ロゼ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
渡の友人の話です。
女の子だけなので、相変わらず距離が近いです。
苦手な方はご注意下さい。
デスクワーク中、私は思い切り背筋をしならせ伸びをした。全く同じ作業を繰り返しているせいで、肩が凝る。そろそろ気を逸らそう。そう思って何の気なし視線を逸らした。
一枚扉から覗く、光景を見て思わず息を飲んだ。そうする事数秒。漸く動けるようになって、足元で口を開けている鞄の中から財布を引っ張り出す。隣人に一言。彼女は此方には目もくれずに延々とキーボードを叩いていた。
「すいません。ちょいと席を外します」
「いてらー」
返事を待たずにフロアを出ると、とろとろに煮詰まった夕暮れ。白桃を丹念に崩して、とろ火で炙ったような光景が広がっている。より近くで見る為に、私は窓際まで歩み寄った。
太陽が地平線に落ちかけて、辺り一面の熱を上げる。灼熱の息吹で全てをとろかしているようだった。あぁ、そういや、この間友人とこんな話をしたな。
あれは確か……夕暮れの公園だった。子供達は家路に帰る時間で、辺りには誰もいない。女二人、互いが互いに桃のジュースを肩手に静かな時間を過ごしていた。
――この時間の景色はカクテルのようで、とても美味しそう。
――そうか? 私はシードルとか、ロゼに見えるけど。
誰も居ないのをいい事に、脚を伸ばす。筋肉も緩んで、気だるさ倍増。持ってんのが酒じゃなくて良かった。酔いが回って膝枕願い出そう。
気だるい私の行動に、友人はきょとんと小首を傾げた。
――ロゼ……とは?
――あぁ、君にでも知らんものがあんのか。これだよ。
私は腿の脇に飲みかけの缶を置くと、スマホをいじって彼女に渡した。画面いっぱいに広がるのは、この夕暮れのような淡い桃色。透き通る様なこの色は、酒の中で最も愛らしい物だと思う。
彼女は両手で、そっとスマホの画面を包み込むと、この空色に頬を染めた。
――物知りですね。そして凄く良い色です。
そうして、ジュースを味わった後、私達は家路に着いた。何も無かったけど、あの空気だけが全てだったけれど、悪くは無かったあの時。
私は追憶を胸に抱いたまま、そのままエレベーターに乗って外に出た。向かう先はコンビニ。リーチインの中で仲良く身を寄せあってる一缶を選び取り、そのままレジへ。
「お帰り。何を買ったの?」
「ロゼです。飲みたくなってしまいましてね」
掌の中にくるまって居るのは、淡い桃色の缶。あの日飲み交わした、ロゼ色の缶。元気にしてるだろか? 仕事終わったら連絡するわ。親愛なる友人、渡。
渡の友人
女武者を連想させる様な、凛々しい見た目。
性格も違わず、やや男勝り。多分お酒好き。
仕事の異動で、渡とはちょっと遠い所で一人暮らし。
(渡りは一度、この子に会いに行ってる気が……)
戻ってくると良いですね。多分戻ってくる。
本当はこの話になる予定だった、空と水物。
ある程度浮かんでましたが、余りにも短かった為にああなりました。満足です。