68.古代兵器ぴーちゃん⑭
「はあ、美味しかったな」
エクレアさんの作ったクッキー。
大満足さんだよ。
また行きたいな。
「いつも食い物に釣られているな」
「そうかな? そんなことないと思うな」
思い込みさん。
今は森を歩いてるよ。
ぴーちゃんは妖精さんの住み家にある。
そう判明したからさっそく向かってるんだ。
「これはメイルに報告だな」
「うん、上手くいけば大発見だよ」
これなら見つけられそうだよ。
見つけたら絶対褒めてくれるよ。
「違う、お前の食い意地についてだ。まったく、張ってるのはいいが如何せん限度がある。結局昼までご馳走になってしまった」
「別に張ってないと思うな。ちょうどお昼の時間だったし、ちょうど良かったよ」
お昼ご飯も美味しかったよ。
エクレアさんも喜んでたな。
「あと食後のクッキーさんも良かったよ」
「いや、どんだけクッキー食べるんだ。食い過ぎだろ」
「いいんだよ。それよりフェチョちゃんの昔話をメイルくんにも聞かせてあげたいな」
右手さんが急に疼いたり。
特に意味もないのに黒い眼帯さんしてたり。
木に登って降りられなくなった話とか。
エクレアさんと喧嘩して家出した話とか。
「他にも色々あるよ。ねっ、フェチョちゃん」
フフンッ
「その呼び方はやめろ。なんだ、普段の腹いせのつもりか?」
別にからかわれてる仕返しとかじゃないよ。
私は性格が良いからそんなことしないよ。
はあ、新鮮な森さんに囲まれてるからかな。
気分がよくなってきたよ。
「はあ、ワタシはもう疲れたぞ」
フェチョナルさん、トトホだね。
──そして、
「ここだよ」
着いたよ。
「結構深いところまで来たな」
「妖精さんの住み家だし、多少はだよ」
「すごいな。本当に水晶で見た景色と同じだ……って、おい、何をしている」
お~い!
「えっ? なにって手を振ってるよ。エクレアさんが見てるかなって」
この角度かな?
違うかな、ちょっと斜めかも。
「お~い、エクレアさ~ん! ここだよ~!」
「何をやっているのかと思えば、バカなのかお前は。見てるワケないだろう」
「むっ、バカじゃないよ」
私は至って真面目さんだよ。
もし本当に見てたらどうするんだよ。
どう責任取ってくれるのかな。
それにバカって言う方がバカなんだよ。
バカ。
「にしても随分とバカデカい木だな。世界樹か何かなのか?」
そう言って、中央にある一際大きな大木を見上げるフェチョナルさん。
「妖精さんが言うには普通の木だよ」
「さっきから言ってる妖精っていうのは、童話とかに出てくるあの妖精か?」
「うん、実は妖精さんって目には見えないけど普通にいるんだよ。それでこの辺一帯は妖精さんパワーのおかげで栄養が溢れてるんだ」
「ほう、だからこんなにデカいのか」
って、メイルくんが言ってたよ。
知らないってことは、フェチョナルさんには見えないのかな。
「なんだ、ということはお前はその妖精が見えるのか?」
「ううん、私は見えないよ。見えるのはメイルくんだけだよ」
「……そうか。魔晶石の件もそうだが、アイツは一体何なんだ」
「うん? メイルくんはメイルくんだよ」
他の何者でもないと思うな。
「まあいい。それだと意思疎通のできるメイルがいないとダメなんじゃないのか?」
「安心してほしいな。そこは私の風さんの出番だよ」
んっ、杖さんを出す。
「その杖で脅すのか?」
「冗談言わないでほしいな。大まかな意思疎通くらいなら私にも出来るよ」
悪霊の件で随分とお世話になったから。
「そうなのか、お前も大概だな」
風さん、お願いするよ。
風さん探知。
うん、妖精さんがいっぱい集まってるよ。
「不気味だな。今さらだが、急にテリトリーに入って大丈夫なのか? 攻撃されたりは」
「大丈夫だよ、こっちが敵意さんを出さなければ何もして来ないよ」
風さんのこの感じ、いつも通り歓迎されてる。
それと、初めてのフェチョナルさんに対する不信感もある。
みんな人見知りさんだから。
「妖精さん、今日はちょっとお願いが会って来たよ。えっと、古代兵器ぴーちゃんのことなんだけど……」
経緯をペラペラさん。
私なりに頑張って説明してるよ。
上手く伝わってると良いんだけど。
「それで、妖精さんが良ければ、場所を教えてほしいなって」
風さんが揺れてる。
この揺れ方はたぶん、みんなで話し合ってるよ。
「行けそうか?」
「何とも言えないかな。ホントにザックリでしか分からないから」
結構微妙だし。
風さんで探るのも難しいんだよ。
「渋ってるようだな。妖精にとっても大事な物なのかもしれない」
「たしかに。こればっかりは仕方ないよね」
「ああ。そう簡単に在処を教えてくれるほど甘くはないみたいだ」
やっぱり私じゃ通してくれないのかな。
