66.古代兵器ぴーちゃん⑫
「失礼しました。私としたことつい興奮を。うちに人なんて滅多に来ないモノですから、はい」
落ち着いたかな。
フェチョナルさんのお知り合いさん。
見た目は可愛いんだけど変わった人だよ。
「紹介する、コイツはテナコだ。ワタシの一つ下で──」
「おやおや? おかしいですね。あなたの方がお姉さんにはどうも見えませんが」
「見ての通り腐れ縁みたいなモノだ」
フェチョナルさんの一つ下ってことは17。
私より年上なんだ。
メイルくんと同じくらいに見えるから意外だよ。
「そうです。同じを師を持つかつてのルームメイト。共に窮地を何度も乗り越えてきた言わば相棒的存在。それはもう実質こい──」
「また殴られたいのか」
「……失礼。ただの友人です、はい」
喋るとダメな人かな。
話が進まなくなるタイプだよ。
「コイツは主に魔法に関する道具を扱っている。大半が意味のないガラクタだがな」
「ガラクタとは聞きづてなりませんね。そんなこと言って良いんですか? あなたが今持ってるその杖は、一体誰が作成したモノなんですか? 誰が?」
自分が作ったって言いたのかな。
「一応情報通でもある。見た目通りのオタクだしな」
「一応とはなんですか一応とは。この街で五本指に入るほどの隠れた名情報屋ですよ、それにオタクではなく専門家と何度言えば──」
そっか。
魔晶石を加工できる知り合いがいるって言ってたけど、この人のことだったんだ。
あの杖を、星六の魔晶石を付けた杖を作れるなんてすごい人だよ。
「で、そちらのお姉さんは?」
やっと私の紹介だよ。
「ミチルだよ。メイルくんの所で探偵事務所の助手をやってるんだ。よろしくだよ」
初見さん。
「ほう、探偵業の助手を。失礼ですがご年齢は……」
「16だよ」
この中では最年少かな。
「これで16……どう思います? フェチョナルさん」
「ああ、これでワタシは神への信仰心を完全に無くしたな」
「はい、私も旅に出ようかと一瞬悩みましたよ」
2人してどこを見てるのかな。
「オホンッ、あなた方のことは聞いていますよ。何やらうちのフェチョ子がとてもお世話になったとか。やれ、さぞかしデリカシーのない子でしたでしょう、色々と厚かましくはなかったですか?」
「デリカシーさん? まあ、そうかな」
初見さん厚かましかったかも。
「おい」
だって事実だし。
「そうでしょうそうでしょう。で、例の幽霊屋敷の件を解決したそうですが、噂は本当なんですか?」
「うん? 悪霊なら退治したよ、この杖さんで」
パパッと追い払ったよ。
「やはり本当なんですね⁉ と言うことはつまりアレですか、この街の英雄ではありませんか! 素晴らしいです! ぜひここにサインをお願いします! お店に飾りたいので!」
えっ、サインなんて書いたことないよ。
どうしようかな、考えておくべきだったよ。
「やめろ、困ってるだろ。それより早く用を済ませるぞ」
「えっ、寂しくなって私に会いに来たんじゃ……」
スッって、拳をあげるフェチョナルさん。
「冗談ですよ。嫌ですね、本気にしないでくださいよ。それでご用件とは一体なんですか? 杖のメンテナンスですか。今なら初回サービスで無料ですよ」
聞いたかな?
初めての人はタダだって。
「じゃあせっかくだし、お願いしようかな」
手入れはしてるけど一応見てもらおうかな。
「ある物を探している。探し物ならお前の専売特許だろう」
あっ、ぶった切られた。
無念だよ。
「専売特許と言うほどではないですが、一応請け負ってはいますよ。で、そのある物とは?」
「古代兵器ぴーちゃんだ」
「……ほう、これまた随分と厄介な」
今ロザリアさんみたいにメガネさん光ったよ。
「古代兵器ぴーちゃん……かつて古代の超魔術師デステスが作ったとされるとんでも兵器。その性能、形状、在処、全てが謎に包まれています。一体どんな兵器なのか、いや、もはやそれは兵器なのか。魔術の一種である可能性も。そのヴェールを知る者は誰一人としていない。存在するのかも定かではない代物です」
ブツブツ言ってる。
「入手してしまえば世界を掌握をできると言われていますし、逆に全く使えない物とも。一体どこから出た噂なのか、デステスと同じく空想上の産物、と言ったところでしょう」
ふ〜ん、そのデステスさんって人が作ったんだ。
新しい情報だよ。
「で、そいつはあるのか?」
「さあ、分かりかねますね」
「なんだ? 知らないのか、失望したぞ」
「煽っても無駄ですよ。私は見ての通り現実主義なんで。ワケも分からない物を探すほど暇ではないんですよ」
「なら場所を教えてくれ。お前の水晶なら分かるだろ」
目の前にある水晶さんで占うのかな。
「それは構いませんが、副業なのであまり期待しないでくださいよ」
「ああ、期待しているぞ」
テーブルの上にお金さんをスッ
占ってくれる対価だよ。
「あまり気乗りしませんね。コホンッ、では行きます」
水晶さんに両手をかざしてる。
魔力を加えてるのかな?
手でグルグルさせてるよ。
「ムムッ! ムムムッ! 捕捉しました!」
「あっ、なにか見えてきたよ」
水晶さんが光って、中になにか浮かび上がってくる。
「どこだ? 建物の中みたいだが」
壁や地面が石で出来てる。
明かりはないのかな。
真っ暗じゃないけど薄暗いよ。
「それに大きな鏡みたいなのがあるよ。もしかしてこれが……」
スゥ……
「あっ」
消えちゃった。
「とまあ、こんな感じです。残念ながらこれ以上は私の魔力が続きません、はい」
「今のがそうなのか?」
「はい、おそらく」
大きな鏡だった。
フレームさんが全体的に白かったな。
あれがぴーちゃんでいいのかな。
「場所はどこだ」
「分かりません。特定は難しいですね。まあ存在はすることは確かです。でなければそもそも何も映りませんから」
はえ~、あるんだ。
「私の占いではこれが限界です。まあ副業なんで、その辺はご容赦を」
「とりあえずあるのが分かっただけでも良しとするか」
「うん、希望さん見えてきたよ」
やっと前に進めた気がするな。
「詳しい詳細をお求めなら、師匠を当たってみてはどうです? 私でこれなら師匠だとあっさり特定してくれると思いますよ」
「ああ、そのつもりだ」
お師匠さんに会いに行くんだ。
「ならついでにコレも渡しおいてください」
テナコさんがそう言って、こっちに瓶を。
「なんだこれは?」
「恋愛運アップの薬です。効果はまあ、プラシーボ程度ですが」
「任せておけ」
懐さんにしまったよ。
恋愛運気持ちアップの薬?
お師匠さん、恋とかに悩んでるのかな?
「じゃあテナコ、ワタシはこれで」
「うん、お邪魔したよ」
用も済ませたし出ようかな。
「はい、またのご来店を。師匠に会ったらよろしくと伝えておいてください」
2人のお師匠さんか。
どんな人なんだろう。




