21.妖精さんからの依頼②
「妖精さんが!? ええっ⁉」
妖精さんが見えるって……
なにかなその新情報!?
そんないきなり言われても、はい、そうですか。とはならないよ!
「あっ、もしかしてまたからかってるのかな?」
そっか。
いつもみたいに私をおちょくってるのか。
すっかり信じきった私に、ドッキリ~って。
この前みたいに盛大に笑うつもりなんだ。
危なかったよ。
また危うく騙されるところだった。
私の純粋さんを利用しないでほしいな。
はあ、よく考えなくてもそうだよ。
だって妖精さんが見えるなんてあり得ないもん。
神秘的にも、種族的にもそう。
「エルフさんならともかく、メイルくんは人間だよ。見えるワケないよ」
そんな見え見えの嘘に騙されるほどバカじゃない。
「私を甘く見ないでほしいな!」
フンッ
「こう言っておられますが」
「まあ、当然の反応だ。いきなり言われて信じる方が無理がある」
いや、信じるも何もドッキリだよね、それ。
「どうします?」
「まあ、ミチルは置いて進めるしかないね」
まだ続けるんだ、これ。
しつこいね。
どんだけ私をあざむきたいんだよ。
「放っておいてごめん。じゃあ僕は今から妖精と話をするから、2人は静かにね」
お話するって、一人芝居でもするのかな?
「こんにちは、僕はメイル。ここの探偵事務所の所長で──」
うわっ、ホントに始まったよ。
「そっか、あのチラシを見て来てくれたんだ。配って良かったよ」
バレバレの演技なんて見るに堪えない。
痛々しいよ、メイルくん。
「ロザリアさん、ちょっといいかな」
「はい」
「メイルくんはこう言ってるけど、ぶっちゃけどうなのかな? 妖精さんが見えるって」
いい加減ホントのこと言ってほしいな。
「いえ、私にも見えませんので確証はありません」
ロザリアさんは見えないって設定か。
無駄に凝るのやめてほしいな。
なるほど、あくまでシラを通す気か。
「ふ~ん、子どもの言うことを間に受けるんだ〜。言っちゃ悪いけどバカげてると思うな。ロザリアさんって意外と単純さんだね」
お堅そうにしてるけど、それは雰囲気だけ?
「はい。嘘とも断定できませんので」
「それはただの屁理屈って言うんだよ。知ってるかな」
はあ、やれやれだよ。
まあ分かるよ。
メイルくんは年頃の男の子。
こういう妄想の1つや2つはするよ。
心配いらないよ。
男の子なら誰もが通るらしい道だから。
って、ミホちゃんも言ってたし。
──そっか、掃除にしようにも邪魔されるのか。可哀そうに
そろそろ諦めた方が良いと思う。
──なるほど、それで僕たちの手を借りたいってことだね
ほらっ、見てほしいな。
今のメイルくん、ネタばらしするタイミング完全に見失ってる。
引くに引けなくなってるよ。
「お待たせ。終わったよ」
うん。
一人芝居、お疲れさま。
「それで、どうなったのかな?」
次は一体どうするのかな?
聞かせてほしいな。
「手短に言うよ。今回の依頼はとある屋敷の掃除。妖精1匹じゃ大変だから、僕たちに手伝ってほしいそうだ」
屋敷のお掃除?
ふ~ん。
「はい、ちょっと質問だよ」
挙手。
「ミチル、どうぞ」
「ずっと気になっていたんだけど、妖精さんって本来、森の中にいるはずだよ。それも人が踏み入らない奥深くとかに」
人間やその建造物には一切干渉しないはず。
例外はエルフさんだけだよ。
「それがなんで屋敷になるのかな? 今ここにいることもそうだけど、全く関連性が見えないよ」
おかしいと思うな、全体的に。
「いや、案外そうでもないんだ。本とか言い伝えではその通りなんだけど、実際は妖精って意外とその辺をウロウロしてる。それこそ日に一度は見るくらいにね」
メイルくんには普段が何が見えてるのかな。
怖くなってきたよ。
「彼女が言うにその屋敷は昔、友人が住んでいたらしい。もう亡くなってるそうだけど、生前に良くしてもらっていたそうで、その恩返しがしたいんだって」
友人?
それって、人間のお友だち?
メイルくんみたいに妖精さんが見える人が他にいたってこと?
