65.古代兵器ぴーちゃん⑪
状況を整理しようかな。
えっと、まずは今回の依頼主、ルイスさんの二重人格について。
最近、居候してる闇人格さんが身体を乗っ取ろうとしてるらしくて、それをどうにかしたいんだって。
方法は今のところ2つ。
一つは古代兵器ぴーちゃんの捜索。
噂では精神に関係する兵器らしくて、これを使えば闇人格さんを追い出せるかもしれないよ。
こっちは私とフェチョナルさんが請け負ってる。
んで、もう一つはちょっと複雑さん。
始めはルイスさんを病院に預けて、その間色々調べて方法を模索するっていう感じだったんだけど。
ルイスさんが例の薬物使用者だって分かって急きょ方針転換。
原因が薬物使用による幻覚作用っていう可能性が上がってきた。
とりあえず薬物の使用はやめて貰って、その間に出所を探ることに。
上手く行けば教団のボスに辿り着けるかもしれないよ。
こっちはメイルくんとロザリアさんが請け負ってるんだけど、大丈夫かな。
不安は色々あるよ。
でも私は任された仕事をやるだけ。
だから、
「今日も頑張るよ!」
ぴーちゃんを見つけるよ!
「随分と張り切っているのな。どうした? 昨日はあまり乗り気じゃなかっただろ」
フェチョナルさん、今日もキマってるね。
よろしくだよ。
「メイルくんの勘はよく当たるんだ。私は信じるよ」
「よく分からないが、やる気になったようだな。よし、2人で一攫千金だ」
うん、頑張ろうね。
「それで、どうする。昨日のように地道に聞き込みか?」
「う~ん、昨日はそれで結局なにも進展なかったし、あんまり意味ないんじゃないかな」
いたずらに聞き込みしても疲れるだけかも。
昨日みたいに途中で萎えちゃうのが関の山だよ。
でも、かと言って他に方法があるワケじゃないし。
「うむむ、難しいな」
開幕さん。
早くも雲行きが怪しいよ。
これはアレかな。
ずっと楽しみにしてたけど、いざやってると案外そうでもないみたいな、そんな感じだよ。
「やはりそうか。なら腹を括るしかないみたいだ」
「その言い方だと何かあるのかな?」
たしか昨日、アプローチさんを変えるとか何とか言ってたような、
「ああ。一つ当てはある。あまり気乗りしないがな」
気乗りしない?
うん?
──しばらく街を歩いたよ。
言われるがままフェチョナルさんについて来たけど、どこに向かってるのかな。
「着いたぞ」
テントさんみたいな、上がとんがってる丸い建物。
これは、何かのお店?
変な看板があるし。
よく分からないけど、この小さなボロ屋がそうなのかな。
「テナコ、ワタシだ。入るぞ」
私も入ろうかな。
一枚布さんをくぐるよ。
「お邪魔しますだよ」
わっ、めっちゃ散らかってる。
「相変わらずのとっ散らかり具合だな。全く、少しは整理出来ないのか」
これは商品なのかな?
作りかけの機械や、その部品やら何やら色々転がってる。
サビの匂いやホコリもすごいし、ガラクタ屋敷だよ。
「──ムフッ、ムフフフッ」
カウンターの向こう誰かいる。
「おい、テナコ。来てやったぞ」
「ムフフッ、おっ? おぉ~、これはなんという……」
本に夢中だよ。
こっちに気付いてないみたい。
枯れ葉みたいな茶色の髪色に、2つに分けた三つ編み。
歳がメイルくんと同じくらいの可愛い女の子。
服装からして魔術師さんだね。
広さの余る袖がズリ落ちてる。
サイズが合ってないからより子どもっぽく見えるよ。
私と同じで真ん丸眼鏡さんをかけてる。
ちょっと親近感が沸くかも。
「聞いてるのか」
「は~、素晴らしいです。この尊さ、どうやら今回は当たりのよう──」
「いい加減にしろ!」
「あいたっ」
あっ、
「な、なんですか急に⁉ まだ開店前だと言うのに、はっ! まさか強盗!? そんな、ついに私も闇組織に狙われるように!?」
「お前の店を襲撃するヤツなんていないだろ。ワタシだ。忘れたのか」
「おや? その声、年齢の割には幼児体型、それに似合わない派手派手な恰好は……」
ジ~ッって見てる。
「お前よりはマシだ」
「おおっ! フェチョナルさん! なんですか、また随分と久しぶりじゃないですか」
「前に会っただろ、バカなのか」
「そうでしたっけ? おやおや~? さてはそんなに私に会いたかったんですか~? 我慢の効かない子ですねえ~」
テンションさん高いよ。
「はあ、帰りたくなってきた」
「別に照れなくても良いんですよ。もう何度も一夜を共にした仲じゃないですか。ええ? お互いに隠し事はナッシング。久々に会うだと言うのに冷たいですねえ~」
「単に師が同じってだけだろ」
ってことは一緒の門下生さんかな。
「お前は相変わらずだな。なんだ? 昼間から何1人で本を読んでニヤついてる」
「あっ、これはその、何でもないんです! ええ、やましいことは何も。これは今進めてる研究の資料をですね……」
ササッ
「と、とにかく! 説明したところで素人には分からないんですよ! 部外者は口を挟まないでください! ハッキリ言って迷惑なんです!」
めっちゃ早口さんで本を隠したよ。
「人のプライベートに安易に踏み込むとは、もう少しはデリカシーというモノを……って、おや? あなたの隣にいる、師匠に匹敵するほどのナイスバディな女性は一体……」
「ああ、コイツは」
「はっ! 待ってください! もしやコレですか?」
その指の形は何なのかな。
「これはまさか俗にいう浮気!? そんな、私というモノがありながら!?」
「話を聞け」
「許せません許せません、ええそうです、これは私もぜひ混ぜて貰わないと到底許せない事案──」
「いい加減にしろ!」
「あいたっ」
あっ、
「少しは落ち着いたか?」
「……すみません、少々度が過ぎました。いやですね、ほんの冗談ですよ冗談」
「次はないぞ、これ以上ワタシに恥をかかせるな」
「はい、もう大丈夫です、はい」
何なのかな、この人。




