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ただ幸せに、なりたかった2(オスカーハピエンバージョン)  作者: 香田紗季


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読みに来てくださってありがとうございます。

よろしくお願いいたします。

 クレアが、そこにいる。


 オスカーが探し求めたクレアが、そこにいた。


 オスカーが知っているクレアよりも少しだけ血色がよくなって、頬もふっくらとしてる。


「もう少し健康な身体になったんだ。だが、眠り続けている間に少し痩せた。水分は何とか取らせているが、どうやって生きているのか俺たちには分からない。」


 フレデリックの言葉に、オスカーがつぶやく。


「随分大事にしてくださったんですね。あんなに痩せ細っていつも寂しそうな笑顔だったクレアが、こんな顔をしている……」


 オスカーがそっとクレアの手を取った。フレデリックの肩がピクッと動いたが、フレデリックは耐えた。


「クレア、迎えに来たって言いたいところだけど、クレアがどうしたいか聞いてからじゃないと、クレアをグラシアールに連れて帰るわけには行かないね。」


 オスカーはフレデリックを見上げた。


「デリック、わがままを一つだけ叶えてほしいのです。この指輪を付けさせてください。目が覚めた時に、俺が来たって分かるように。」

「いいだろう。」

「ありがとうございます、デリック。」


 オスカーは、あのエメラルドの指輪を取り出すと、左手の薬指に填めようとした。


「あれ、はまらない・・・」

「それだけクレアに食べさせたからな。最初の頃は、もう寝ろと言わなければ24時間俺の世話をするつもりだったようだ。」

「クレアらしい・・・仕方ありません、小指に付けます。」

「小指か。」


 フレデリックには、左手小指にはめる指輪の意味が分かる。二人で選んだ指輪を、オスカーが左手の小指にはめた。「願いを叶える」という意味を持つ左手小指の指輪。


「クレアが目覚めたとき、俺の傍にいることを選ぶかどうかは分からない。でもね、クレア。君の願いなら、俺もデリックも叶えるために全力を尽くすよ。」


 小さくフレデリックも頷いた。


・・・・・・・・・・


 オスカーは、グラシアールに、クレアを見つけたという知らせを送った。本来はクレア探しの旅だったのだから、見つかったなら戻らねばならない。だがオスカーは、クレアが不死鳥の呪いを解いた代償として昏睡状態にあること、クレアの庇護者が王弟であり不死鳥騎士団団長であること、そしてその団長がいつも守れる状態にないため、自分が傍にいるようにと指示を受けており、こちらの公爵騎士団に派遣した形を取ってほしいことを伝えた。


 ロジャーとジュリアは狂喜した。クレアが見つかったとジュリアは医務部中騒いで回り、その夜医務部内は大宴会になったという。


「クレアが元気になったら、必ず顔を見せて!」


 まるで子どものように跳ね回っているような大きな字で書かれたジュリアからの手紙に、オスカーは微笑んだ。


「こちらのことは気にしなくてよい。お前が亡命したのでなければ問題ない。」

 

 そう書かれたロジャーの手紙からは、「氷狼の騎士」を引き抜かれないかと危惧する王都の騎士団や王たちからの圧力の強さを感じ、申し訳ないと思った。


 クレアは今日も目覚めない。窓の外の空気の湿度に、まだオスカーは慣れない。潮風にべたつく肌。オスカーはクレアの額の汗を拭った。


「ロターニャの夏は暑いな。クレアは平気か?」


 公爵騎士団での仕事は、鍛錬とクレアの看護と言われた。朝、鍛錬を終えてクレアの所に来ると、ここ最近同じ言葉ばかりかけてしまう。フレデリックは、グラシアールの「氷狼の騎士」と友人になれたことがうれしいらしく、グラシアールと軍事同盟を結ぶよう国王に進言すると言って意気揚々と王都に行った後、なかなか戻ってこない。


