさせているが、真珠も宝石もちっとも戻らない!あいつは本当に巫女なのか?」


 実の母親が毒杯を賜ることになったものの、それは悪魔に乗り移られたからということにしてしまった為、ヘンリエッタやシャリエール伯爵家に咎めは与えず。ヘンリエッタは巫女の有力候補のままとなったのだが、神殿で祈りを捧げるヘンリエッタは、

「宝石の枯渇や真珠が採れなくなっているのは、女神様の祈りを欠かすことが多くなった貴族の方々が原因でございます!」

 と、言い切った。


 宝石の枯渇や真珠の不作が戻らないのは自分の所為ではない、不信心な者たちの所為なのだと宣言し、忘れられた信仰を取り戻そうと言い出した。一時期は女神が再臨したかのような騒ぎとなったものの、いくら祈ったところで宝石や真珠が戻ることはなかった。


「殿下、そこの辺りの考えからしておかしいのですよ」


 側近のブラムは大きなため息を吐き出しながら言い出した。


「この世の中に本当に女神の加護を授けられた巫女がいるのでしょうか?もしも居るのであれば、コルネリス王の正妃となった巫女アルベルティナ様が毒を盛られて死んだ時点で、この国に天罰が降っているはずではありませんか?そもそも、アルベルティナ様を毒で殺したのは殿下の母君であらせられますよね?であるのなら、母君に天罰がすでに降っているべきではありませんか?」


 コルネリス王は多くの側妃や妾妃を囲っているのだが、正妃の座はアルベルティナの死後も空席のままとなっている。これは女神の怒りを恐れてのことと言われているが、実際にアルベルティナの死後に何か特別なことが起こったわけでは決してない。


「巫女などと仰々しく言っているのも神殿の権威付けのためであって、実際に特別な力を持った女などいないのですよ」


「だったら何故、宝石が枯渇した?真珠だって何故、今年に限って大粒のものが取れないのだ?」


「真珠が取れないのは、例年よりも暑い日が続いたからです。暑い日が続いた年は海水温も高くなるため、真珠の収穫量が減るのは仕方がないことです。天罰で真珠の収穫量が減ったわけではなく、海の温度の所為、例年よりも暑い日が続いた所為です」


 ブラムはこの世に巫女という特殊な力を持った者など居ないと考えているし、ひたすら権力を持ち続けたい神殿が作り出した戯言だと考えている。


 エレスヘデンの王太子は代々、巫女となる人と結婚をして来たが、その有力候補と言われるヘンリエッタは適度にバカで王家に入るのには丁度良いと考えていたものの、ここに来てヒロインのように民衆を魅了し、先導するようにして不信心の貴族を槍玉にあげたのはやり過ぎだったのだ。


「これ以上、ヘンリエッタ様に民衆の扇動などやらせてはいけません。信仰心を強くして女神様の慈悲を乞うなどナンセンスですよ」

「だがな、我々は本当に女神の怒りを買ってしまったのかも知れないのだぞ?」

「女神様なんてこの世に居るわけがありません、神とは人間が作り出した虚像に他ならないのですよ」


 側近のブラムははっきりとそう言い切ると、王子の紺碧の瞳をじっとりと見つめながら言い出した。


「危機的状況の時にこそ、これを良い機会として利用しない手はないのです。このような時こそ王家は心を強くしなければなりません。民の心を導くのは神殿ではなく、エレスヘデンの王家こそが民の道標となるのですから」


「だが・・それなら一体どうすれば良いのだ・・」


 ただでさえ平民の不満が鬱積しているような状態であり、ここで貴族たちの不満まで爆発するようなことになれば、王家の存続自体が危ぶまれる事態に追い込まれるだろう。エレスヘデン王家はいつでも誰かを生贄にすることで国民の不満を解消して来たのだが、今回は生贄の処分だけでは国民の鬱憤は晴れないだろう。


「殿下、神殿から破門処分を受けて我が国から出ることとなったカウペルス家とダンメルス家はメヘレン王国へ亡命したようなのです」

「メヘレンか、リェージュ南方にある住みやすい国と言われる場所だな」

「殿下、我々はメヘレン王国と戦争を始めたらいかがでしょう?」

「うん?どういうことだ?」


 平民だけでなく貴族までもが王家に不満を抱き始めている。それだけ、宝石の枯渇化現象は民心を大きく揺らすきっかけとなったのだが、そんなことなど気にしていられない程の衝撃を与えればどうなるか?


「メヘレン王国に我が国の防備の何処か薄いのかという嘘の情報を、カウペルス家とダンメルス家を通じて流すのです。メヘレン王国は小国ですが、我が国を手に入れれば豊富な宝石も手に入れることが出来ると唆し、我が国に征服戦争を仕掛けさせるのです」


「わざと戦争を仕掛けさせ、国民の目を私たち王家ではなくメヘレン王国に向けさせるということか?」


「メヘレンは大した海軍を持っていないので、シュトルベルク公爵家の海軍をぶつければ良いでしょう。そうすれば、国民一丸となって敵との戦いに備えなければならなくなりますし、王家の目の上の瘤となっている公爵家の戦力を削ぐことにもなるでしょう?」


「だが、我が方が負けることとなったらどうする?」

「負けるわけがありません。メヘレンは平和な弱小国として有名ではないですか?それにメヘレンが海戦で負ければ、我々はメヘレンに対して賠償金を請求することが出来る。宝石の枯渇分の金の補填を賠償金で賄うのです」


「つまりは民衆の不満や怒りを他所に向け、目障りな公爵家の戦力を削ぎ落とし、更には金を手に入れるという一石三鳥という奴か!」


 大喜びをするベルナール王子を見つめながら、ブラムは滲み出すようないやらしい笑みを浮かべていた。


 ブラムの家は一時期、貴族の間で流行したのと同じ時期に大陸の神を信奉するようになり、女神を信奉するエレスヘデン王家の在り方に強い忌避感を感じるようになっていた。


 神殿の勢力など潰れてしまえば良いし、あわよくばメヘレン王国にエレスヘデンを占領してもらって、大陸の神を国教にしたいとすら考えている。だからこそ、大神官は始末してしまいたいし、巫女なんてものも殺してしまえば良いとすら考えているのだから。



過去編となりまして、裏切りとか、策謀とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でいますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!

もし宜しければ

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