「じゃあ、さっそく行ってみよう」
「あっ、ちょっとメイルくん。行くってどこに行くのかな?」
そんな如何にもなケープを羽織って。
外出する気満々だけど。
「どこの屋敷なのか教えてほしいな」
「詳しい話は行きながら説明する。その方が色々と短縮できるからね」
短縮? 勿体ぶらないでほしいな。
まあいいよ。
おやつ食べたばっかりだし、食後の運動にちょうどいいかな。
私も支度するよ。
「と、その前に。先に行くところがある」
「ん?」
行くところ……?
──少しだけカットするよ。
ここは事務所を出て、およそ10分くらいの場所にある。
ボロ屋とかじゃないけど、中々年季の入った立派な建物の真ん前にいるよ。
んで、メイルくん。
「なんで私たち、ギルドの前にいるのかな」
これギルド。
いや、どういう経緯だよ。
「ん? だって僕1人じゃ入れないし」
「それはそうだけど」
「ローズから荒れてるって聞いている。だからミチルには付き人として同行してもらった」
要するに、よくある保護者同伴ってヤツ。
そう言うところって色々あるよね。
中途半端とは言え、荒れてるのは事実。
みんな目が合ったらガン飛ばして来る。
困ったことにギルドにいると喧嘩っ早くなる人が多いんだ。
トラブルにでもなったら大変だよ。
私を連れて正解かな。
「って言うか、またロザリアさんいないし」
「うん、ローズには店の番を任せてある」
留守番? なにあの人。
ちょっとサボりすぎなんじゃないかな。
「妖精のお世話も任せてあるよ」
「いや、ロザリアさん見えてないよね。見えないのにどうお世話するのかな。絶対サボって本読んでるよ」
ホントに使用人?
それらしいことなんて何一つやってない。
せいぜい私の面接くらいだよ。
最近思うんだけど、あの人って引きこもりさんなのかな?
妖精さんが帰ってないか心配だよ。
いや、信じたワケじゃないけど。
「中はどうなってるんだろう」
「そっか。メイルくん、まだ入ったことないんだったね」
メイルくんにとってギルドは初めて来る場所。
やっぱり最初は戸惑う──
「じゃあ入ろう」
「あっ、メイルくん!」
ちょっ、初見さんなら少しためらおうよ。
お邪魔するよ。
ふ〜ん。
久々だけど相変わらず殺伐としてるね。
ガラが悪いって言うか、眉間にシワが寄ってると言うか。
ここが街の中にあるとは思えないよ。
で、やっぱり。
ほらっ、周りからジロ〜って見られてる。
なんでそうやってとりあえずガン飛ばしてくれるのかな。
カッコいいと思ってやってるのかな。
そりゃそうだよ。
子どもが入ることなんて滅多にないからね。
物珍しいもん、私だって見るよ。
「メイルくん、目を合わせちゃダメだよ。危ない人たちだから」
「分かってる。受付はあそこだね」
改めて思うけど、こんな物騒なところに何の──
「──おうガキンチョ。ガキンチョがこんなところに何の用だ」
ザッ
むっ、大の大人が2人。
私たちの前に立ち塞がってきた。
「姉ちゃんと一緒にどうした。冒険者ごっこか? ハッ、楽しそうだな。俺らも混ぜてくれよ」
ガラの悪いおじさん冒険者だ。
ほらっ、さっそく絡まれた。
言わんこっちゃないよ。
……はあ
「ここはお前みたいなガキの来るところじゃねえ。そうだな、あと2、3年経ってから出直し──」
「あんまり舐めないでほしいな」
杖さんの先端を、おじさんの首元に、ピトッ
「うっ……」
「お仕事の邪魔だよ」
早くどっかに行ってほしいな。
「ミチル、目立ってる」
んっ、やるなら私がまとめて相手になるよ。
ガン飛ばすならまだしても、喧嘩を吹っかけてくるならこっちだって。
調子に乗ってるとこうだよ。
首元に杖さんグイ、グイ
「親切に忠告してくれたんだよね。武器を向けるのは失礼だ」
「命拾いしたね、おじさん」
杖さんを引っ込む。
メイルくんに感謝してほしいな。
「チッ、余計だったな。行くぞ」
──なんだアイツ、とんだ狂犬じゃねえか。
──やべぇよ……やべぇよ……
ふんっ
「ミチル、殺気立つのは分かるけど、あまりことを荒立てないでね」
言われなくてもだよ、メイルくん。
「なるほど、ローズの言っていたことがよく分かったよ」
ふんっ




