第十話 アンシェリークの考え
ここからアンシェリークの回となります!よろしくお願いします。
エレスヘデン王国では女神リールが信仰されているし、私のお姉様は女神の化身かと言われるほど容姿が美しいということで、家族も、使用人も、誰も彼もが、お姉さまのことをと〜っても大事にしているの。
そもそも女神様ってどんな容姿をしているのかしら?
私は神殿に連れて行って貰ったことがないから、本邸の図書室にある女神リールについて書かれた本を読んで確認したのだけれど、まあ、何というか、女神様って色々な人が色々な表現をしているから、正確にはどんな容姿なのかということは結局分からなかったんだ。とりあえず髪の毛は腰に届くほど長いらしい。
あと、ラセイタの花が女神様は好きらしい。この花が持つ意味は『永遠の恋』『愛の絆』だから、女神様も意外にロマンチックなところがあるのかもしれない。あと、女神様は女らしい女、というような性格らしい。
とにかくちやほやされたいから取り巻きは沢山いるし、一人の男性からの愛だけでは満足できずに、大海原の神とか山の神とか、色々な男神と浮き名を流しているらしい。自分の美しさをひけらかす女神様は虚栄心の塊のような神様で、何が一番大好きかと言うのなら、自分を綺麗に輝かせてくれる宝石と、他人が不幸になった話だと言うのだから呆れてしまう。
女神様は誰かを下にすることで、自分が上だと実感するタイプの神様のようで、野菊の女神様とか、小川の女神様とかがいつでも虐められるか、取り巻きに入れられてこき使われるかのどちらかで、結局、女神リール様は、大神様に怒られて神々の世界から放り出されてしまうのですって。
そんな理由があってリェージュ大陸では女神リールが敬われることはないらしい。エレスヘデンの二十七の島を女神様が作ったのも自分の居場所を作るため、仕方なく、ということらしい。
そんな女神様は島民の信仰心を強くするために自分の加護を与えた巫女を地上に遣わすことにしたんだけど、巫女の候補となる者には女神様の性格を受け継いだような者が多いんですって。
「まあ!なんてことでしょう!」
私の姉のヘンリエッタはとにかく虚栄心の塊だし、自己中心的だし、常に誰かにちやほやされなければ死んでしまう病にかかっているし、誰かを下に落っことして自分は高みの見物をするのが何よりも大好きな人ですもの。まさに、巫女の候補となる者、もう、お姉様が巫女だと断言しちゃっても良いのかもしれない!
そんな傍若無人の姉の妹として生まれてしまった私は、親からは完全に放置されて生きることになったわ。一応、巫女かもしれないと言われる姉がいるので、その妹を放置した末に餓死なんてしたら女神様の怒りを買うかもしれない。ということで、腐った食べ物を与えられることもなかったし、生きていくのに困ることはなかったの。
放置されて生活することに不満なんか感じていなかったんだけど、
「なんでお前がこんなところに居るの!目障りなのよ!」
姉の求めに応じて別邸で生活していた私は本邸に住まいを移すことになったんだけど、姉は私を一目見るなり目障りだと言って頬を殴りつけてきたのよ。
そうすると、姉の信者である侍女の一人が、私が一人で居るのを確認した上で、私に殴りかかろうとして来たの。咄嗟の機転で、侍女の腕の下に潜り込みながら足を引っ掛けて、階段から落ちるようにしてやった。
階段の近くで私を張り手で殴り飛ばしてやろうという発想自体が悍ましいんだけど、この侍女は姉の大のお気に入りだったから、自分だって私に暴力を振るっても良いだろうくらいに勘違いしたのかもしれない。
階段から落ちた侍女は足の骨を折ったまま失神してしまったんだけど、私は姉に叩かれた頬をみんなに見せながら、
「この侍女は私の頬をいきなり殴りつけてきたの!そうしたら、勝手に階段から落ちて行ってしまったの!女神様の怒りが降ることになったのだわ!」
と、大騒ぎをしたの。
「私は女神の巫女と言われるお姉様の妹ですから、女神様は姉を見守るついでに私までも視界の端に入れているのかもしれません!」
膝を折って神に祈りながら言いましたとも。
「女神様!お守り頂きありがとうございます!おかけで私は不届者の侍女に階段から落とされて死ぬところを免れることが出来ました!」
わんわん泣きながら女神様へのお礼の言葉を唱え続けたので、その侍女が目を覚まして私に足を引っ掛けられたから階段を落ちることになったのだと言っても、誰も信用してはくれなかったのよ。
女神様は女らしい性格の持ち主だったので、狡猾な女性のことを意外にも好ましく思うのだと本には書いてあったのよね。であるのなら、女神の巫女の妹という地位を利用して、私がそれなりに狡猾に動いたとしても許されるのに違いないわ。
さすがに女神様の怒りを買ってしまったとなれば、いくら姉のお気に入りだったとしても縁起が悪すぎるという理由で退職処分を受けることになってしまったの。そのことに見せかけだけは従順に受け止めながらも、心の中では全く納得できない姉は、まずは私の食事を止めることにしたのよね。
「アンシェリークは今まで別邸で一人で食べていたから、家族で揃って食べることにストレスを感じているみたいなの。私も何度も声をかけてきたのだけれど、お父様、お母様、私の力不足で・・ごめんなさい・・」
と、項垂れるようにして言いだすことで、両親に自分は妹を気遣う心優しい娘であると印象付けることに成功し、妹の私は姉の気遣いにすら気付かない我儘で最低な娘だというように印象付けることに成功したの。
巫女の化身と言われている姉のヘンリエッタは性格が女神様そのものだから、やると言ったら徹底的にやるだろうし、それで何かがあったとしても、
「何て可哀想な子でしょう!だから私が一緒に食事をしましょうとあれほど言ったのに!」
と言いながら涙でも流して、悲劇のヒロインになるつもりでしょう。
だから、家族の食事の時間には私を個室に軟禁するようにと姉から命じられた侍女に対して、
「ああ、なんて可哀想な娘でしょう」
って、私は、悲壮感たっぷりに言ってやったわ。
「あなたの後ろで女神様が泣いている。正当なる巫女の妹を餓死に追いやるような行いをするのだから、身の毛もよだつほどの不幸があなただけでなく、その親族にも降りかかるだろうと泣いている」
私は悲しみをたっぷりと含ませながら言ってやったわ。
「貴女だけでなく、貴女をそんな役回りにした侍女頭、それだけでなく私に食事を用意しなかった料理長にも不幸が訪れる。ああ、巫女の妹である私から食事を奪ったのはあなたたちの意思ではないというのに、女神の怒りはその一族にまで降りかかるでしょう」
そんなことを私が言ったら、その後はどうなるのかなんて簡単に分かることよね。
あははは、女神様、本当に有難う。あなたがいるからこそ、私はここでも生きていけます。
過去編となりまして、裏切りとか、策謀とか、悪い奴とか、どんどん出てくる予定でいますので、懲りずに最後までお付き合い頂ければ幸いです!!
もし宜しければ
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