64.古代兵器ぴーちゃん⑩
──お待たせしまた。では、ごゆっくり
注文さんがやっと来た。
うわ〜、キラキラして美味しそうだよ。
さっそく食べようかな。
手を、パンッ
「いただきますだよ!」
お味の方はどうかな。
まずは前菜さんから。
「う~ん、美味しいな!」
最高だよ。
この一口で午前中の苦労が報われた気がするな。
「良かったな」
「うん! ほらっ、フェチョナルさんも食べなよ。これすっごく美味しいよ」
冷めたら悲惨だよ。
一番美味しい時に食べないと勿体ないよ。
あの後、おじさんと別れてからも聞き込みを続けた私たち。
しばらく続けてたんだけど、お昼の時間になったから一旦休憩することにしたんだ。
お腹が減ってると動けないし、パフォーマンスさんも落ちゃうから。
腹ごしらえは大事だよ。
美味しいモノでエネルギーさん補給。
次はどうしようかな。
マダムさんのところに行こうかな。
「結局情報はゼロだったな。ある程度分かってはいたが、時間が掛かりそうだ」
美味しいな、美味しいな。
「と言うか今更だが、本当にあるのか? 精神に干渉する兵器なんて代物、空想上なんだろ? 甚だ疑問になってきたぞ」
手が進むよ。
これは止まらないな。
「今思えばギルドの連中にバカにされてもおかしくない気が……おい、聞いているのか」
……ん?
なにかな、いま私ご飯食べてるんだけど。
「ちゃんと聞いてるよ。ご飯の話だよね。うん、これ美味しいよ」
無限に食べていられるな。
フェチョナルさんも早く食べないと冷めちゃうよ。
「仕事中じゃなかったのか?」
「良いんだよ。今はお昼でプライベートさんだから」
今は休憩中、
「ずっとお仕事モードだと気が持たないよ」
こうやってリフレッシュしないと。
美味しいモノたくさん食べて。
「はあ、お前は飯になると相変わらずだな。周りが見えなくなると言うか、残念になると言うか」
「人のこと言えないと思うな」
う~ん、美味しいな。
幸せになってきたよ。
「ワタシは自覚がある分マシだと思うが」
向かい側もキラキラしてる。
はえ~、そっちも美味しそうだよ。
「やる」
「えっ、いいのかな⁉」
食べ物の乗ったスプーンさんが、私のところに。
そんなご丁寧さんに。
それフェチョナルさんのだよ。
ご厚意に甘えるワケにはいかないよ。
「私はもう十分だ。それにそんな目で見られると食べづらいからな」
フェチョナルさん、小食なのか。
それなら、
「わ~、ありがとうだよ! 恩さんに切るよ!」
んじゃ、さっそく、
あ~ん……パクッと。
「う〜ん、美味しいよ! ワンモアタイムお願いするよ」
「ああ、そう急かすな」
「あ~ん……」
最高だよ。
フェチョナルさんは神さまだよ。
「引き続き午後も聞き込みか。何か進展があるといいが、あの様子じゃ難しいだろうな」
すごいよすごいよ。
食べ物の乗ったスプーンさんが目の前に現れるよ。
いくら食べても自動で出てくるよ。
「とりあえず今日はこれで行くとして、何も得られない場合はアプローチを変えた方が良いかもしれないな。だがどうしたモノか」
美味しいな、美味しいな。
「フッ、こうしているとペットみたいだ。アイツの言っていた通りだな」
う〜ん! 幸せだよ〜。
──それから時間も過ぎて、夕暮れさん。
アドレウス家の屋敷。
聞き込みも終わって帰ってきたよ。
ここはメイルくん家にある書庫さん。
えっと、メイルくんはここかな。
「失礼するよ」
中に入るよ。
「わっ、本でいっぱいだよ」
すごいよ。
棚がたくさんあって全部に本がギッシリ。
清掃も行き届いてる。
こんな部屋があったなんて。
まるで公共の図書館みたいだよ。
あっ、メイルくんがいるよ。
周りに本が散らばってる。
たくさん調べ物をしてたみたい、頑張ってるよ。
「ミチル、どうかした?」
「ちょっとそっちの様子を見に来たよ」
調子さんどうかなって。
「そう」
調べるのに夢中、すぐに視線を戻した。
「お邪魔だったかな?」
「大丈夫。ぴーちゃんはどうだった?」
「う~ん、丸一日聞き込みしたけど、特に目ぼしい情報はなかったかな」
あの後、マダムさんのところにも寄ったら、クッキーをご馳走してもらったよ。
カトリーヌちゃんも可愛いかったな。
一緒に遊んで前足をクチクチして、私もペットさんほしいなって。
ぴーちゃんのことを聞いたら知らないって。
他の人もそんな感じだった。
知っててもせいぜい噂レベルだよ。
「もうこの街で知ってる人はいないかもだよ」
「となると、やっぱり存在しないのか。妖精も知らないようだったし」
「あっ、妖精さんに聞いてくれてたんだ。気が利いてるよ」
「こっちの件の次いでにね」
あとで妖精さんにもお願いしようかなって思ってたよ。
メイルくんの協力が必要だから。
「でもそっか、妖精さんも知らないんだ。これはいよいよ本当にないのかもしれないよ」
早めに見切りをつけた方がいいかも。
「メイルくんの方はどうだったのかな?」
何か進展とかあったのかな?
