71.身に染める者②
目の前にいる相手、ルイスさんじゃない。
目の前にいるのは、今までずっと敵対してきた相手、教祖さんだよ。
私の後ろにはメイルくんがいる。
気を付けないとだよ。
杖さん構えるよ。
「行くよ! 放弾さん!」
攻撃してほしいな!
「フッ、分離」
むっ、なにかな。
知らない魔法を使ってきたよ。
それにいま素手で、
「お返しだ、分離」
3発、こっちに飛んできた。
「えいっ!」
杖さん振るう。
こっちも放弾さんで応戦。
全部撃ち落とすよ。
シュウウウウ……
「すごい、全くの互角だ」
メイルくん。
うん、私の撃った魔法が打ち消された。
同じように相手の魔法も消滅。
全然知らない魔法だけど、放弾さんと同系統ってことで良いのかな。
「……ほう、だが次どうかな?」
来るよ!
「分離」
「放弾さん!」
魔法での撃ち合いが始まったよ。
私のは緑色。
対する教祖さんは濃い紫色。
お互いが放つ魔法が激突、交差。
バンバンバンッって、結構激しいな。
「結盾さん!」
守ってほしいな! えいっ!
直撃しそうなヤツは防御魔法を使ってガード。
私が避けられないって言うのもあるけど、後ろにメイルくんがいるから絶対死守するよ。
教祖さんの方は、避けてる。
横に避けるだけじゃなくて、ジャンプしたり地面に伏せたり、クルクル回ったり。
回避した体勢からでも構わず撃ってくる。
中々のアクロバティックさんだよ。
動くから標準が難しいな。
一見さん、これが魔術師同士の、よくある魔法の戦い。
「そら! そらそらそら!」
でも一つ、気になることがあるよ。
それは教祖さん。
この人、さっきから素手で魔法を撃ってるってこと。
普通、杖さんとか短剣さんとか、魔法を使う道具がないと使えないはずだよ。
でも目の前の相手は、素手で魔法を連発してる。
特異体質
何もない生身で魔法が使える特殊な人間さん。
そういう人がいるって言うのは噂で聞いてたけど、実物は初めて見るよ。
ヒュンッ
むっ、そろそろ厳しくなってきたよ。
「ミチルが押されてる……」
メイルくん、そうは言ってもだよ。
「ハハハッ! 所詮、魔法の行きつくところは物量戦!」
だって無理だもん。
相手は両手で魔法をすごいいっぱい撃ってくる。
それに対してこっちは杖さんだけ。
防御にも使ってるワケだし。
普通に考えて手数さんで勝てるワケないよ。
「うっ……」
さばききれない。
悔しいけど、このまま付き合ってもジリ貧さん。
ここは一旦防御に徹するよ。
「結盾さん!」
お願いだよ、守ってほしいな!
「どうした! そんなモノか!」
煽ってるつもりかな。
これくらいで勝った気にならないでほしいな。
たしかにすごい連射だよ。
これとまともに撃ち合うのは厳しいな。
無理するとこっちがバテちゃうもん。
でも、守りに徹しさえすれば全然何とかなる。
このまま持ちこたえて、相手の勢いが落ちるのを──
「こちらの消耗を待っているのだろう」
むっ、
「あるいは仲間が来るまでの時間稼ぎか。舐められたモノだ。そんな薄い望みを通すほど、今の私は甘くはない」
腕の角度を変えた。
「ハアアアッ!」
空に何発かを発射。
それが曲線を描いて一気に急降下、私のところに。
「上だミチル! 避けて!」
私じゃ避けれない。
仮に避けたとしてもメイルくんが、
「結盾さん!」
ガードするよ!
むっ、重力さんが乗ってるせいで威力が若干上がってるよ。
でも大丈夫。
これを全部凌いだ後に、また反撃さんを、
「──言ったはずだ、甘くはないと」
シュイイインッ!
はっ、目の前に、
距離さんが、いつの間に、
「ミチル!」
拳に、魔法を、
「終わりだ! 光撃!」
バッ!
「──風さんっ!」
最大出力!
この邪魔な人をふっ飛ばしてほしいな!
「なにっ⁉」
一気に突き放した。ズサアアアって。
えらいよ風さん!
