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54.みんなでお泊りさんだよ!

「ふう~、結構来るね、これ」


 この辺はもういいかな。

 ふう~、疲れた。

 汗さん拭うよ。


「ミチル。こっちもあと少しで終わりそうだから、一旦キリの良い所で休憩にしようか」


 メイルくん。


「そうだね。賛成だよ」


 聞いたかな。

 もうすぐおやつタイムだって。


 やる気さん出てきたかも。

 よし、そうと決まれば頑張るよ。


 ギュッっと。

 袖さんまくり直す。



 ──私とメイルくん、そしてロザリアさん。

 私たちは今、依頼で山奥にある旅館に来てるよ。

 街から少し離れたところで経営してる。

 そんなに大きな旅館じゃないんだけど、自然に囲まれる中でのんびりできるのが売りだよ。

  

 依頼内容は旅館の大掃除、そのお手伝い。

 お店自体は今は休業中で、従業員さんたちも多くは休暇を取っているそう。

 人手が足りないから私たちの手を借りたいんだって。 


 結構高いところにあるから空気が新鮮で見晴らしも綺麗。

 山奥っていうのもまた風情があって特別感がある。

 たまにはこういう依頼も悪くないかな。 


「んっ、ここはもういいんじゃないかな」


 男の方は終わったから、一度休憩して次は女性用のお風呂場。

 

「そうだね。ローズ、紅茶セットとおやつ持ってきて」

 

 お風呂場はあと半分。

 エネルギーさん補給して頑張るよ。



 

 そして、モヤモヤ〜


 ――お背中お流しするよ、ロザリアさん


 ――いえ、自分で


 ――遠慮しないでほしいな。いいからいいから、後ろを向いてタオルさん取ろうね


 ――ですから、


 ――はえ〜、真っ白で綺麗な背中……

 

 ――やめて下さい


 カコンッ

 

「ふう~、極楽さんだな〜」


 ごぞうろっぷに染みわたるよ~。

 これは一日の疲れが吹っ飛んじゃうな。

 

「おじさんのようです、ミチル様」


 温泉って初めて入るけど、お風呂と全然違うね。 

 初めはちょっと熱いかもって思ったけど、入ってしまえば極楽さんだよ。


「悪くはないです」

「だよね。たまにはこうやって羽を伸ばさないとだよ」


 う〜〜ん! 足さんのびのび〜。


「はあ、お月様が綺麗」

 

 外の景色を眺めながらゆったりお湯に浸る。

 こんな贅沢なことって中々ないよ。

 お客さんがわざわざ山奥まで足を運ぶ理由がわかる気がするな。


「ん? ロザリアさん、なに見てるのかな?」


 景色じゃなくて私の方を見てる。


「えっ、なにか変かな? 一応プロポーションさんはちゃんと維持して……」 

「いえ。何でも」

「うん?」


 何なのかな。

 う~ん、お腹周りはまだ大丈夫だと思うけど。

 

 まあいいよ。

 そんなことよりも今は温泉。


「メイルくんの方は湯加減さんどうかな?」


 隣の男湯にいるメイルくん。

 1人だから贅沢に貸し切り風呂だよ。

 

 あれ? だけど返事がない。

 もしかしてのぼせてる?


「おーい、メイルくーん!」


 ――聞こえてるー


 あっ、大丈夫みたい。

 お湯に浸かってまったりしてるみたい。

 邪魔しちゃったかな。


 でも長湯は禁物さん。


「のぼせないようにするんだよー」

 

 ──ミチルこそー

 

 フフッ、素直さんじゃないよ。


「あれ? ロザリアさん、もう上がるのかな?」


 まだ全然浸かってないけど。

 

「はい。先に失礼します」 


 もう十分温まったらしい。

 まあ人それぞれだよね。


「私はもう少しゆったりしておくよ」 

 

 ギリギリのところを攻めるよ。

 その後に飲む牛乳がまた格別なんだ。


「ふう~、極楽さん」

 

 貸し切り温泉って最高だな。




 疲労さん回復したよ!