「今日、ルイスさんを街の医者に診せたんだけど、二重人格かは断定できないそうだ」
「やっぱり難しいよね」
専門家とかいないだろうし。
「何にせよ衰弱してるから、とりあえずこっちで預かって安静にさせておくってさ」
「じゃあ今は入院してるんだ。ひとまず安心かな」
元気になるといいな。
「あっ、ルイスさんのことと言えば、ギルドに行ったらステューシーさんがいたよ。それでルイスさんのことも聞いてみたんだけど、特に変わったことはなくて、ある日急に休職したらしいよ」
周囲の人とトラブルとかはなかったみたい。
「お仕事は上手くやれてたみたいだったけど」
「何か起きる前にそうしたんだろう。もう限界だって本人も言ってたし」
「う~ん、本当に二十人格さんなのかな?」
今さらだけど、全部本人の思い込みって可能性も。
よく分からないけどプラシーボさん的な。
「その件なんだけど、ちょっと分かったことがある」
「なにかな?」
「ルイスさんを医者に預ける前に、ローズと一緒に彼の家にお邪魔させてもらってね。そこである物を見つけたんだ」
ある物?
「瓶に入ってる液体が数本ほど。見た目は透明、鼻をツンとなる刺激臭、味についてはミチルの方が詳しいはずだよ」
「えっ、まさかそれって……」
「そう、例の薬物だ」
薬物さん?
えっ、って言うことはだよ、
「ルイスさんって薬物依存者だったのかな⁉」
「本人に聞いてみたら精神安定剤だって。悪気なくそう話してた」
「ちょっと待ってよ、それって話が変わってこないかな?」
二十人格は、あくまでその薬物の影響で見る幻覚なんじゃ。
人によっては幻覚作用もあるらしいし。
って言うか絶対そうだよ!
ルイスさんは末期の薬物中毒者さんだよ!
「言いたいことは分かるよ。でもそうと決め掛かるのはまだ早い」
「薬物はどこで手に入れたのかな」
出所が気になるよ。
「始めは怪しい露天商から購入してたらしい。でも最近は見かけなくなったから、今はたまに路地裏に現れる、黒いローブの男から購入してるって」
「なにそれ」
裏取引みたいだよ。
路地裏さんで黒い人から購入って、それ思いっきり怪しいよ。
「とりあえずルイスさんには薬物の接種はやめてもらう。それも兼ねての入院だから」
依存症から抜け出せば、闇人格さんは消えるのかな。
「あれ? って言うことはだよ。もう解決したってことかな?」
原因は薬物接種による幻覚症状。
それを絶ったワケだし。
あとは本人の回復を待つだけ。
古代兵器ぴーちゃんなんて初めからなかったんだよ。
「経過を見てみない限りはまだ。それよりも僕が気になるのは入手ルートの方だ」
「入手ルートさん? あっ、ホントだよ。その薬物を売ってたって人を尾行すれば、出所が分かるかもしれないよ」
それに黒いローブの男ってもしかして……
「そう、教祖に辿り着けるかもしれない」
教祖、身に染める者……
「当分の間、ルイスさんは様子を見るとして。その薬物密売業者を当たってみるよ」
「そうだね、私たちもそっちに合流するよ」
ぴーちゃんの件は切り上げだよ。
「いや、そっちは引き続き古代兵器の捜索をお願い」
「えっ、なんでかな? 人数が多い方がいいと思うな」
もしかしたら強行突破するかもだし。
その時に私やフェチョナルさんがいた方が絶対いいよ。
「何度も言ってるけど、まだ薬物が原因かは分からない。彼が本当に二重人格で、そうだった時に必要になるかもしれない」
「それはそうだけど……」
「依頼はあくまで二重人格の解決。過度な脱線は良くない。このことはショートクリーム卿にも伝えておくから、こっちは僕とローズに任せて」
ショートクリーム卿。
たしかにあの人なら協力してくれると思うけど。
「私、メイルくんの助手なのにな」
別行動さんなんて。
「出来れば僕だって一緒に捜索したいさ。でも今は他にやることがあるんだ。だからミチル、この件はキミに任せるよ。これは優秀な助手にしか務まらない」
「それズルさんだよ。優秀なんて今まで言われたことないよ」
こういう時だけ褒めるなんて。
「そうだっけ?」
「そうだよ」
「実はここだけの話、結構期待してるんだ。仮に古代兵器が実在したとして、キミたちなら本当に見つけ出してくれるかもしれないって。そうなったら凄いことだ」
ちょっと、瞳の奥をキラキラさせないでほしいな。
プレッシャーさん大きいよ。
「優秀な助手って話も、僕の本心だ。どうかなミチル、お願いしていい?」
……はあ、仕方ないな。
「わかったよ。メイルくんがそこまで言うならそうするよ」
特別にだよ。
「でも無理はくれぐれも禁物さん。危なくなったらすぐ撤退するんだよ」
「うん、分かってる」
「はあ、せめて闇人格さんが出て来てくれれば、まだ信用できるんだけどな」
演技って可能性もあるだろうけど、それすらないし。
本人の話だけじゃリアルさんないよ。
「そこはまあ闇人格だし。僕らがいる前でそう易々と出てくるほどバカじゃないだろうね」
それもそっか。
う~ん、難しいな。
「とりあえず情報収集お疲れ様。明日に備えてゆっくり休むといいよ」
「んっ、そうさせてもらおうかな」
頭がこんがらがって来たから、一旦整理したいな。
はあ、今日は色んな人とお話して疲れたよ。
いっぱい歩いたから肩さん足さん痛いし。
お腹もペコペコだよ。
なんだか眠くなってきた、スリーピーさんかも。
「メイルくんも早めに切り上げるんだよ」
あんまり長居するとまたお父さんに叱れらるよ。
「分かってる」
「んじゃ、もうすぐ夕食だし、私は戻ろうかな」
書庫さんから出るよ。
私の宿舎はこの屋敷の隣だから。
「ミチル」
んっ、なにかな?
呼び止めて、まだ何か、
「ちょっと早いけど、おやすみ」
……うん。
「おやすみだよ。メイルくん」
また明日だよ。