「今のは……風の魔法か」
今の教祖さん。
私に急接近して、近距離から攻撃しようとしてきた。
拳に魔法を乗せて、そのまま……
はえ~、そんなこともできるんだ。
上を守ってる間ガラ空きのところを、危なかったよ。
危うくリバーさんにめり込むところだったよ。
でも残念だったね。
なんたって私には風さんって言う頼もしい味方がついてる。
近づいても無駄だよ!
「様子見はここまで。今度はこっちの番だよ!」
魔力を集中、グルグルさん、グルグルさん……
よし、溜まったよ!
「放弾さん!」
反撃開始だよ!
「フッ、例え接近できないとしても、こちらが有利という事に──」
それはどうかな。
今までとは違う。
相手の魔法を貫通するよ!
「なに⁉」
避けられたよ。
今のは惜しかったな。
「……出力をあげたか。いや、魔法に風を加えて」
ご名答さん。
でも気づいたところでどうにもならないよ。
「風さん!」
来てほしいな。
私の周りに2つの魔法の玉、放弾さんを浮かべるよ。
緑色の魔法が2つ、プカプカさん。
「それで私とやり合うつもりか。弾丸がたったの2つ、舐められたモノだ」
「舐めてると痛い目見るよ!」
風さん! 攻撃だよ!
2つの弾、うちの1つを発進。
相手に突撃させるよ。
「こんなモノ、躱せば何の問題も──」
んっ、杖さんクイッ
「なっ⁉」
残念、戻ってくるんだな、これが。
風を加えて威力を上げただけじゃない。
そこにホーミング機能も追加されてる。
これはすごい付与効果だよ。
「くっ、いつまで私を」
杖さんクイクイッ
当たるまで執拗に追いかけるよ。
「ならば術者を止めるまで!」
こっちに魔法をたくさん飛ばしてきた。
無駄だよ。
もう1個の風さんが私を守ってくれる。
ほらっ、全部落としたよ。バシバシって。
もう1個は引き続き相手をホーミング。
クイクイッ、当たるまで追いかけるよ。
「くっ……だがこれほどの魔法、維持するのに相当の魔力を使うはず。そう長くは持つまい」
「そっちが耐えられればの話だよ!」
いつまでも躱せないよ!
杖さんヒョイッ!
ほらっ、もう1個も行って来いだよ!
──戦いは続いたよ。
私は2つの魔法の弾、放弾さんで攻撃。
風さんを混ぜることで威力とホーミング性能を上げてる。
普通の魔法だと教祖さんのと互角なんだけど、これならこっちの方が遥かに上。
多少撃ち込まれたくらいじゃ怯まない。
風さんとの協力プレイだよ。
対する教祖さんは、その2つをかわしつつ……えっと、分離さんでいいのかな?
効果とかはよく分からないけど、放弾さんと同じような魔法で応戦。
周りは無視して、本体の私を叩くって感じかな。
でも私は風さんを吹かしてバリア。
飛んできた魔法に対して、当たる直前に合わせて、一瞬だけ風さんを。
魔法の軌道をちょこっとだけズラすよ。
最初みたいに真正面から受け止めるワケじゃないから、こっちの方が魔力消費的にリーズナブルさん。
これなら後ろにいるメイルくんにも当たらないし。
中々できないことだと思うな。
2つの魔法弾を巧みに操作しながら攻める私。
対して、それをかわしつつ反撃する教祖さん。
そういう構図だよ。
しばらくの間、膠着状態が続いていたんだけど。
教祖さん、反撃の数が少なくなってる。
攻撃は最低限にして、かわすのに専念。
どうやらこっちの魔力切れを狙う方向にシフトしたみたいだよ。
たしかに手としては悪くないよ。
げんに私の魔力も少なくなってきてる。
集中力さんも疲れてきたし、もう長くは持たないよ。
でも気づいてるかな。
それだと、さっきと立場が逆になるってことに。
守りに専念するとどうなるか。
そうだよ。
こっちの手数さんが増えるんだよ!
むむっ、動いてる相手、
じっくり狙いを定めて……
ピカーンッ! 今だよ!
「放弾さん!」
「なっ⁉ しまっ──」
直撃だよ!
「くっ、ゴホッゴホッ!」
動きを止めたよ!
これで終わりだよ!
杖さんに私の全魔力を集中!
グルグルさん、グルグルさん、グルグルさん
最後に風さんを混ぜて、完成だよ!
私の最大出力!
「超弾さん!」
特大の風さん!
さあ、行って来いだよ!
「ぐああああああ!!!」
直撃。
決まったよ。
終わったかな。フンッ