 そして、


 キラキラ~☆


「うわぁ~! 美味しそうだよ~!」


 目の前に広がるお食事さん。

 部屋に戻ったら用意されてた。

 すごいおもてなしだよ。

 

 お皿がいっぱいあって、種類がいっぱいある。

 小物が多いけど、どれも街じゃ見かけない料理ばかり。

 真ん中にはメインディッシュと思われるお肉さんが添えられてるよ。

 はえ~、これは美味しそうだよ。


 あっ、ヨダレさん。


「すごい。こんなの僕の家でも出たことない」


 綺麗に盛りつけられてる。

 なんだろう、色の具合というか見栄えの方も重視してるのかな。

 このチョンと飾られた星型の人参さんも、もみじさんみたいで可愛いし。

 

「んー? これはプリンさん?」

 

 四角形の薄い白色で、プリンさんみたいに柔らかいよ。

 でも配置的にデザートとかじゃないんだろうな。

 あとで来るって言ってたし。

 

 はえ~、なんだか芸術的かも。

 見てるだけで楽しいな。

 

「手がつけにくいですね」

「たしかに、一理あるよ」


 お箸を入れちゃうのが勿体ない気がするな。

 ずっと眺めていたいって気持ちもあるよ。

 

 まっ、空腹には抗えないから頂くんだけど。初見さん。


「いただきますだよ!」

 

 みんなで手を合わせる。


 それじゃ、食べるよ!


「う~~ん! すっごく美味しいな!」

 

 舌さんとろけるよ~。

 

「あっさりとして良いですね」

「うん。濃い味付けじゃないから食べやすい」


 色々あるから気になってお箸が止まらないよ。


「この薄味がよりメインを引き立ててる」

 

 むっ!

 なにこれ、甘いけど美味しいよ。

 こんな味付けのお肉さん初めてだよ!

 これなんていうお料理なのかな⁉


「ホントに美味しいや。今度うちのコックにお願いしてみようか」

「これほどの深み、再現は難しいのではないでしょうか」

「それもそうか。まあ、こういう所じゃないと食べられない味ってことだね」

 

 幸せ~、もう幸せいっぱいだよ~!

 

「ほらミチル、また付いてる」

「えっ? あっ、ホントだ」

 

 美味しすぎて気づかなかった。


「フフッ、ありがとうだよメイルくん」

「どういたしまして」


 ザザッ


「デザートが来たみたいだ」

「わっ! ホントだよ!」


 デザートさんもキラキラしてるよ。

 美味しそう。

 はあ〜、来てよかったよ〜。




 お腹いっぱい、幸せいっぱい。

 大満足さんだよ!


 ──うむむ、ここかな! いざ勝負だよ!


 キラーンッ☆ バシッ!


 ──へえ~、やるねミチル。でも残念だったね、ならこうだ

 

 ──そんな、酷いよメイルくん! これじゃもう後がないよ!


 ──私の番ですね。


 バッ


 ──ええっ⁉ ロザリアさん⁉ うええええん! 2人とも酷いよ~!

 

 

 そして、


 ふわあ~、あくびさん。

 みんなでトランプやってたら眠くなってきたな。


 さっきまであったテーブルがどけられて、空いたスペースにお布団さんが直で敷かれてる。

 旅館の人が来て敷いてくれたよ。


「ふ~ん、ここで寝るんだね」

「部屋にベッドがないから、てっきり寝室に移動するのかと思ってた」

「私もだよ」

 

 旅館ってこういう感じなんだ。

 私は冒険者で慣れてるけど、メイルくんは寝られるかな。


「あれ? でもこれ2つしか敷かれてないよ」


 私たちは3人だから誰か余るよ。

 くっ付けて寝ればいけそうだけど。


「ん? そう言えばロザリアさんがいないけど、どこに行ったのかな?」

「ローズなら隣の部屋だよ。一人の空間じゃないと眠れないから、もう一部屋借りることにしたんだ」

「そうなんだ。神経質さんだね」


 寝るためにわざわざもう一部屋利用するなんて、何もそこまでしなくても。

 一人空間が好きなら押し入れとかで寝ればいいのに。


「って言うことは今日はメイルくんと寝るんだね」

「えっ? まあそうだけど。もしかしてミチルも1人が良かった? だったら僕は押し入れで」

「ううん、大丈夫だよ」


 野営する時もミホちゃんと寝てたし。


「ただ珍しいなって思っただけよ」


 いつもは使用人さん用の宿舎で寝てる。

 敷地は一緒だけど、メイルくんとは住んでる建物が違うから。


「そう、ならいいけど……」

「そうと決まれば早く寝るよ! 夜更かしさんは美容の天敵だよ!」


 こういう時ってはしゃぎたくなる気持ちも分かるけど、お話したい気持ちをぐっと我慢して明日に備える。

 ちょっと物足りないくらいが丁度いいんだよ。

 その分、明日が楽しくなるから。

 

