11.新米冒険者からの依頼①
前回のあらすじ!
私、ミチル=アフレンコ16歳はある日、自身が所属するパーティのリーダーと喧嘩。
そのまま勢いで飛び出しちゃった。
仕方なく新しいパーティを探すことになるんだけど。
これが全然上手くいかなくて。
意外にも大苦戦。
パーティが見つからず途方に暮れる私。
ミホちゃん……
グスン
そんな時、とある募集が偶然目に入った。
『メイル探偵事務所、助手一名募集』
なんだろう。
行ってみることにした。
その場所を訪れた私。
そこはなんと貴族のお屋敷だった。
まずは綺麗で物静かそうな女性、ロザリアさんと面談。
次に、日をまたいで当主さんと。
お仕事の内容はここの当主、メッセさん。
彼のお子さんが近ごろ探偵事務所を開くそうで、そのボディガード頼みたいとのことだった。
家庭の事情、超待遇の後押しもあり、私はそれを了承。
お引越しも完了して、初めての職場。
そこで私はメイルくんと出会う。
お互いの自己紹介も終え、話も順調に進む中、突然事件は起こった。
それはメイルくんが急に、私を助手とは認めないとか何とか言い出して……
あとは自分で思い出してほしいな。
「フンフフ~フン、フフフフン♪」
ここは私が住んでる街。
建物が多く並んでるんだけど、どれも古風で変わってる。
都会過ぎず、かと言って田舎過ぎない。
そんな街。
故郷や王都と比べるとやっぱり不便だけど、ここにはここの良い所がある。
派手さはないぶん、落ち着きがあって夜は眠りやすい。
治安だって悪くないし、住民さん同士のトラブルもほとんどない。
なにより、
「あっ、こんにちは~」
みんな気さくで良い人ばかり。
あいさつしたらちゃんと返してくれるんだ。
私の育った街とは違って暖かさがある。
暮らすには良い街だよ。
ここに来てもう2年が経つけど、来た頃と全く変わらない。
耳をすませば、小鳥さんたちのさえずり。
みんな気づいてるかな?
自然と溢れる笑み。
土地柄に合った柔らかい空気感、この匂い。
私はこの街の雰囲気が好き。
歩いてると、ほらっ
不思議なメロディーが聞こえてくる。
ル~ルル~ル、ルルルル♪
ルルルル~ル、ルルルル~♪
「フフフ~フ、フフフフ~♪」
まっ、いま私が口ずさんでるだけなんだけど、初見さん。
「フフッ……あっ」
そうしてる間に、ついたよ。
周りと比べて比較的新しめな建物。
2階建てのちょっとノッポさん。
ここが私の職場だよ。
「いま戻ったよ、メイルくんっ!」
暇だから散歩してたけど、帰って──
「──だからッ! 違うと言ってるだろ!」
バンッ!
わっ、急になにかな!?
「いいか! 何度も言うがワタシはれっきとした大人だ! お前と一緒にするな!」
「いや、年齢とか関係なしに、そういう所が子どもだって言ってるんだ」
中にいるのは、いつも通りメイルくんとロザリアさん。
それと、女の子?
なんだろう、メイルくんより背が高いのかな。
見た感じ12、3歳くらいと思う。
とんがり帽子で分かりにくいけど、2つに結んでる青っぽい髪。
瞳は青と紫の二色がグルグル混ざりあった感じ。
奥にはうっすらとお星様が浮かんでる。
恰好は私と同じで、魔術師みたいなローブを着てるね。
でもちょっと派手かも。
アレかな? 動きやすさを重視しているのかな?
そんな子がメイルくんと揉めてるよ。
……って言うか、ロザリアさん。
なに子どもが喧嘩してる隣で、呑気に本なんか読んでるのかな。
1人優雅に紅茶なんてキメちゃって。
どうして知らないフリを決め込んでいられるのかな。
「お前生意気だぞ! 子どもなら大人を敬え!」
「そうだね、こんな大人にはならないよう努力するよ」
「っ、この!」
うわぁ、色々とカオスだよ……
もう見ていられないよ。
とりあえずお姉さんである私が何とかしないと。
あの、メイルくん。
その子はお客さんでいいのかな?
「むっ? 誰だお前は」
あっ、声をかける前に気付かれた。
「はあ、ちょうど良いところにきた。子どもでは話にならなくてな。悪いがここの店主に変わってくれ」
「よく言うよ、キミも子どもじゃないか」
「ワタシは18だ! もう立派な大人だぞ!」
えっ、この子……私より年上なの?
「おいお前、今ワタシの年を疑ったな?」
ギロッ
「へっ? そ、そんなことないよ!」
なんで分かったのかな⁉
って言うかそんな獣みたいな眼光で睨まないでほしいな!
怖いから!
「顔に出ていたからな。例え神父の目は誤魔化せても、ワタシの目はごまかせないぞ」
えっ、そんなに?
私って案外分かりやすいのかな。
いや、そんなことないと思うけど……
「ふんっ、まあいい。まさかお前がそうなのか? まだずいぶんと若いようだが。なら折り入って頼みたいことがあってだな」
「ううん、違うよ。私は店主じゃないよ」
「むっ、そうか。なら──」
「その必要はないよ。だってもういるし」
私の隣に、
「……へっ?」
「だから何度も言ってるよね。はあ、キミも話を聞かないタイプなんだね」
ほらっ、メイルくんも言ってる。
「なっ⁉ まさかこんな、まだ声変わりもしていない、ワタシよりおチビな子どもがか!?」
「あとナチュラルに失礼だね」
「お、おい……」
私に確認を取ってる。
メイルくんをちょんちょん指さして。
「うん、そうだよ」
メイルくんが店主だよ。
それがなにかな?
「しょ、正気か……?」
来るお店を間違えたみたいな反応だね。
まあ、分からなくもないよ。
子どもが店主だとビックリするよね。
「ふんっ、チビで悪かったね。でも今だけさ。あと2、3年もすれば、キミなんてあっという間に──」
「ぐぬぬ、言わせておけば……」
「ちょっとメイルくん、いい加減にしなよ」
もう、メイルくん……
なんでそんなこと言うのかな。
相手はお客さんなんだから。
「とりあえずキミも落ち着こうよ、ねっ? あっ! そう言えばマダムさんからクッキーを貰ったんだ!」
ちょうどいいし、今からおやつに──
「うぅ~~っ、子ども扱いするなあ!!!」
あっ、
「まったくどいつもこいつも! この街のヤツらは一体全体どうなっているんだ! なぜみんなして人を見た目だけで判断する!? ワタシは子ども扱いされるのが一番嫌いだ!」
うわぁ……
「僕だってそうさ。キミは自分がされて嫌なことを人にやるんだね」
「お前はまだいいだろ! ワタシは実際に大人だから問題なんだ!」
ワーワー! ワーワー!
はあ、どうしたらいいのかな。
収集つかないよ。