第十六話 情報の捏造
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結果から言うと、ボスマン伯爵令嬢コルネリア様は巫女候補という立場を退くことになったみたい。コルネリア嬢のあり得ない虐め行為によって、代わりに天罰を受けることになったおばあさまが苦しみながら亡くなってしまったため、ストクフィス伯爵家は激怒することになったのよね。しかも、自分の代わりに亡くなることになったおばあさまの葬儀に顔すら出さなかったでしょう?
「ごめんなさい!ごめんなさい!そんなつもりはなかったんです!ごめんなさい!」
コルネリア嬢は大号泣したのだけれど、誰も同情なんかしてくれなかったみたい。女神様の怒りを買ったからということで実の父にも見放されて、中央神殿から遠く離れた僻地となる島の修道院に入れられることになったのよ。
巫女候補として神殿に上がった令嬢たちは、巫女が決定するまで神殿から出てはいけないということなのだけれど、神殿から別の島の修道院へ行く分には問題ないらしいの。特にエレスヘデンの人々は信仰心が強いから、女神様の怒りが続いている間は、コルネリア嬢は帰って来られないでしょうね。
ちなみに誰が女神様の怒りが解けたのか、解けていないのかを判断するのだろう?大神官様あたりがやるのかしら?実にどうでも良いのだけれど、とりあえず小うるさい奴を一人処分することに成功したみたい。
ヘンリエッタお姉様は、妹の言うことなんて信じるな、たまたまなんだって主張しているみたいなのだけれど、なんでそういうことを言うのか理解できなのよね。だって、お姉様が巫女だから、巫女の妹の私が意地悪をされて天罰が降ったということでしょう?もっと胸を張って、
「私こそが本物の巫女なのよ!天罰が怖ければ私の妹をいじめないで〜!妹にまで女神様の加護はついているの!それを忘れないで〜!」
くらいのことを言えば良いのに、それが言えないのが私のお姉様なのよね〜。
結局、お姉様にとって私は邪魔な存在、不快な存在、あくまでも自分より下の存在ということになるものだから、私にまで女神様の加護がカケラほどでも行き渡っているとは思いたくないみたいなのよね。
普段から、
「私の妹の所為でみなさまに迷惑をかけてごめんなさい!」
と言って、不甲斐ない妹を思いやる心優しい姉を演じているというのに、最後の最後まで一貫してそういう演技が出来ないものだから、
「ヘンリエッタ様は妹のアンシェリーク様のことを蛇蝎のごとく嫌っている」
なんて噂が出回っちゃうのよ。私こそが本物の巫女よ!と主張したいのなら、一貫して表向きだけでも慈悲深い美女を演じ切らなくちゃダメでしょって思うのだけれど、それが出来ないのが私のお姉様なのよね〜。
ちなみに私とフィルベルトにバケツで水をかけるという洗礼を浴びせた二人の騎士たちに対してなのだけれど、自分が巫女だと思い込んでいるヘンリエッタお姉様がやめときゃいいのに、
「バケツで水をかけた貴方たちの罪を許します」
と、女神様のような慈悲の微笑みを浮かべなが許しを与えたのよ。そしたらその二人の騎士なんだけど、その日の夕方に神殿を出たところで足を挫いて転がっちゃったらしいのよ。それが二人ともよ、呆れちゃうわよね?
そのまま医師に診てもらったところ、足首の骨がぽきりと折れていたそうで、貴族騎士たちはパニック状態に陥った。
なにしろ、女神様の怒りが降ったということでカウペルス家、ダンメルス家という二つの有力貴族があっという間に没落したし、神殿で働いていたエトとヘイスという二人の神官たちは見るも無惨な有様となってしまったでしょう?