 って、ミホちゃんが言ってたよ。


「おやすみだよ、メイルくん」

 

 だから、はい。

 

 みんなが可愛くなれる時間。


 

「……ミチル」

「んっ、なにかな?」


 真っ暗で静かな中、私を呼んで。

 

「いや、やっぱり何でもない」


 んー、もしかして怖いのかな?

 なら一緒に……いや、メイルくんに限ってそれはないだろうし。

 じゃあ何なのかな。

 やっぱり眠れない? 

 

「ジッと目を瞑ってればいつの間にか寝てるよ」


 年長者からのちょっとアドバイスさん。


「そう……」


 メイルくん、モゾモゾしてる。

 寝返りを打ちながら自分のベストポジションを探ってるよ。 

 

 無音だからちょっと布団から動いただけでも音が聞こえる。

 部屋の軋む音、雑音がしただけで周りがピシャッてなる。


 こういう雰囲気。 

 メイルくん、やっぱり眠れないのかな。

 自分の部屋じゃないし、いつも使ってる毛布さんじゃないとダメって人もいるし。

 

 ぬいぐるみがないと眠れないのかな。


 こういう時はそう、クマさんを数えるのがいいんだよ。

 お花畑でハチミツを食べてるクマさんを想像するんだ。

 

 ここはお花畑。

 そこにクマさんが一匹。

 綺麗なお花に囲まれながら、ハチミツを美味しそうに食べてるよ。


 ほらっ、いっぱいやって来たよ。


 数えようかな。 

 ハチミツを持ったクマさんが1匹、ハチミツを持ったクマさんが2匹、ハチミツを持った……キミはハチミツを持ってないからダメだよ。


 続けるよ。

 ハチミツを持ったクマさんが3匹、ハチミツを持ったクマさんが4匹、ハチミツを持った……


 はえ〜、ハチミツさん美味しそう。

 

 ハチミツさんが1匹、ハチミツさんが2匹、ハチミツさんが3匹、ハチミツさんが……







 ――チュンチュン、チュンチュン


「ふわあ~、おはようだよ~」


 朝さん。


 気持ちの良い寝起きだよ。

 何だかんだ言ってよく眠れたな。


 モゾッ


 ……んっ? 今なんか動いたよ。

 私のすぐ隣で、

 

「あれ? なんでメイルくんが」


 ここ私の布団だよ。

 なんで勝手に入ってきてるのかな。

 

「う、う~ん……」


 あっ、起きそうだよ。


「朝か……ミチル、おはよう」

「うん。おはようだよメイルくん」

 

 まだ眠たそう。

 あんまり眠れなかったのかな?


「それで、いつの間に私のところに入ったのかな?」 


 昨日はメイルくんと一緒の布団で寝たってことだよね。

 別に怒ってるワケじゃないけど、お邪魔するならそうするって、


「はあ、ミチルは何を言っているんだ。ひょっとしてまだ寝ぼけてる?」

 

 ……へっ?

 ボケてるのはメイルくんの方じゃ、


「布団に入ってきたのは僕じゃない。キミが入ってきたんだ」

「えっ、いや、何を言ってるのかな。そんなはずは……」 

「キミは最初左の布団にいたよね。今いる右の方じゃなくて」


 あっ、左側に布団が敷いてある。

 カバーがめくれて色々乱雑になってる。

 私が最初いた場所だ。

 でも今は誰もいないよ。

 

 えっとつまり、ここがメイルくんのってこと?


「はあ……あのさミチル、熟睡するのは良いんだけどもう少し何とかならない? 隣にいる僕の身にもなってほしいんだけど」

 

 あっ、結構怒ってる。


「僕はキミの抱き枕じゃない。まったく、僕はもう少し寝るから、キミはこの布団からすぐに出て行って」

「あっ、ごめんだよ」

 

 すぐどくよ。


「じゃあ、おやすみ」


 二度寝しちゃった。


 ……あれ?

 っていうことは、

 

 

 えっ? もしかして私、寝相悪いのかな?

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