実際にメイルくんみたいに視えるワケでも、話せるワケでもない。
友だちだと思っていたけど、向こうはそうでもなかったりするし。
どうしよう。
せっかくここまで来たのに、結局なにも力になれないよ。
「やはりここは一度メイルを連れて出直した方が──」
ん? ギイッって音が。
「あっ、フェチョナルさん! 真ん中の大きな木が!」
2つに分かれてゆっくり左右に広がってる。
「なんだ?」
扉みたいに開いたよ。
こんなところに隠し通路さんがあったなんて。
「コイツは通っても良いってことか?」
「良いみたいだよ。怒ってもないみたいだし、でも……」
「でもどうした?」
「妖精さん、なんだか不安そうだよ」
まるで気を付けてって言ってるみたい。
「やめて置くか? 引き返しても良いんだぞ」
「なに言ってるのかな。ここまで来たら入るしかないよ」
目的の物はすぐそこだよ。
行くしかないと思うな。
「フッ、そうか。聞くまでもなかったな」
うん、それじゃ、
「ありがとうだよ妖精さん、気を付けるよ」
行ってくる。
今度お菓子とか持ってくるよ。
真っ暗な階段を、ランプさん片手に下りる私たち。
「結構下に続いてるね」
どこまで降りるのかな。
下に行けば行くほど不安になるよ。
「魔物が出そうな雰囲気はないな」
「うん、洞窟って感じじゃないし」
石で出来た建物だよ。
割れ目からのコケさん。
ダンジョンと言うよりは神殿に近いかも。
人が来なくなった、忘れられた神殿さん。
「何が待ち受けてるか分からない。慎重に行くぞ」
「了解だよ」
何も起きなければいいんだけど。
あっ、もうすぐ降りるの終わるよ。
階段を降り終えて、トンッ
「わっ、広いよ!」
声が反響してる。
暗くて、全体が石で出来た建物ってことくらいしか分からない。
ランプさんで照らしきれないほど広大だよ。
「急に広い所に出たな」
天井さんも見えないくらい高い。
やけに階段下りてるなとは思ったけど、こんな所に続いてたなんて。
「ぴーちゃんはどこかな?」
「いや、水晶の景色とは違うようだ。こんなに広くはなかったしな」
「そっか、なら別の部屋にあるのかな」
どこにあるんだろう。
でも他に扉は見当たらない。
「なんだ、早くも行き止まりか」
「う~ん、一見さん何もなさそうだけど。隠し通路とかあるのかな?」
広すぎて分からないよ。
とりあえず端っこから調べていくしかないのかな。
ダンジョンさんだとこういうのよくあるし。
地道にやっていくしか、
「どうやら、その必要はないみたいだ」
んっ、フェチョナルさん?
「この広さ、そして行き止まり。コイツは……」
ガシャンッ!
「わっ!? なにかな!?」
階段に続く通路に柵が⁉
「閉じ込められたよ! どうなってるのかな!」
この柵さんビクともしないよ!
ヤバいよヤバいよ!
わっ、周りがボワッて青白い炎が!
えっ、なにかな。
周りを青い炎に囲まれて、まるで決闘する所みたいになってるんだけど。
「来るぞ」
えっ、
奥にある扉が開いたよ。
そこから何か金属みたいな鈍い音が、徐々に大きくなっていく。
「デカいな」
ザッと見ても5メートルはある。
全身に鎧をきた巨人さんだよ。
……って、えっ?
もしかして今からこれと戦わないといけないのかな?
そんな、たしかによくある展開かもだけど……
初めてだよ。
風さんがこんなにも震えてる。
炎に見えるけど炎じゃない。
魔力だ。
身体から漏れ出すほどの禍々しい魔力。
それが青い炎みたいなって周りを纏ってる。
単純な鎧じゃない。
全身が強力な魔法でコーティングされてるのが分かる。
かなりの防御力だよ。
それこそ、私なんかじゃダメージも与えられないくらい。
そもそもこれってダンジョン、しかも高難易度で待ち受けてるボス的存在なんじゃ。
熟練のAランク冒険者とかが戦うヤツなんじゃ。
どうしよう。
出口は塞がれて逃げられない。
戦おうにも私なんかじゃ到底歯が立たない。
こんなの、いくらフェチョナルさんでも……
「わっ、なにかな!?」
いま何か踏んだよ!?
「これは骨? 人間のガイコツだよ!」
うそ、全然気づかなった。
まさか、周りにあるこの骨って……
だから妖精さんは心配してたんだ。
私たちの身を案じて。
鎧の巨人が剣を振り上げた。
まずいよ! こっちを攻撃する気だよ!
「わわっ⁉」
──キュウイイイイン!
「フンッ!」
えっ、
フェチョナルさん。
杖に魔法が付与された魔法槍。
その一振りで、巨大な剣を粉々に、
一度大きくジャンプして、上から思いっきり、
うそ、綺麗に真っ二つ、
「空洞か、てっきりオークキングか何かだと思っていたが」
分かれた鎧が、崩れるように倒れて、
中から溢れ出た青白い炎が、空に昇っていく。
「開いたようだ、先を急ぐぞ」
う、うん……