「いつクレアの目が覚めるか分からないから、時々見に来てください。」


 オスカーはフレデリックにそう手紙を書くが、どうやら問題が発生したようで、クレアのことを頼む、とばかり返事が来る。今のオスカーは、フレデリックに身元保証してもらっていることもあり、何も困らない生活をしている。騎士団の寮に入りたいとお願いしたが、クレアの看護があるからと公爵邸の客間に通された。クレアの部屋の隣だ。夜の護衛も兼ねろということだとフェルディナント公爵に言われて、オスカーは気を引き締めた。


「真面目だな、お前は。」


 苦笑いするフェルディナントに、デニスはしれっと言った。


「そういう方でなければ、殿下がお嬢様をお任せになるはずはありません。」


 そうか、信頼してもらえているのか。


 オスカーはその信頼に答えるべく、クレアの世話をした。クロリスとジルとも仲良くなり、フレデリックの世話をしている時にあったことを教えてもらい、グラシアールでどれほどひどい虐待を受けていたかを話した。クロリスとジルは激怒していたが、家族が処刑されたと知ると、それはそれで後味が悪いなあ、などと言っていた。


 平和な毎日だった。クレアが目覚めたら、こんな話をしよう、あそこに行こう・・・オスカーの夢は膨らんでいく。だが、そんな平和な日々に終わりがやって来た。疲れた様子で公爵邸にやって来たフレデリックが、オスカーに告げた。


「スタリオンが動き出す。」


 密偵たちからの報告によれば、青龍騎士団に新兵器が装備されたという。その新兵器がどのようなものなのか、そこまでは分からないという。


「スタリオンは凍らぬ大地と海を求めている。グラシアールとロターニャのいずれか、もしくは両方に攻め込むと決めたようだ。オスカー、お前はグラシアールに戻るか?それとも、ロターニャに加勢してくれるか?」

「クレアがいますから、ロターニャに加勢します。グラシアールが攻めこまれた場合は、離脱することを許していただければ。」

「すまない。だが、『不死鳥の騎士』と『氷狼の騎士』がついているんだ。負けやしない。」

「もちろんです。クレアが目を覚ました時には必ず戦争が終わっているように、片を付けましょう。」

「心強いことだ。『婿殿』?」

「は?」

「娘と結婚したら婿だろう。俺はオスカーを認めている。今度の戦争で、周りの連中を黙らせるような働きを見せろ。そうすれば、お前がクレアと結婚しても誰も文句を言えないだろう?」

「……クレアを養女にしたんですか?」

「ああ。いろんな意味で庇護する必要があったからな。

「それに、クレア、こちらでも人気あるんですか?」

「こちらでも、な。会って話したことのある人間なら誰でも。パットだって一目惚れだったらしい。求婚して断られたって言っていたぞ。」

「そんな話、聞いていませんよ!」

「だから、お前が誰からも文句を言わせないようになればいいい。」

「分かりました。全力を尽くします。」

「俺は一度王都に戻って、出撃に備える。お前も準備しておけ。」

「分かりました。」


 その日、オスカーはフレデリックから軍馬を一頭贈られた。騎馬がなければ歩兵になってしまう。フレデリックはオスカーを一兵卒扱いしなかった。将校クラスの扱いにした。その証拠として、フレデリックが認めた馬を贈ったのだ。王都ではオスカーについて様々な噂が飛んだ。だが、本人は公爵邸から出てこない。スタリオンとの戦いでオスカーの真価をはかろうとする者たちが、虎視眈々としていることを、オスカーは知らなかった。


・・・・・・・・・・


 その頃、スタリオンでは軍事作戦の変更が完了し、出撃命令を待つばかりとなっていた。ロターニャの不死鳥騎士団の団長が復活したのは痛いが、今回はしっかり対策も立てた。スタリオンの青龍騎士団団長ルシファーは、遙か遠くを見やった。青い海を手に入れるのは、もうすぐだ。

読んでくださってありがとうございました。

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