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ただ幸せに、なりたかった2(オスカーハピエンバージョン)  作者: 香田紗季


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読みに来てくださってありがとうございます。

微変更かな?

よろしくお願いいたします。

 魔女は狂狼病のための魔法薬を作り、ロジャーに飲ませてくれた。幻覚に苦しみ始めていたロジャーだったが、今は眠っている。熱も下がり、化膿した箇所の消毒もできた。ジュリアは魔女に尋ねた。


「狂狼病の治療薬は、どの素材にどのような効果があるのでしょうか?私には、解熱・消炎・抗菌しか分かりませんでした。」

「そうだよ。」

「で、でも、狂狼病の治療薬って・・・。」

「普通の薬と魔法薬の違いは?」


 突然魔女に質問返しされたジュリアは驚いたが、素直に作る時に魔法を使うか使わないかの違いだと答えた。


「その、作る時に魔法を使うって、具体的には?」

「え?通常では溶けないものを溶かしたり、通常条件下では結び会わない成分をくっつけたり、ばらしたり・・・。」

「そういう認識なら、本当の意味の魔法薬は作れないよ。」

「どういうことでしょう?」

「魔法が成分として含まれるから、魔法薬なんだよ。」

「魔法が、成分・・・。」

「例えば、そもそも素材が持っている効能を増幅させたり、患部の時だけを止めたり、幻覚を消したり・・・。」

「幻覚を消す?」


 ジュリアは食いついた。オスカーの治療の糸口として、魔女に聞きたかったことを、魔女の方から教えてくれている。


「幻覚キノコにやられる奴が、毎年秋になるといないかい?あれは幻覚キノコの幻覚成分さえなくなればいいんだから、体内に残っている成分を魔法で分解するんだ。変な所で変なものの分解を始められちゃ困るから、素材に分解させる魔法を仕込んでおいて、その成分が目的の場所に来たのを確認して発動させる。そうすれば、成分が消えるから幻覚は見なくなる。」

「どうやって、成分が目的の場所に到達したって分かるんですか?」

「どうやってって、素材にマーキングしておくだけじゃないか。」

「マーキングした素材が到達するまでスキャンするんですね?」

「経験を積めば、目星が付くようになるよ。」


 ジュリアの目を見て、魔女は言った。


「お前さんが本当に魔法薬のことを勉強したいと思うなら、今ある問題が全て片付いてからおいで。クレアのこと、頼んだよ。」

「全てご存じなのですか?」

「ああ。カラスやコウモリを使えば、遠い町のことも見えるからね。」

「必ず参ります。あの、先に帰って、治療したい人がいるんです。ロジャーは置いていっていいですか?」

「置いていかれたと泣くだろうが、まあ、話はしておいてやるよ。但し、お前さんも一筆書いてやりな。好いた女に逃げられたと思わせると、ああいう男は何をするか分からないからね。」


 ジュリアはロジャーに先に帰ること、騎士団で待っていることを認めると魔女に預けた。


「ありがとうございました。お代はロジャーが払います!」

「あの男が払わなかったら、うちでしばらく肉体労働でもしてもらおうかねえ。」


 ジュリアはクレアのように頭を下げた。そして、騎士団へと足を急がせた。


・・・・・・・・・・


 オスカーは、自分が夢の中にいると知っている。だが、夢からなかなか覚めない。スカーレットがこちらを見て微笑んでいる。愛しいと思う気持ちの向こうにスカーレットを不快に思う気持ちが重なって見える。感情が見えるなんて、どうしてなんだろう。そうして、矛盾した感情が見えるのは何故なんだろう。オスカーは分からない。スカーレットを超えた向こう側に、何かがいるのが見える。だが、それが何か分からない。もどかしい気持ちになるが、体はスカーレットの所で止められてしまう。


「オスカー様ぁ、私のことを一生愛するって仰ったんですから、他の女になんて目を向けないでくださいまし。」

「スカーレット・・・。」


 媚びた視線。甘ったるい声。語尾を伸ばした、頭の悪そうな話し方。ベタベタとくっつく品の無さ。お辞儀・・・そういえば丁寧な美しいお辞儀を見ていない。ちょっと寂しそうで、でも柔らかく微笑む顔。あれは・・・。


 レモンの香りがする。突然、スカーレットの向こう側に透けて見えた人物がはっきりと見えた。ちょっとうつむき加減にしてこちらを見ている。


「オスカー様・・・」


 ああ、この声。そうだ、この耳に優しい声。レモンの香りを漂わせた、この人は・・・


「クレア!」


 叫ぶと同時に目が開いた。


「オスカー!見える?聞こえる?」

「医務部長・・・。」

「私が分かるのね?」

「はい。クレアは?」

「思い出せた?」

「はい。全て思い出せました。川に転落したのも、クレアですよね?無事ですか?」

「そのことは後にしましょう。まずは、あなたの健康チェックからします。」


 唐突にジュリアの声が固くなる。クレアに良くないことが起きたのだろうか。まさかあのまま、見つかっていないのでは・・・。


「クレアはまだ見つかっていないんですね?」


 ジュリアの動きが止まり、そして肩が小刻みに震え始めた。


「私は、私の部下を追い詰めた奴を許さない。」

「クレアを探しに行きます。」

「オスカー。あんたがすべきことは、まずどんな状況で薬を使われたか、その状況を報告すること。それから健康チェック。初めての魔法薬を使ったからね。あんたはまだ人体実験中で、自由がない。後遺症が出るかもしれないし、思い出せるのが一日僅かな時間かもしれない。様子を見て判断するから、許可が出るまではこの部屋を出てはいけない。」

「でも、クレアが!」

「クレアの捜索はもう打ち切られているよ。」

「2週間以上俺はここで寝ていた・・・?」

「そうだよ。事情聴取もあるからね。あんたはクレアの家族を追い詰めるための重要な証人なんだ。あんたの体に残っていた薬の成分と証言だけが、クレアの家族を罪に問える。だから、向こうから接触されても困る。そういう意味でも、部屋を出てはならない。いいね。」


 ジュリアは立ち上がった。


「ロジャーに報告してくるよ。」


 ロジャーはすぐに来てくれた。だが、ロジャーは部屋の中と外に騎士を二人ずつ置いていった。


「俺は犯人扱いか?」

「いや、重要参考人だ。お前にクレアを探しに行かせないため、そして参考人を消そうとする輩からお前を守るため、俺たちは配置されている。分かったら、寝ていろ。」


 先輩騎士に言われて、オスカーはベッドに後ろ向きに倒れ込んだ。


 俺は、スカーレットとあの両親を、絶対に許さない。

読んでくださってありがとうございました。

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