恨みを買いまくっている二人の神官だし、政敵も多い二つの家だから、誰かしらの悪意が働いてそんなことになったんじゃない?みたいに考えていた人たちは、それが本当に、女神様の怒りによるものなのかもしれないって考えた途端、パニックに陥っちゃったみたいなの。なにしろ中央神殿では貴族たちのやりたい放題のような状態が続いていたため、身に覚えのある人間は、いつ自分に天罰が降るのかと怯えることになっちゃったみたい。
心の奥底から『ざまあみろ』って思ってしまうわよね。
「ところでさ、質問なんだけど、本当にコルネリア様が君に虐めをした時に、コルネリア様のおばあさんはタイミングよく足の骨を折って、症状が悪化していったっていうことになるのかい?」
今もまだ、私の専属護衛としてついてくれているフィルベルトに問いかけられたため、私はにこりと笑って答えてやったわ。
「そんなこと、あるわけないじゃない」
今、私は大神官様のお部屋の隣の部屋に移動をして、歴代の大神官様たちが書き残した資料をまとめているところなの。なにしろ神殿中が天罰パニック状態になっているため、許しを乞いたい人が続出中ということもあって、大神官様は危機感を感じることになったみたい。
一応、女神の化身とも言われるお姉様が居るのだけれど、お姉様に許された二人の神殿騎士はその直後に自分の足首をポッキリ折ってしまったでしょう?そうなると、妹の私に許された方が効果があるんじゃないかと思う輩も出て来ているようで、大神官様は私の身柄をこっそり隔離することにしたのよ。
前の粗末な部屋から大神官様と同じ建屋に移動をした私は、白金の髪の毛をウィンプル(女性用頭巾)で包み込んでメガネをかけているから、田舎から来た修道女にしか見えないはずよ!
そんな私の護衛をしているフィルベルトも修道士の格好をして、資料の整理を手伝っているのだけれど、メガネがお揃いなのよ。ふふふっ、一応、兄妹という設定で大神官様のお手伝いに入っていることになっているの。
「そんなことあるわけないってどういうことだ?」
「あらあら、フィルも本当に天罰が降るのかどうかに興味があるみたいね?」
神殿内ではその話でもちきりとなっているから仕方ないけれど・・
「本当にこの世の中に天罰なんてものがあると思う?もしも天罰なんてものがあるのなら、とっくの昔にわが国の王家は滅びているだろうし、フィルの親族の方の公開処刑を実施しようとした輩には天罰が降って、あなたの大切な人は助かっていたのではなくて?」
フィルベルトは良く私に仕えてくれる護衛騎士なのだけれど、彼が何のために私の護衛騎士になったのかなんてことは深く考えるまでもないわよね。
あの処刑の場で、私たちは出会っている。
だけど、今まで、言葉に出してその話をしたことはなかった。
「話を元に戻すけれど・・」
凝然とするフィルベルトを無視して私は咳払いをすると、今回の顛末について説明をする事にした。
「私はいちいち、いついつ、何処どこで虐めをされましたみたいなことを書いているほど暇ではないわ。私はたまたま、ストクフィス家のおばあさまがお亡くなりになったと聞いて、神官見習いの子に調べさせたのよ」
なにしろおばあさまは中央神殿で葬儀を行っているのだもの、同じ敷地内だというのに顔を出さないコルネリアはどうかしていると言えるでしょう。
「神官見習いの子はお医者様のところにまで行って調べてくれたのだけれど、おばあさまは骨折が原因でお亡くなりになっていた。しかも骨折をした日は私が虐めを受け始めたのと同じくらいの時期になるじゃない。あの子は詳細な報告書を提出してくれたのだけれど、その報告書に照らし合わせて私が虐めを受けた詳細な日にちを捏造すれば、それだけで天罰の出来上がりってことになるのよ」
こちらが金貨を支払っているということもあって、神官見習いのマルクは非常に細かいところまで調べ上げてくれるのよね。そんなマルクが用意してくれた報告書に私がメモをつければ、あらあら、ストクフィス家が激怒しそうなネタが作れちゃったというわけね。
「ボスマン伯爵夫妻は仲が悪かったことで有名だったのだけれど、この事件がきっかけで離婚をしたみたい。父親の方が娘のコルネリア様を溺愛して、親娘揃って母親を軽視しているようなところがあったみたい。そんな父親に関わると天罰が降るだろうという噂が流れて、今のボスマン家は青息吐息状態になっているみたいだわ」
女神様を信奉する神殿の存在を軽視し続けてきた貴族たちだけれど、最近では毎日のように神殿に参拝をしているし、女神の化身とも呼ばれるお姉様のところには連日長蛇の列が出来ているというの。お姉様はもう巫女ってことで決定で良いのではないかしら、そうなったら家としても万々歳ということになるでしょう?
過去編となりまして、裏切りとか、策謀とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でいますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!
もし宜しければ
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